中国の神仙思想と山水表現

 山水画は中国の神仙思想から、不老不死の神仙の住処としての山水表現から生み出された古い表現で、永らく、中国や日本での水墨画の題材とされてきました。
神仙思想は紀元前3世紀頃から、民間信仰から中国の山東半島を中心に広がり、秦の始皇帝の泰山の封禅の儀など、中国の皇帝にも深い影響を与えてきました。特に前述の始皇帝や漢の武帝は、神仙思想に傾倒したと伝えられています。
 老子の道教に引き継がれた神仙思想は、317年頃に晋の葛洪(かつこう)が著した「抱朴子」には神仙について詳しく記され、後に神仙郷(神仙の住処)が蓬莱のような海上に浮かぶ空想上の山だけでなく、山岳信仰とのつながりから深山幽谷に篭り、人間が神仙になる為に仙道の修行をすることが、やがて日本にも伝来してきます。不老不死の神仙とは、肉体の消滅から、自然信仰の精神的な面でその永遠性を追求するようになった、世界共通の願望でもあるといえます。つまり山水表現には、アニミズムからきた高い精神性が存在します。
「唐絵(中国絵画)」の一種として、鎌倉時代に日本に伝来した山水画は多様化し、様々な日本独特の表現が生まれました。

画像: 「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」展示風景 写真右 重要文化財「山水図屏風(東京国立博物館蔵)」 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」展示風景 写真右 重要文化財「山水図屏風(東京国立博物館蔵)」 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

大内文化と西の京「山口」

 「大内文化」とは、室町時代、山口を中心に栄えた文化のことを指します。大内氏第9代当主大内弘世が、将軍足利義詮に会うために京都に上り、山口の地形が京都に似ていることから、1360年ころ政庁を山口に移し、京の都を模して一の坂川を鴨川に見立て、大路、小路と名付けて区画整理をして、町並みを京風に整えました。
 大内氏は、石見銀山と九州の博多を通じて大陸との交易から莫大に富を得て、その経済基盤から京都の文化人を招き、独自の文化が花開きました。これは後に山口の繁栄ぶりが、ポルトガルの宣教師ルイス・フロイスや、スペインの宣教師フランシスコ・ザビエルによって記述されるほどでした。
大内文化を代表する遺構として、八坂神社本殿、常栄寺雪舟庭が知られていますが、なかでも日本三名塔のひとつに数えられる、瑠璃光寺五重塔は特に有名です。瑠璃光寺五重塔は、1399年の応永の乱で命を落とした大内義弘の菩提を弔った塔です。

画像: 「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」展示風景 写真右「蓮蘆図(広島・佛通寺蔵)」- photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」展示風景 写真右「蓮蘆図(広島・佛通寺蔵)」- photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

四季山水図巻と雪舟

 常栄寺雪舟庭を作庭した雪舟は備中国(現在の岡山県総社市)に生まれ、10歳の時に臨済宗相国寺派の大本山である相国寺で修行し、また絵を学んでいます。その後に大内氏の招きもあり大内文化が花開く山口に移りました。明国に渡り、宮廷画家でもあった山水画の名手として知られる李在より技法を学んで帰国しています。
 やがて山口に帰ってから描いた「四季山水図巻(山水長巻)」は、国宝に指定されています。雪舟は山口の天花に画室雲谷庵を構え、中国絵画の模倣にとどまらずに独自の画風を確立させ、江戸時代の狩野派にも大きな影響を与えました。

雪舟画を再興した雲谷等顔

 雲谷等顔(うんこくとうがん)は、1547年に肥前藤津郡(現在の佐賀県鹿島市)生まれで、京都で狩野派に学びます。やがて毛利輝元に招かれ、毛利氏の御用絵師となって幕末まで続いた雲谷派の祖となる画家です。戦国時代の毛利元就の孫にあたる毛利輝元は、雲谷等顔を召抱えてから先の「四季山水図巻(山水長巻)」、そして画室雲谷庵を与えた経緯もあり、雲谷等顔は雪舟の画風を踏襲しながらも、桃山文化らしさを残した作風を確立させていきました。また中国の南宋時代の梁楷風の人物画も多く描いています。雲谷派は中国地方、北九州地区を活躍の場として、永らく雪舟の流れを組んだ山水画から、彩色した花鳥も題材とし、また桃山文化の装飾性も代々伝えています。
 1618年に等顔が亡くなり、今年は没後400年になります。「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」を開催した山口県立美術館では、重要文化財の「山水図屏風(東京国立博物館蔵)」や、「郡仙図屏風(京都国立博物館蔵)」、「山水図屏風(ボストン美術館蔵)」といった代表作品が、揃って展示されています。
 時を超えて、西の京「山口」に思いを馳せることができる美しい展覧会になっています。

画像: 「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」展示風景 写真「竹林七賢図襖(京都・黄梅院蔵)」- photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」展示風景 写真「竹林七賢図襖(京都・黄梅院蔵)」- photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

画像: 「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」展示風景 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」展示風景 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜 概要
会  期:2018年11月1日 ~ 12月9日
休館日:月曜日※11月5日、12月3日(ファーストマンデー)は開館
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料:当日券:一般 ¥1,300 シニア・学生 ¥1,100 高校生以下無料
    団体券:一般 ¥1,100 シニア・学生 ¥900
会  場:山口県立美術館
     〒753-0089 山口市亀山町3-1
     phone 083-925-7788
     fax 083-925-7790
公式サイト:http://yma-togan.com
主  催:山口県立美術館 読売新聞社 KRY山口放送
後  援:山口県教育委員会 山口市 山口市教育委員会 一般社団法人山口県観光連盟 山口商工会議所 一般財団法人山口観光コンベンション協会 湯田温泉旅館協同組合

「没後400年記念 雲谷等顔展〜雪舟を継いだ男〜」cinefilチケットプレゼント!
ご提供組数 5組10名様

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、山口県立美術館チケットプレゼント係宛てに、Eメールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、記名ご本人様のみ有効の、チケットをプレゼントいたします。
チケットは、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、
公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

応募先Eメールアドレス
info@miramiru.tokyo
応募締め切りは2018年11月25日土曜日

記載内容
1.氏名<※必須>
2.年齢<※必須>
3.当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)<※必須>
4.ご連絡先Eメールアドレス、電話番号<※必須>
5.記事を読んでみたい監督、俳優名(複数回答可)
6.読んでみたい執筆者(複数回答可)
7.連載で、面白いと思われるもの(複数回答可)
8.連載で、面白くないと思われるもの(複数回答可)
9.シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せください。
また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせていただきます。

森秀信 プロフィール

1966年長崎市生まれ。
武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻修了後、現代美術センターCCA北九州リサーチプログラム修了。
主に現代美術の創作活動の他、展覧会のキュレーションやワークショップの企画を担当。専門は現代美術。

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