2016 年10月9日、映画監督アンジェイ・ワイダの訃報が伝えられました。
ポーランドの巨匠として知られるワイダ監督は、90 年の生涯を通して40 本もの映画を撮りました。常に政治と歴史に向き合い続けた芸術家であり、その死は大きな衝撃を持って迎えられました。

アンジェイ・ワイダは1926年にポーランドで生まれ、陸軍将校だった父を「カティンの森事件」(1940 年)で亡くし、10 代半ばにしてレジスタンス活動に従事します。
第二次世界大戦後、ウッチ映画大学を卒業し、自らのレジスタンス体験をもとに、1954年に長編映画『世代』により監督デビュー。本作は『地下水道』『灰とダイヤモンド』とあわせて「抵抗3部作」と呼ばれて国際的な評価を獲得し、“ポーランド派”として世界中にその名を知らしめました。

その後も、第二次世界大戦下のポーランドを舞台にした作品や、社会主義政権への懐疑を示した作品など、歴史的視点を取り入れた映画を次々に発表。その反骨精神あふれる作品群は、ポーランド国内はもちろん、世界各国や日本にも多大な影響を与えてきました。

今回の特集では、その代表作がデジタルシネマで鮮烈によみがえるほか、監督自身が日本に対する思い出やメッセージ、作品への想いを語る“特別映像メッセージ”も公開します。上映作品は、ワイダ監督の代表作9 作品を上映します。遺作となった最新作『残像』の劇場公開(6 月~岩波ホール他)も待たれる中での追悼特集として、選りすぐりのラインナップでお届けします。

【上映作品(9作品)】

『世代』 POKOLENIE
監督:アンジェイ・ワイダ
1954 年|87 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 POKOLENIE

© FILMOTEKA NARODOWA, STUDIO FILMOWE „OKO”, STUDIO FILMOWE „TOR”, STUDIO FILMOWE „KADR”, STUDIO FILMOWE „PERSPEKTYWA”, STUDIO FILMOWE „ZEBRA”

1942 年、ナチス支配下のワルシャワ。貧民窟に育った少年は、人民軍の少女との出会いを機に反ナチ闘争に自らのアイデンティティを見出すが…。ワイダの長編第一作であり、「抵抗三部作」の始まりを告げ、戦後ポーランドの転換点を示すことにもなった記念すべき作品。『灰とダイヤモンド』のツィブルスキや、ポランスキー監督も出演。
■5/3(祝・水)11:30~

『地下水道』 KANAŁ 監督:アンジェイ・ワイダ
1956 年|97 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 

©STUDIO FILMOWE „KADR”

ナチスの占領に対する国内軍とワルシャワ市民の抵抗運動=ワルシャワ蜂起の敗北を、ドキュメンタリー風に捉えた本作。脚本家のイエジ・ステファン・スタヴィンスキをはじめ、キャスト、スタッフに実際の蜂起に参加した人々を多数起用。地下水道で繰り広げられる死闘が、リアルに捉えられている。カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。
■4/22(土)11:30~、5/3(祝・水)14:30~

『灰とダイヤモンド』 POPIÓŁ I DIAMENT
監督:アンジェイ・ワイダ
1958 年|103 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 

©STUDIO FILMOWE „KADR”

第二次大戦が終結した1945 年5 月8日から翌朝までの1 日、労働者党書記の暗殺を命じられたゲリラ兵の青年マチェクがたどる悲劇的な運命を描いた青春劇。反共主義者の暗殺者を主人公にしたことで当時のポーランド国内では冷遇されたが、ヴェネチア国際映画祭批評家連盟賞受賞を機に、ポーランド映画史上最も重要な作品と言われるまでになった。
■4/22(土) 14:30~、5/4(祝・木)11:30~

『夜の終りに』 NIEWINNI CZARODZIEJE
監督:アンジェイ・ワイダ
1960 年|87 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 

©STUDIO FILMOWE

ワルシャワの街で出会った若い医師と娘が繰り広げる恋愛ゲーム。「雪解け」後のワルシャワの街を記録映画風に映しながら、男女の心理的駆け引きを描いた本作は、ワイダにとって異色作とも言える。脚本は作家のアンジェイェフスキと監督のスコリモフスキが共同執筆。ポーランドジャズの立役者でもあるコメダが音楽を担当、劇中にも出演を果たしている。
■4/29(土)11:30~、5/4(祝・木)14:30~

『サムソン』 SAMSON
監督:アンジェイ・ワイダ
1961 年|118 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 

