アガサ・クリスティーが1949年に発表した同名ミステリー小説を映画化したもので、ジュリアン・フェロウズとティム・ローズ・プライス、ジル・パケ=プレネールが脚色し、パケ=プレネールが監督に当たっている。

 第二次大戦が終わって数年たったころ、ギリシア出身の実業家アリスティド・レオニデスが死亡する。裸一貫から巨万の富を築いた人物だけに敵も多かった。妻は若くして亡くなり、息子二人は事業を継いでいるが、手腕は父親に遠く及ばない。
孫娘ソフィアは「祖父は毒殺され、犯人は家族の中にいる」と疑い、元恋人で私立探偵をしているチャールズに捜査を依頼する。豪壮な邸宅に招かれたチャールズは、家族一人一人に話を聞いていく。

ねじれた家という題名が示すように、この館に住む人々は性格がどこかねじれているようだ。祖母の姉のレディ・イーディス・デ・ハヴィランド、祖父の若い後妻ブレンダ、長男フィリップと妻マグダ、次男ロジャーと妻クレマンシー、ソフィアの弟ユースタス、妹ジョセフィーン。ソフィアを含めてみな動機があり、犯行が可能だった。

画像1: (C)2017 Crooked House Productions Ltd.

(C)2017 Crooked House Productions Ltd.

画像2: (C)2017 Crooked House Productions Ltd.

(C)2017 Crooked House Productions Ltd.

 ブリティッシュ・ミステリーの黄金時代に流行した貴族の館における殺人と捜査……全員が秘密を隠しているような怪しげな雰囲気、あやしげな行動。
家族ではないがそれに準じる家庭教師、乳母、執事といった人々が脇をかため、豪華な家具、装飾、食事風景といった貴族趣味を満足させる要素が盛り込まれている。すりかえられたインスリン注射、モグラ退治用の毒薬、署名の無い遺言書、日記といった手がかりがミステリーらしさを際立たせる。探偵が会話と観察で出来事を把握し、人並み優れた推理力で事件の謎を解く。

読者に、映画観客に彼と同じような洞察力があれば、彼と同時期に犯人を突き止めることが可能なのだが、なかなかそうはいかない。

画像3: (C)2017 Crooked House Productions Ltd.

(C)2017 Crooked House Productions Ltd.

画像4: (C)2017 Crooked House Productions Ltd.

(C)2017 Crooked House Productions Ltd.

 プライスの回想によると、2010年3月にジュリアン・フェロウズの脚本で描かれたソフィアとチャールズの関係について意見を求められたという。その後、プライスが脚本を書き改め、その間に監督も二人変ってパケ=プレネールに落ち着いたとのこと。
「クリスティーは人間の感情、弱さ、強欲さ、嫉妬、そして毒薬について熟知している。大衆は殺人と推理小説が大好きだし、クリスティーは最後のページにいたるまで読者に推理をさせている」とクリスティーの魅力について語っている。

ブリストルにある左右対称になった邸宅を使って外景を撮り、チャールズのオフィスはロンドン中央地区の使われていない美術学校の中にセットを造った。
 クリスティーが創造した二人の名探偵ポアロとミス・マープルほどの個性はないけれど、本作のチャールズも着実に手がかりを集めていき、共感が持てる。

画像5: (C)2017 Crooked House Productions Ltd.

(C)2017 Crooked House Productions Ltd.

チャールズにマックス・アイアンズ、ソフィアにステファニー・マティーニ、フィリップにジュリアン・サンズ、マグダに「Xファイル」のスカリー捜査官役でおなじみのジリアン・アンダーソン、ブレンダにクリスティーナ・ヘンドリックス、と雰囲気を盛り上げる俳優がそろっているが、場面をさらっているのはやはりイーディスに扮したグレン・クロースで、豪快に猟銃をぶっぱなす彼女の存在が後半のドラマを引っ張っていると言っても過言ではなかろう。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。
著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

『アガサ・クリスティー ねじれた家』予告

画像: 優美なる狂気に息をのむ!グレン・クローズ出演『アガサ・クリスティー ねじれた家』予告 youtu.be

優美なる狂気に息をのむ!グレン・クローズ出演『アガサ・クリスティー ねじれた家』予告

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【STORY】

無一文から巨万の富を築き上げた大富豪レオニデスが毒殺された。
私立探偵のチャールズは、レオニデスの孫娘で元恋人のソフィアから捜査を依頼される。広大な屋敷に到着すると、3世代にわたる一族が勢ぞろいし、巨額の遺産を巡って、疑惑と嫉妬、敵意と憎しみをぶつけ合っていた。
愛人のいる若い後妻ブレンダ、映画製作の資金が欲しい長男夫妻、父から受け継いだ会社が倒産寸前の次男とその妻、亡き前妻の姉であり一族を取り仕切る大伯母イーディス。まもなくチャールズは、
ソフィアを含め一族全員に殺害の動機があったことに気付く。
真相に近づいたと思われたその時、第二の殺人が起きる。

監督:ジル・パケ=ブレネール
原作:アガサ・クリスティー著/田村隆一訳「ねじれた家」(ハヤカワ文庫刊)

脚本:ジュリアン・フェロウズ/ジル・パケ=ブレネール/ティム・ローズ・プライス

出演:グレン・クローズ、テレンス・スタンプ、マックス・アイアンズ、ステファニー・マティーニ、ジリアン・アンダーソン、クリスティーナ・ヘンドリックス 他

製作国:イギリス(2017年公開)上映時間:115分 字幕翻訳:松浦美奈 
配給:KADOKAWA

(C)2017 Crooked House Productions Ltd.

4/19(金)角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国公開

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