映画『デイアンドナイト』『青の帰り道』など、話題作が続いているクリエイター集団、BABEL LABELが、オリジナル映画製作プロジェクトを立ち上げました。その名も<BABEL FILM>。
その第1作目となるのが、2月16日(土)より公開される『LAPSE(ラプス)』。志真健太郎、アベラヒデノブ、HAVIT ART STUDIO、3組の監督陣が未来を自由に想像し、ラプス(=時の経過)に生きる人間の内面を描いています。
BABEL LABELが描く
3篇の未来の物語『LAPSE(ラプス)』
シネフィルでは、全3回にわたって監督、キャストによる対談を敢行。第2回は、『失敗人間ヒトシジュニア』で監督兼主演を務めたアベラヒデノブさんと、出演者であり、若者から絶大な人気を集めるインフルエンサーのねおさん、きいたさんにお話をお聞きしました。
『LAPSE』公開記念cinefil独占インタビュー❷
「失敗人間ヒトシジュニア」アベラヒデノブ監督×ねお×きいた
ー「未来」というテーマの中で、アベラさんは、クローンと人間が共生する2050年を舞台に、ある人突然、自分がクローン人間の失敗作だと聞かされた青年の絶望と再生を描いています。
アベラヒデノブ(以下アベラ):
もともとSF映画が好きで、中でもクローンが扱われている作品に心を動かされることが多かったんですよ。ファンタジックな設定も好きですが、それよりも近い未来の、自分が生きていった先で実際起こりそうな話に興味があり、クローンを題材に選びました。
ーねおさんはクローン製造会社のマスコットキャラクター、はぴこを、きいたさんは社会から虐げられたクローン人間ダイをそれぞれ演じています。お2人のキャスティングの経緯を教えてください。
アベラ:ねおちゃんはBABEL LABELが手がけたドラマ「恋のはじまりは放課後のチャイムから」に出ていて、山田(久人)プロデューサーから声をかけてもらいました。思い描いていた以上の、CGの世界から飛び出してきたようなマスコットキャラクターを見事に演じてくださいましたね。
きいた君は、オーディションで見たとき、一見華奢な可愛い男の子でありながら、その中に“青い炎”が見え隠れしていて……はい、その青い炎が決め手でした(笑)!
きいた君が演じたのは、クローン集団の中で「ゼロから俺たちでクローン組を作ろう」という希望のあるセリフを言ってくれる役。僕の中でも思い入れが強いキャラクターです。
ーねおさん、きいたさんは、
アベラ組の現場はいかがでしたか。
きいた:待ち時間にはクローン役のみんなとお話したり、相談に乗ってもらったりしていました。お芝居は初めての経験でしたが、撮影しているときはもちろん、撮影していないときも充実していました。楽しかったです。
ねお:アベラさんと初めて会った時に、アベラさんの服装が着物だったんですよ。その時は「おしゃれな方がいる!」と思って。そのあと、劇中の衣装だということがわかったんですけど、最初は「私服なのかな」って(笑)。
アベラ:(笑)。
ねお:現場はすごく楽しかったです。読み合わせのときも、私のセリフを先に読んでくださって「これを真似してみて」と優しく教えてくれました。自分の中でとてもやりやすくて、ありがたかったですね。
ーねおさんが出演したクローン製造会社の
CMは強烈でしたね。ねおさんのクローンがどんどん増殖していく、という。
ねお:監督からは「ねおちゃんはクローン人間のアイドルみたいな感じだから、とにかくニコニコ演技していてね」とだけ言われて。実際に完成した映像を見たら、想像より増えていてびっくりしました。私のお母さんもなぜか気に入って、何回も観ています。見ているこっちが洗脳されそうなぐらい、印象の強いCMでした。
ーそうですね、中毒性があります。
アベラ:そこは目指したかったところです。中毒性のあるものって、冷静に見たときに少し怖かったりしますよね。TikTokも、普通に可愛いものと癖のあるものがあったり。それと、CMを映画の中の嘘で終わらせないように、そして未来の話だけど身近なリアリティを感じてもらうために、現実とリンクさせる必要がありました。実際にSNSでファンがたくさんいるねおちゃんだからそ、成り立ったCMだと思います。
ー先ほど和装のお話が出ましたが、アベラさん演じる主人公は古風なものを好んでいて、
SF世界とのギャップが面白いと思いました。どういう狙いがあったんでしょうか?
