中国の映画界で活躍を続ける俳優ルー・ユーライと日本が誇る名優藤竜也を主演に迎え、日本=中国の国際共同製作で製作されたインディペンデント映画『COMPLICITY(コンプリシティ)』。
第43回トロント国際映画祭でのワールドプレミア、第23回釜山国際映画祭でのアジアプレミア
で国際的に高く評価された本作が、待望の日本初上映を迎えることになりました。
今週末から開催される第19回東京フィルメックスにて、11月17日(土)18時30分より、特別招待作品として上映されます。上映後には近浦監督によるQ&Aが実施されます。
近年社会問題として取り上げられることが多い技能実習生制度、不法滞在外国人などを背景にしながらも、異国の地でもがきながら生きていく一人の若者の姿を普遍的な物語として描いた『COMPLICITY(コンプリシティ)』は、昨年8月〜9月にかけて、関東近郊、山形県、中国河南省で撮影されました。
主演にはルー・ユーライ、藤竜也、そして赤坂沙世、松本紀保などが渾身の演技で映画を彩ります。監督は、短編映画で昨年のロカルノ国際映画祭をはじめ世界各国の映画祭で高く評価された近浦啓。本作は長編デビュー作品となります。
東京フィルメックスの上映に対して近浦啓監督のコメント
長編デビュー作品『コンプリシティ』の日本初上映を、他でもなく東京フィルメックスで迎えることは、僕にとって特別な意味がある。アジアの素晴らしい映画文化を、商業主義から一定の距離を保ちながら数多く紹介してきたこの映画祭に、僕は20代前半の頃から深く信頼を置き、同時に羨望の眼差しを注いできた。18年前に開催された第1回東京フィルメックスのことまでも、昨日のことのように良く覚えている。コンペティションの最優秀作品賞がロウ・イエ監督の『ふたりの人魚』で、その審査員の一人に、ベラ・タール監督がいた。いつかこの歴史の一部となれるような映画を作りサバイブしていきたいと、それから毎年会場に足を運びながら、楽観的に明るい未来の自分に思いを馳せていた。(実際は、そんなに「楽観」できる未来ではなかった。)
2018年に入り、諸般の事情でこの東京フィルメックスの存続の危機が囁かれた。固唾を呑んで見守っていた中、木下グループの支援のもと開催続行が決定したと発表された時は、愁眉を開いて喜んだ。後日、ニュースの記事で読んだことだが、18回続いてきたこの映画祭を楽しみにしているお客様のために、また、この映画祭から巣立った映画作家のためにも「簡単にやめてはいけない」と、迷いなく継続に向けて奔走し開催を実現した市山尚三氏に深く敬意を抱いている。
この『コンプリシティ』という作品は、いわゆる「インディペンデント映画」としては珍しく日中合作で作られた。そしていくつかの不思議な縁に恵まれ、中国人の女優でもありプロデューサーでもあるナイ・アンが、共同プロデューサーとして参加してくれた。彼女は、前述した『ふたりの人魚』はじめ、ロウ・イエ監督のほぼ全ての作品をプロデュースしている。また、インターナショナル・セールスとして『コンプリシティ』を扱うことを(リスクをとって)決断してくれたフランスのMPM Filmのマリエ=ピエレ・マシアは、ベラ・タール監督の『ニーチェの馬』のプロデュースにも携わっている。
今こうして思いを巡らすと、18年前に見たあの景色の一種の未来に僕も立っているような気持ちになる。誇らしく思うのと同時に背筋がぴんとして、秋が深まるこの東京フィルメックスの季節がまた巡ってきたことを実感する。
近浦啓
釜山国際映画祭登壇写真が到着!
近浦啓監督の長編デビュー作品『COMPLICITY(英題)』
インターナショナル版予告
【STORY】
中国 河南省から技能実習生として日本に働きに来たチェン・リャンは、研修先企業から失踪し、不法滞在の身となる。故郷の母に真実を告げられず、研修を続けていると偽りながら、斡旋される窃盗に手を染めていた。そんな中、ひょんなことから他人になりすまして山形の小さな蕎麦屋に住み込みで働き始めることに。厳格な店主・弘と娘の香織がきりもりする蕎麦屋で弘に怒鳴られながらも出前をこなす日々。ある日、チェンリャンは、出前先のアトリエで葉月という女性に出会い…。
出演: ルー・ユーライ、藤竜也、赤坂沙世、松本紀保
監督・脚本・編集: 近浦啓
英題:COMPLICITY(コンプリシティ)
2018/116分/カラー/日本=中国/5.1ch/アメリカン・ビスタ
製作:クレイテプス/ Mystigri Pictures
©2018 Creatps / Mystigri Pictures