映画『64 -ロクヨン-』(瀬々敬久監督)を、観逃したままになっていた『前篇』から、休憩をはさんで『後篇』まで、立て続けに一気に鑑賞した。全4時間。ものすごく面白かった。
瀬々さんの魅力はピンク映画時代のあの、観客を突き放したような破天荒な作劇と型破りの演出にあると個人的には思ってきたので、たとえば、大作商業映画初進出作の『感染列島』などは、その教科書的にナラティブな語り口と正攻法の演出ぶりに面食らい、なにか無理をされているような、商業映画の話法にしばられて不自由されているような、そんな気がして、まったく入っていけず、乗れなかったのだが、その後の商業一般映画の『アントキノイノチ』や、とくに今回の『64』には、完璧にやられてしまった。まいりましたというほかはない。
映画から察するに原作も相当いいのだろうが、脚本がじつに素晴らしい(久松真一さんと瀬々さん。「協力」として井土紀州さんのお名前もクレジットされている)。複雑な話のさばきと深めようが見事だ。演出も撮影も照明も録音も美術も編集も音楽も申しぶんない。
それから役者。その人ひとりで主役が張れる級の役者が大勢登場して、みなさん、配役された自分の役を忠実に存分に演じきっている。“ああ、日本の役者って、なんていいんだろう!”。そう思いつづけながら観させていただいた。そう思わせていただいたということ、それはつまり、いい映画ということなのである。
(7月7日、T・ジョイSEIBU大泉にて)
旦(だん) 雄二 DAN Yuji
〇映画監督・シナリオライター
〇CMディレクター20年を経て現職
〇武蔵野美術大学卒(美術 デザイン)
〇城戸賞、ACC奨励賞、経産省HVC特別賞 受賞
〇日本映画監督協会会員(在籍25年)
〇映画『少年』『友よ、また逢おう』
〇CM『大阪ガス』(大竹しのぶ)『DHC』(神保美喜、細川直美、山川恵里佳、藤崎奈々子)『東洋シャッター』(笑福亭鶴瓶)『岩谷産業』(浜木綿子)『武田薬品』(杉浦直樹)『NEC』(三田寛子)『ソルマック』(渡辺文雄)『出光』(山下真司)『トクホン』(吉田日出子)『ポラロイド』(イッセー尾形)『河合塾』(三輪ひとみ)『カレーアイス』(南 利明)『ラーメンアイス』『富士通』『飯田のいい家』『ポッカレモン100』『ミニストップ』『佐鳴学院 SANARU』ほか
〇ドキュメンタリー『寺山修司は生きている』『烈〜津軽三味線師・高橋竹山』
〇ゲーム『バーチャルカメラマン』『バーチャフォトスタジオ』
〇アイドル・プロジェクト『レモンエンジェル』
〇脚本『安藤組外伝 群狼の系譜』細野辰興監督版(共作)
〇映画監督・旦(だん)雄二のブログ
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