アベラ:オーガニックなものにこだわっていた男が、実は人工的に作られたクローンで、しかも失敗作だった……と言う設定が、皮肉で面白いなと思ったんです。だからあえて古い日本の伝統を重んじている=人間としての良さを大切にしているキャラクターにしました。“未来のテクノロジーによって生み出された被害者”という主人公に、悲しみも笑いも感じて欲しいなと思って。
ーなるほど、とても腑に落ちました。国技の相撲が好きという設定も、どんなにテクノロジーが発達しても、生身の人間は残っていくんだ、というメッセージのように感じました。
アベラ:
嬉しいですね。実際にお相撲さんがぶつかり合う映像も入れているんですけど、そういう意図もあります。
ーねおさん、きいたさんは3作品通して観て、どう感じましたか?
ねお:「こんな未来、あり得そう」と思うことが多かったですね。
きいた:中でもこの作品が一番身近に感じられるかな、と思いました。
アベラ:ねおちゃんもきいた君も、今とても活躍されていて、自分のアイデンティティを持って生きていらっしゃると思うんです。でもある日突然「あなたはクローンです。私が本物です」と言う人が現れたら、どうしますか?
ねお:それでも私は自分を貫くかもしれないです。
きいた:もう一人の自分が出てきたら、今の僕の需要がなくなってしまうってことですよね。そうなったときに、自分がどうなるかは想像がつかないです。
アベラ:例えば、もう一人の自分と戦う? ねおちゃんが言ったように、自分がクローンだったとしても、本物の自分よりも魅力的に生きていけばいいんだ!という戦い方を選ぶ?
ねお:しますね。
きいた:強いなぁ。
アベラ:かっこいいですね。
きいた:逆にアベラさんはどうしますか?
アベラ 僕は、とりあえず泣きます(笑)。でも一回戦うかなぁ。クローンとしての叫びをラップに乗せて戦います。
ー(笑)。お三方とも、上手に付き合っていくという選択肢はさすがにないようですね。
アベラ:相手がいいやつだったら考えるかもしれないです。
きいた:でも、おいしいところを全部持っていきそうじゃないですか? 彼女とのデートは全部向こうだけど、仕事は全部僕、みたいな(笑)。
アベラ それ、最悪ですね!
きいた 一緒に生きていくのは多分無理ですね。
ー向こうが知らない間にSNSを更新していたりとか。
ねお:それは絶対ダメ。嫌ですね……。
アベラ:クローンとはいえ、やっぱり自分とは違う存在だから、ちょっと気持ち悪いですよね。
きいた:絵文字の使い方がちょっと違うだけでイライラしそうです(笑)。
ーでは、未来に対して期待と恐怖、どちらの感情を抱いていますか。
アベラ:僕は電話番号を覚えられないんですよ。今はいろいろ便利になって、覚える必要がなくなった。でも言い換えれば、自分たちの生身で補わなければいけない部分がどんどん減っていくってことで、それは怖いことかもしれない。
ねお:ですよね。便利になりすぎると、全部「当たり前」だと思ってしまいそう。感謝の気持ちは忘れずにいたいですね。
ー例えば、テクノロジーが進歩していって、相手の感情も全部わかる機械が誕生したとします。そうすると、必然的に失恋もなくなって……
アベラ:失恋がないってことは、片想いもなくなるということですよね。恋愛自体の楽しさが薄れそう。機械で人間関係を判断するようになったら嫌ですね。未来が怖くなってきましたよ。
きいた:僕は、これからの子供のために、自分の住んでいる国のために、自分の向上心がずっと続くような未来になって欲しいですね。ロボットがあったら全部任せちゃいそうなので、自分が頑張らないと!と思えるような未来にしたいです。
アベラ:素晴らしいです!
ーねおさん、きいたさん
は、今後もっと映画に出たいというお気持ちはありますか?
ねお:あります。演技をするほど、その楽しさを知ることができました。今年はもっと演技に力を入れていきたいです。
きいた:僕も今年は演技を頑張りたいです。いちばん最初に出た映画がこの作品で、とても不思議な映画で……自分としては普通じゃない現場で……なんて言えばいいんだろう(笑)。
アベラ:叫んだり、血糊をかぶったり。俳優入門としては、かなりのオプション付きだったかもしれないね(笑)。
きいた:はい。だから怖くなくなったというか、きっと次にやる作品も自然体でできるような気がします。
ー今後はどういう役に挑戦してみたいですか?
