デヴィッド・リンチの創作に迫るドキュメンタリー映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』の公開記念トークイベントが 2 月 9日(金)アップリンク渋谷にて行なわれ、ゲストに映画・美術評論家の滝本誠とデザイナーであり、ライターの高橋ヨシキ が登壇。
リンチのアート・ライフについて熱く語った。
【イベント概要】
◆日時 2月9日(金)
◆会場 アップリンク渋谷(東京都渋谷区宇田川町37-18トツネビル1F)
◆ゲスト 滝本誠(映画・美術評論家)、高橋ヨシキ(デザイナー、ライター)
本作は、映像作品のみならず、絵画、写真、 音楽など様々な方法で表現活動を続けているデヴィッド・リンチが、美術を専攻した学生時代の「退屈」と「憂鬱」、悪夢のような街フィラデルフィアでの暮らし、そして長編デビュー 作『イレイザーヘッド』に至るまで自ら語った ドキュメンタリー映画。
リンチを知り尽くしている両者でも「これだけ過去の映像が残っているのにはびっくりした」 と口を揃える。
映画の感想を高橋氏は、
「この映画で描かれているリンチの<アート・ライフ>は、実際はそうであるんだけど、リンチ的 にみせたいところが詰まった映画だと感じました。<アート・ライフ>なのか<ライフ>なのかっていう問題もあるんだけど、“こういう風にありたい”っていうことが全面に出ているように観ていて感じました」とコメント。
一方、滝本氏は
「自分の過去を自分の言葉で語っていくというのは、うれしいぐらいに物語を作っていけるから、この映画 はリンチを主題としたフィクションの誕生といってもいいかもしれない。現在製作しているアート作品たちを証拠的なものとして挿入し、ディレクションをしている。これらのアート作品によってリンチの過去が魅力的に改変され、再構成されていっ ているように思います」と説明。
劇中の中でリンチが"助成金が取れてよかった。これで映画がつくれるようになる”と語るシーンについて高橋氏は、
「このシーンを観てリンチは”映画”があってどんだけ幸せなんだろうと考えました。彼はロバート・ヘンライ著の『アート・スピ リット』を手にして、その本が指し示すアーティストになろうと強い方向性でいたら、僕らがこうして今リンチの話をしていることは永遠にありえなかったし、個人で作っている映画よりも人を巻き込んでやっている映画が、ものすごい成功を収めているのもすごいですよね」と指摘する。
またリンチのアート作品について高橋氏は
「リンチの絵って、人がいて、物があり、セリフがあって、これってまるで映画の シーンじゃないのかなと観ていて思う」と話すと、
滝本氏も同調し「リンチの面白いところは、目の前にあるものすべてをア ートに変えることだと思います」と締めくくった。
【プロフィール】
滝本誠(たきもと・まこと)
1949 年京都生まれ。映画・美術評論家。著書に『きれいな猟奇―映画のアウトサイド』(平凡社)、『渋く、薄汚れ。―ノワ ール・ジャンルの快楽』(フィルムアート社)、解説担当書にロバート・ヘンライ『アート・スピリット』(国書刊行会)などがあ る。最新刊は『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』(幻戯書房)。
高橋ヨシキ(たかはし・よしき)
1969 年東京生まれ。デザイナー、ライター。チャーチ・オブ・サタン公認サタニスト。雑誌『映画秘宝』でアートディレクショ ンを手がける傍らライターも務める。また数多くの映画ポスター、DVD ジャケットのデザインを担当。著書に映画評集『暗 黒映画入門/悪魔が憐れむ歌』『暗黒映画評論/続・悪魔が憐れむ歌』(洋泉社)など多数。
アメリカの小さな田舎町で家族と過ごした幼少期、アーティストとしての人生に憧れながらも溢れ出る創造性を持て余した学生時代の退屈と憂鬱。後の『マルホランド・ドライブ』(2001 年)美術監督である親友ジャック・フィスクとの友情。生活の為に働きながら、助成金の知らせを待った日々。そして、当時の妻ペギーの出産を経てつくられた長編デビュー作『イレイザーヘッド』(1976 年)に至るまでを奇才デヴィッド・リンチ自らが語りつくす。
◆監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルム(『ヴィクトリア』脚本)
◆出演:デヴィッド・リンチ
◆配給・宣伝:アップリンク
(2016 年/アメリカ・デンマーク/88 分/英語/DCP/1.85:1/原題:David Lynch: The Art Life)