あっという間にもう2月も後半に。
寒さも本格的になってきて家に引きこもりがちになりますよね。
わたしは最近NetflixとかAmazonプライムで海外ドラマや映画ばっかり見て引きこもっております。
永遠見ていられるから怖いですね。

2019年スタートの記事。
今回は年末にお亡くなりになった市原悦子さん追悼の意を込めまして山本薩夫監督の「にっぽん泥棒物語」を取り上げたいと思います。
前回の記事もそうでしたが、本当に最近レジェンド級の俳優さんたちが次々にお亡くなりになられてショックが続きます。。。
「にっぽん泥棒物語」には3シーンくらいしか出演されていないのですが、魅力的なキャラクターでめっちゃ印象に残っていました。

※本文にはネタバレも含みますのでご注意ください。

《あらすじ》
舞台は敗戦直後の東北のある町。
戦後の混乱期に林田義助(三國連太郎さん)は泥棒ともぐりの歯医者をしながら母と妹を養っていた。義助は前科4犯で刑務所とシャバを行ったり来たり・・・
桃子(市原悦子さん)という芸者と所帯を持つことになるも、桃子が里帰する際に義助が土産にと渡した盗品の着物を売り払ったことで足がつき、義助はまた刑務所へ入ることとなる。
出所後、服役中に出会った馬場とコンビを組み土蔵破りをするも失敗。逃げた線路でその後起こる脱線事故”杉山事件”の犯人の男たち9人に出くわす義助。
再び刑務所へ戻った義助は杉山事件の犯人だという木村たちに出会うが、事件当時見た大柄な男とは到底似ても似つかない背の低い男たちであったことに不審を抱く。
獄中生活で母の死に目に会えなかった義助は出所後改心し、知らない土地でもぐりの歯医者として働き出した。
はなと結婚し子供も生まれ泥棒の世界から足を洗い幸せな生活を送っていた義助であったが、ある日”杉山事件”の目撃証言をしてほしいと弁護団がやってきてー。

その1【おバカで憎めない物語の仕事人】・・・市原悦子さん

まずこのお方。市原悦子さん演じる芸者の桃子ちゃん。
もうめちゃくちゃわかいいんですよね。きゅーと。
そして何と言っても田舎の”そこそこ感”が最高。
バリバリ銀座のNo. 1じゃない感じ。
この絶妙なポジションにどハマりしているのです。
すんごい美人じゃないんだけど愛嬌があって可愛らしい顔で、あっけらかんとした明るさ。
仕事はそこまで真剣にしてなくて、金持ちの男つかまえてとっととやめたーいみたいな。
そういった人物の深みを自然に醸し出されていてすごい。
自分の使い方、魅せ方がわかっているからこそ。
桃子ちゃんが売り払ってしまった盗品の着物によって、義助は仲間である菊池の罪を被り刑務所に入ることになってしまいます。
そしてそこで今後の相棒・馬場に出会うことに。
仲間のことは口が裂けても言わないという仁義に従う義助。
泥棒なんだけどいい奴だなーって観ている側が感情移入する重要なポイントになっています。
やらかしちゃった桃子もまた憎めないキャラだから嫌な気分にならない。
うまい具合に物語のバトンを回してくれる仕事人。
かっこいい。

東映スチル写真

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その2【義助の心を動かす太陽みたいな人】・・・鈴木瑞穂さん

杉山事件の犯人としてでっちあげられる労働組合の一人である木村信。
この方の何が良いかって、清々しさですね。
春の晴れた日みたいな。
人の良さが滲み出ている。
この人は脱線事故なんて起こすはずがないって一目でわかります。
そして物語の起点で義助の心を動かしてくれる人物であります。
息子想いで、義助が母の死に目に会いたいと所長に交渉した時にも協力してくれた木村。
母の死も足を洗うするきっかけになってますが、刑務所で木村の優しさに触れたこともかなり影響しているなと。
あんなに良い人の木村が無実の罪で刑務所に入れられていて息子にも会えないなんて、自分は何やってんだろって思うよなーって。
そして今の幸せを壊してまで杉山事件の証言人になろうと決心するのも、木村に再会し親子の絆を目の当たりにするから。
この木村のカラッとした清々しさはぬめぬめした安東警部補と対照的で、よりそれぞれのキャラクターを引き立たせている!

その3【警察の中の悪者】・・・伊藤雄之助さん

東映スチル写真

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こんなこと言ったら怒られちゃうそうですが・・・
ホント笑っちゃうくらい見た目が”悪”。
悪徳刑事ですから、見た目的にはパーフェクトでございます。
ああいう怖い顔した刑事さんで実はめっちゃいい人ってパターンもあるけれど。
これはひねりなし。
弁護団が義助に杉山事件の証言をしてほしいと頼んでいることを知って、真実を話すともぐりの歯医者をやっていることや泥棒してたことを嫁にバラすぞー。
今の生活が崩壊するぞー!いいのかーっ!
と脅迫まがいのことをしてきます。こいつ。。。
むっかつくー。
警察という権力を駆使して弱いものをいじめる。
本当の悪人とはこういう奴のこと。
鋭い目つきとヌメッとした喋りかたでいやらしさが倍増しております。
この東北弁というものを”悪者”になるための一つの材料として使っておられる感じがして、すんごい着眼点だなあと勉強になりました。
とことん悪役になりきるからこそ
刑事=悪者
泥棒=良い人
という逆転した図式が最後のシーンで生きてきて滑稽さが生まれる。

実際にあった”松川事件”をモチーフにしていて、当時の社会情勢を描いているんだけど
それが”家族”を通して描いているから身近に感じられ、共感できて笑いと涙を誘う。
小さなものを描いて大きな全体像を見せる。みたいな。
一人の人間を描くことで当時の社会情勢が見え、そこから日本が抱える問題が見え、”善悪”といったスケールのでかいテーマも見える。
いやー、すごい構成です。
そして、三國連太郎さんのひょうひょうとした抜け感によって終始作品を重たくさせすぎず、あくまで喜劇として見させてくれる。
善悪ってなんだろう、、
人の幸せってなんだろう、、
と深く考えちゃうけど、身近にいる人を大切にすることが一番だよねってしみじみ思わせてくれる作品です。

椿弓里奈(つばきゆりな)
1988年生まれ、京都府出身。大阪芸術大学短期大学部卒業後上京し、役者として活動。
主な出演作に【映画】「64-ロクヨン-」瀬々敬久監督、「PとJK」廣木隆一監督【TV】「でぶせん」日本テレビ・Hulu、「犯罪症候群season1」【CM】スタッフサービス「オー人事」など。
昨年同い年の役者で立ち上げた”889FILM”ではyoutubeにてショートムービーなどの動画配信中。
所属事務所HP⇒http://www.jfct.co.jp/b_tsubaki.html Twitterアカウント⇒@bakiey

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