映画『ヘヴンズ ストーリー』『64 ロクヨン』の瀬々敬久監督が、漫画家・つげ忠男の作品を映画化した「なりゆきな魂、」の公開初日が2017年1月28日に決定した。
原作者つげ忠男は、兄・つげ義春の影響で漫画を書き始め、沈黙の時代をはさみながら断続的に作品を発表している孤高の漫画家。
本作は『成り行き』(ワイズ出版刊)から、釣りに出かけ、偶然男女の争いに巻き込まれ、衝動的に殺人を犯しまう老人たちを描いた「成り行き」、花見で偶然の出会いから殺し合いにまで発展してしまう男女の惨劇を凝視する初老の男「夜桜修羅」、戦後間もない頃のバラックで暴れる無頼漢サブの愛と別れ「懐かしのメロディ」、『つげ忠男のシュールレアリズム』(ワイズ出版刊)から、行きどころのない老人の彷徨を描いた「音」、この四作品に、バス事故に運命を翻弄される被害者遺族たちの顛末を描いた瀬々監督のオリジナルストーリーを加えて、大きな一つの物語に創りあげた意欲作。
つげ忠男の長年のファンだったという瀬々敬久が『ヘヴンズ ストーリー』(2010)、『64‐ロクヨン‐前編/後編』(2016)に引き続き、今回も「人が生きていく」という意味を問いかける……。
映画シーンと原作漫画イメージ
キャストには『ゲンセンカン主人』(1993年・石井輝男監督)で兄のつげ義春役を演じ、『無頼平野』(1995年・石井輝男監督)ではつげ忠男役を演じた佐野史郎が、再びつげ忠男役に挑戦。殺人に巻き込まれる老人たちに名優、柄本明と映画監督であり個性派俳優の足立正生が参加。他に山田真歩、三浦誠己、町田マリー、栁俊太郎、中田絢千、川瀬陽太ら異色キャストが集合。
瀬々敬久監督コメント
つげ忠男の漫画は20歳のころからのファンで、ささくれた風景と呼ぶべき光景にいつも惹かれた。『成り行き』は、最近はあまり新作の発表しなかったつげ忠男の久々の短編集であり、一読して老齢に至りながら今の社会に何かを言わんとする姿勢に非常に胸打たれた。
たまたま行った芝居で、つげ忠男の『無頼平野』を映画化したことのある出版元のワイズ出版の社長、岡田さんに偶然会った。「あのつげ忠男の漫画、映画化しないのですか」と訊くと「決まってないけど、やりますか」と言われ、観劇後の居酒屋で企画が成立、三ヶ月後にはクランクインと一気呵成に作った。
オムニバス作品ではなく一つの物語にしたく、バス事故で生き残った人々のオリジナルストーリーを導入し、つげ忠男の漫画に特有な「戦争で生き残った」人々の生き様と繋ぎ、現在社会の変わりようへと戦後日本を万華鏡のように描いていくというシュールリアリズムな魂が宿った映画を目指した。
監督・脚本
瀬々敬久
原作
つげ忠男「成り行き」「つげ忠男のシュールレアリズム」より
キャスト
佐野史郎 足立正生 / 柄本 明
山田真歩 栁俊太郎 中田絢千 三浦誠己 町田マリー 石川真希 川瀬陽太 吉岡睦雄 後藤剛範飯田芳 國元なつき 坂上嘉世 管勇毅 増田健一 蟹瀬令奈 葵來沙 安野恭太 小田哲也 ほか
音楽・安川午朗
撮影・鍋島淳裕
照明・かげつよし
美術・布部雅人
録音・高田伸也
編集・早野亮
監督補・菊地健雄
©ワイズ出版/日本/カラー/DCP/106分