ねお:学園ドラマの中でツンケンしたいじめっ子がとても可愛く見えて。そういう、やったことのない役に挑戦できたらなと思います。それに、ホラー映画にも興味があって。どういう撮影現場なんでしょう?
アベラ: 僕も昔、血糊が大好きで、血まみれ映画をよく撮ってました。映像で見ると「うわっ」となりますけど、現場ではみんな「わーい!」って言いながら撮影してましたよ。きいた君は?
きいた:僕は青春学園ドラマのモテ男を演じてみたいです(笑)。
アベラ:モテ男役のきいた君、見てみたいな。意外と似合うかも。
きいた:大きな夢ですね。
アベラヒデノブ 映画監督・脚本家・俳優。1989年ニューヨーク生まれ、大阪府出身。監督・脚本・主演「死にたすぎるハダカ」(12)が2012年モントリオール・ファンタジア映画祭入賞他、受賞歴多数。 多彩な才能を発揮しており、俳優として園子温監督のスマホ映画「うふふん下北沢」(17・主演)など映画・CM・舞台で活躍しながら、脚本家として「青の帰り道」(18/藤井道人 監督)、監督として、テレビドラマ「日本ボロ宿紀行」(19/深川麻衣 主演)。 広告作品には自ら出演した日清「謎肉丼」(18)や、MINTIA「珠玉のおつかれさまムービー」(18)、バンホーテン「ガラスの仮面WEB限定ムービー」(17)など。人間のもがきをコミカルに描いて共感を呼んでいる。 |
ねお [はぴこ] 2001年生まれ、鹿児島県出身。YouTubeやTik Tokで動画を配信する、現役高校生クリエイター。「リップシンク」と呼ばれるスタイルや、色鮮やかで可愛らしい表現で多くのファンを魅了し、10代のカリスマとして人気を博す。2018年、雑誌「Popteen」の専属モデルとなり脚光を浴び、WEBドラマ「恋のはじまりは放課後のチャイムから」(18/Y!mobile)出演など演技も評価され、今後が注目される。 |
きいた [クローン集団ダイ] インスタグラムに現役高校生の日常をアップしたところ人気急上昇で芸能界入り。2018年、AbemaTVの恋愛リアリティショー『太陽とオオカミくんには騙されない』に出演。2019年『LAPSE』で映画デビュー、AOKIフレッシャーズスーツ「一緒に撮ろうよ」篇”TVCM に出演。 ABCラジオ「リアルをぶつけろ!ハッシュタグZ」(毎週土曜21:05~)にレギュラー出演中。 |
映画『LAPSEラプス』予告編
映画『LAPSEラプス』予告編
主題歌SALU『LIGHTS』コラボレーションMV
志真健太郎 監督・脚本 『SIN』
出演:栁俊太郎、内田慈、比嘉梨乃、 平岡亮、林田麻里、手塚とおる
アベラヒデノブ 監督・脚本 『失敗人間ヒトシジュニア』
出演:アベラヒデノブ、中村ゆりか、清水くるみ、ねお、信江勇、根岸拓哉、深水元基
HAVIT ART STUDIO 監督・脚本 『リンデン・バウム・ダンス』
出演:SUMIRE、小川あん
監督:志真健太郎、アベラヒデノブ、HAVIT ART STUDIO
主題歌:SALU『LIGHTS』
撮影:石塚将巳/佐藤匡/大橋尚広
照明:水瀬貴寛
美術:遠藤信弥
録音:吉方淳二
音楽:岩本裕司/河合里美
助監督:滑川将人
衣装:安本侑史
ヘアメイク:白銀一太/細野裕之/中島彩花
プロデューサー:山田久人、藤井道人
製作:BABEL LABEL
配給:アークエンタテインメント
2019年2月16日よりアップリンク渋谷ほか全国順次公開!
前回インタビューはこちら
現在、『LAPSE』プロデューサー藤井道人の監督最新作『デイアンドナイト』絶賛上映中!
また、cinefilセレクションで過去作一挙配信中!