シネフィル新連載「映画にまつわる○○」#08 映画における公開を考える 谷健二
ついに8月27日(土)から、監督作品『U-31』が公開されました。
原作は人気サッカー漫画『GIANT KILLING』で知られる綱本将也さん。
戦力外通告を受けたプロサッカー選手が、古巣のチームに戻ってきてもうひと踏ん張りできるのかを描いた大人の青春映画です。
と、全力で毎度の宣伝から入らせていただきました(笑)。
今回は映画の公開の話をさせていただきます。
インタビューなどでときどきうける『監督としてどのタイミングが一番達成感がありますか?』という質問。
もちろん監督によって違います。クランクアップした瞬間、関係者試写が終わった瞬間、、変わったとこだと事務所にポスターを貼った瞬間などなど、、
ですが、おそらく一番多いのは最初の一般公開の後ではないでしょうか。
はじめてお客さんにみてもらう瞬間、それが公開です。編集で何度もみて多少感覚が麻痺している中(笑)、
お客さんにどう映るのか緊張の瞬間でもあります。過去にハリウッドの超メジャー監督が上映初日にハワイに逃げた話などがあるように、
作品の大小問わず、相当な緊張感の中公開されるのだと思います。
さて自身の話。前回の作品(リュウセイ)が2013年公開なので、実に3年ぶりの劇場公開。
2013年末に製作がはじまり、公開までおよそ3年かかった作品となります。
映画といえば、公開までにとにかく時間と手間のかかるイメージがあるかと思います。
『お蔵出し映画祭』なるものまであることを考えると、もしかすると製作するよりも公開するまでのほうが大変なようにも感じます。
サッカー好きな国民的アーティストの歌で「長く助走をとったほうが より遠くに 飛べるって聞いた」とあるように、
長く助走をとることでヒットが生まれるのかもしれません。
なぜ?公開までに時間がかかるのか?
いくつか考えられます。
まずは劇場まわり、人気の劇場は半年以上、上映する作品が決まっているので、かなり早めの交渉が必要になります。
とくにシネコン(シネマコンプレックス)がほとんどを占める映画館事情。
隣でやっているのはハリウッド大作や大人気アニメだということを考えれば、
誰もが知っているキャストや監督の実績がないとなかなか相手にしてくれません。
次に宣伝、製作発表から、関係者試写、完成試写などを踏まえ、何度もニュースを作ります。
その間にキャストやスタッフのインタビューなどを重ね、
公開1か月前ぐらい前からテレビでCMが流れたり、雑誌や新聞の広告、映画館にチラシを置いてもらうなど、どれだけ時間があっても足りないぐらいの作業量があります。
実際今回の作品でも、今年1月に製作発表していますが、ここにきて原作ファンの方から映画化するのを初めて知ったという情報が見られるなど、
多くの人に情報を届けるには長くじっくりやる必要があると実感させられます。基本、配給会社さんや宣伝会社さんがやってくれるものですが、
監督としてたくさんの人に見てもらえるように、毎回何でもやるつもりでいます。
誰かが言ってました。映画は、公開までは監督たちのもの、公開されればお客さんのもの。
あと数日で旅立ってしまう作品、今のうちにしっかり向き合いますと思います。
長々と書きましたが、企画から公開までいろいろと思いが詰まった映画『U-31』、ぜひとも大きなスクリーンでみていただきたいです。