©KADR Film Studio

1939 年~43年頃のワルシャワ、ユダヤ人ゲットーを脱出した青年ヤクプの数奇な運命。ヤクプは、ナチスによるユダヤ人迫害やゲットー蜂起まで常に歴史の波に翻弄され続けるが、いかなる迫害にも屈しない精神的強さを持つ。その強さが、旧約聖書の英雄サムソンに重ね合わせられる。本国では知らぬ人がいないと言われる名作だが、日本では昨年に初上映された。
■4/29(土) 14:30~

『戦いのあとの風景』 KRAJOBRAZ PO BITWIE
監督:アンジェイ・ワイダ
1970 年|107 分|カラー|デジタル・リマスター版 

©Studio Filmowe Zebra

1945 年初頭のドイツ。ナチスの強制収容所から解放された囚人たちは、米軍の手で難民収容所に移送される。皮肉屋の青年作家は、収容所でユダヤ系の娘と出会うが、束の間の愛はやがて皮肉な運命にさらされる。原作は、ポーランド人作家タデウシュ・ボロフスキの短編小説。婚約者と共にアウシュヴィッツ収容所を生き抜いた作家は、1951 年に自ら命を絶った。
■4/30(日) 14:30~、5/5(祝・金)11:30~

『大理石の男』 CZŁOWIEK Z MARMURU
監督:アンジェイ・ワイダ
1977 年|160 分|カラー|デジタル・リマスター版 

©STUDIO FILMOWE „PERSPEKTYWA”

スターリン体制が強化された50 年代ポーランドで、英雄として国家に祭り上げられた一人の男。1976 年、映画を学ぶ女子大学生は、ドキュメンタリーの製作を通して英雄神話に隠された真実を描きだそうとし、政府の欺瞞が赤裸々に暴かれる。本作は当局との間に大きな軋轢を生むが、国民からは熱狂的な支持を受けた。カンヌ国際映画祭批評家連盟賞受賞。
■4/23(日) 14:30~、5/5(祝・金)14:30~

『仕返し』 ZEMSTA
監督:アンジェイ・ワイダ
2002 年|100 分|カラー|デジタル 

©(2002)ARKA FILM.

アレクサンデル・フレドロの戯曲に基づく喜劇作品。18 世紀末頃のポーランドを舞台に、一つの城に住む二家族の顛末を描く。家同士の対立に振り回される若い恋人たちといういかにも古典喜劇らしい内容だが、ポーランド人への皮肉的な視線も交えられている。ロマン・ポランスキーの他、ヤヌシュ・ガヨス、ダニエル・オルブリフスキらポーランドを代表する俳優たちが出演。
■4/23(日) 11:30~

『菖蒲』 TATARAK
監督:アンジェイ・ワイダ
2009 年|87 分|カラー|デジタル TATARAK

©AKSON STUDIO/TVP/MEDIAPLUS/ POLISH FILM INSTITUTE

余命わずかな妻と医師の夫。かつてワルシャワ蜂起で息子を亡くした夫婦の微妙な距離感と、偶然出会った美しい青年に惹かれる妻の心の動きが、繊細なタッチによって捉えられていく。一方で、妻を演じたクリスティナ・ヤンダの、長年連れ添った夫を本作撮影中に亡くすという個人的体験が挟みこまれ、映画を思わぬ方向へと導く。
■4/30(日)11:30~

<開催概要>
ポーランド映画祭 2017 in 川崎 ~アンジェイ・ワイダ追悼特集~

■日程:
4 月 22 日(土)、23 日(日)、29 日(土・祝)、30 日(日)、5 月 3 日(水・祝)、4 日(木・祝)、5 日(金・祝)
■会場:川崎市市民ミュージアム
■お問い合わせ:TEL 044-754-4500
■料 金:一般600円、大学・高校生・65歳以上500円、小中学生400円
※入替制 ※未就学児・障害者手帳等をお持ちの方およびその介護者は無料
■上映作品(9 作品):「世代」/「地下水道」/「灰とダイヤモンド」/「夜の終りに」/「サムソン」
「戦いのあとの風景」/「大理石の男」/「仕返し」/「菖蒲」
(※上映作品および上映スケジュールの詳細は下記ホームページをご覧ください。)

~ ワイダ監督の特別映像メッセージを公開!! ~
※下記 4 作品に限る。
14 月 23 日(日)11:30~『仕返し』・・・★
24 月 29 日(土・祝)11:30~『夜の終りに』・・・☆
34 月 30 日(日)11:30~『菖蒲』・・・★
44 月 30 日(日)14:30~『戦いのあとの風景』・・・★
〔★印〕=上映する映画についての監督からのコメント(約 2 分間)
〔☆印)=日本に対する監督の思い出とメッセージ+その回で上映する映画『夜の終りに』についての監督からのコメント(約 30 分間)

詳細は下記より

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