海外の作品はもちろんの事、日本の良質な映画の情報を、少しでも多くの人に伝えたいー
そんな志を持って、スタートした映画webマガジン「シネフィル」ですが、今までも多くの自主的作品を取り上げてきました。
女優 村田雄がメガホンを取り初長編に挑んだ『密かな吐息』や、日本人監督井上雅貴が数人でロシアで撮影したSF『レミニセンティア』などをはじめに、多くの日本の若手監督やインディペンデントな作品、海外の映画祭で出品されて初めて露出された作品など様々な、作風は違うものの、自己の意志を持って創られた作品を選んで紹介してきたつもりです。
また、もう一つ日本では有名な作品以外、過去の作品を再評価したり、再度メディアで取り上げることも少ないことも感じておりました。
そんな中で私たちは『ゴンドラ』という作品と出会いました。
シネフィルが映画に特化したメディアとして発信していくことの重要な役目の一つに、良質な作品は新旧の作品を問わず、新しい世代に伝えていくことだと思っております。
映画『ゴンドラ』は、TOHJIROとして、今はAV界で活躍している伊藤智生監督の原点となる作品です。
この作品の主人公となる少女”かがり”の瞳に映りこむ、今も変わらない、いや現代の方がより強くなっている疎外感や孤独の心の描写を、多くの人に感じ取ってほしいという思いで、微力ながら紹介させていただきました。
その映画『ゴンドラ』は30年の時間を経て、今再び公開され、30年前と同様に”静かな騒動”を起こしつつあります。
そんな中、俳優で活躍し監督として、時には映画評論も描く、シネフィルであり映画愛溢れる斎藤工さんが、プライベートな時間に映画館へ行き、この映画『ゴンドラ』を観た上で自身のブログに書いた文章が、新しい世代につながる予感を強く感じさせてくれます。
以下、「斎藤工務店」ブログより転載
『ゴンドラ』
劇場にて
作品に誘われ漂う心地好さ
胸の奥の心情を心で捉える
恋愛感情の様な後味
美しく 儚く 揺蕩う
三十年の時を経て
これに匹敵する邦画が見当たらない
目的が明確に商業では無い
劇場空間と映像と音楽
空間の芸術
感覚の芸術
何百何千本観なくても
この一本だけ観たい
そんな作品
ー斎藤工ー
シネフィルの記事を読んでいただいたわけでもないでしょうーー。
どこかしらの情報から、何かを”感じて”映画館を訪れ、そこで”触れた”映画に関する斎藤工の率直なコメントに、『ゴンドラ』という映画の起こす”静かな騒動”への予感が感じられます。
映画『ゴンドラ』の最初の公開当時には、こんなエピソードがあります。
作品が完成し、公開をしようとしたところ、なかなか劇場が見つからず、作品を観た上で快諾があった劇場でも、いざ公開となると劇場の入場券の代金の保証金を支払うように言われたという。
苦労していたところ、川喜田記念映画文化財団の川喜田かしこさんに、「作品は良いのだから、まずは自主上映でもいいからどこかで上映をして映画を観せなさい」と助言をもらい、1987年渋谷の東邦生命ホールを2日間借り切って上映をしたところ、溢れるばかりの観衆が押し寄せ、その勢いで一気に劇場公開が決まったという。
そして、シネフィルのFBの記事を掲載したところ、30年前の当時に劇場に行った方が、感想を述べたり、当時のプログラムの写真をシネフィルのFacebook版にアップしたりと、当時のこの映画がもっていた熱が、じわじわと編集部にも伝わってきました。
映画『ゴンドラ』は30年の時間を経て、2017年の新たな鑑賞者たちを得て、しっかりと大地に足をつけ、次の時代につながろうとしているのではないでしょうかー
ー詩人・シネフィル編集長 園田恵子
関西地区での上映が続々決定!
2017年3月25日より名古屋シネマスコーレを皮切りに 4月22日大阪シネ・ヌーヴォ、5月以降は京都みなみ会館、神戸 元町映画館などで上映が確定している。
■大阪シネ・ヌーヴォにて絶賛公開中
(35mmオリジナル・プリント/デジタル・リマスター版)
■6月10日(土)~6月23日(金) 兵庫県豊岡市・豊岡劇場
■6月24日(土)~7月7日(金) 京都みなみ会館
■7月8日(土)~7月21日(金) 神戸・元町映画館
✳️クラウドファンディングもスタートしました!
是非、30年前の作品が”ヒット”するという挑戦に力をかしてください!!!
ストーリー
都会― そびえ立つコンクリートの群れ。
熱を帯びたアスファルト。
無表情に流れてゆく雑踏。
無機質で膨大な顔をもつ空間。
しかし、そんなとかに一角にも、
ひとりの人間と、ひとりの人間との、
小さな小さな世界が無数に散らばっている。
父親は夢に追われた少年― 母親は女。
彼らもかつてここで出逢い、愛し、
一つの生命を宿した。
が、二人の心が別々に歩き出したとき、
引き裂かれた幼い魂は、
どこを彷徨うのか・・・・・・
出演
上村佳子・界 健太(新人)
木内みどり・出門 英
佐々木すみ江・佐藤英夫
鈴木正幸・長谷川初範(友情出演)
奥西純子・木村吉邦
原案・脚本 伊藤智生 棗 耶子
撮影 瓜生敏彦
照明 渡辺 生
編集 掛須秀一
音楽 吉田 智
音響 松浦典良
効果 今野康之
録音 大塚晴寿
助監督 長村雅文 飯田譲治
ネガ編集 小野寺桂子
衣装 藤井 操
美術装置 張ケ谷 実
メイク 立川須美子
アニメーション制作 スタジオぎゃろっぷ
制作進行 四海 満 小宮 真
プロデューサー 貞末麻哉子
監督 伊藤智生(TOHJIRO)