シネフィル新連載「映画にまつわる○○」#05 映画におけるタイトルを考える 谷健二

タイトル、映画においてのいわゆる顔です。
映画館でもレンタルビデオ屋でも、まずはタイトルとメインビジュアルに目が行くことがほとんどだと思います。
興味深いタイトルに、興味深いビジュアル、そこから入ってストーリーにいくかと。
そこで今回は映画のタイトルについてお話しさせていただきます。ビジュアルの話もいつかどこかで。
少し前に終わってしまいましたが、映画業界の一大イベント、第88回のアカデミー賞作品から考察してみます。

「オデッセイ」

画像: http://osusumeeigakansouhyouka.xyz/category/オデッセイ/

http://osusumeeigakansouhyouka.xyz/category/オデッセイ/

直訳すると「長い冒険」。原題は「The Martian(火星の人)」みたいですが、原題のままだと日本だと微妙な気がしました..
読みにくいうえに発音しにくく、火星?はて?となるのでは。作品のメジャー感や世界観を考えると、オデッセイがとてもフィットしていて
成功しているタイトルだと思います。上から目線ですみません。

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

画像: http://page6.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/f172770677

http://page6.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/f172770677

「レヴェナント 蘇えりし者」

画像: http://sapporo.parco.jp/page2/8906/2182/

http://sapporo.parco.jp/page2/8906/2182/

作品賞と主演男優賞の2作品。サブタイトルをつけているバージョンですね。
「マネー・ショート」だけだとなんのこっちゃって人に対し、華麗なる大逆転が付いていると物語が一気に痛快なかんじになり、ちょっと見たくなります。
また、華麗なる大逆転がタイトルだと何がテーマかわからないので、これまた気の利いたタイトルだといえます。

「レヴェナント」なんかも同類ですね。オシャレタイトル+物語を細くするサブタイトルといった組み合わせです。
もちろん会ったことないですが、ディカプリオさん、おめでとうございます。

過去には、第86回作品賞の「それでも夜は明ける」なんかはタイトルだけでも見たくなる作品です。夜は明ける、ではなく”それでも”夜は明ける、なんです。
”それでも”になんとも深みがあります。第87回はやっぱり「セッション」。タイトルから想像できうる内容であり、とても潔いタイトルだと思います。

場所を日本に移せば、今年のアカデミー優秀作品賞の「日本のいちばん長い日」や「百円の恋」なんかは興味そそられるタイトルだと思います。
タイトルだけで興味喚起できている成功例だと思います。

画像1: 「レヴェナント 蘇えりし者」

国内外含めていろいろあげてみましたが、そんな映画のタイトル、どのような経緯でつけられているのか、自身の作品を例にとってみます。
このままだと監督が書くコラムでなくて良い気がしてきたので..

画像2: 「レヴェナント 蘇えりし者」

これまで、短編7本、中編1本、長編2本を監督してきました。
まず企画段階でなんとなく仮タイトルをつけます。これがないとキャスト・スタッフで共通の会話ができなくなるのでとりあえずなんとなくつけてみます。
過去を振り返ると、短編1作目の「コンティニュー」は仮タイトルが「TOKYO HEAVEN」。路上ミュージシャンの話だったので、路上でパフォーマンスする人のことをヘブンアーティストというらしくそこからとってきました。
なんかしっくりこないまま撮影が終わり、そろそろタイトルを、との時に劇中で歌ってもらった
「コンティニュー」という曲がとってもよく、物語自体も「続く」を意識した内容になっており非常に満足したような気がします。

他には、仮タイトルのまますすむ場合もあります。短編2作目となった「スレッド」や初長編の「リュウセイ」なんかは企画段階でのタイトルでそのまま公開しています。
物語ができてタイトルを作ったというより、なんとなくタイトルが頭に浮かんできて、その後に物語が形成されるといったパターンです。
あまりないですが、ときどきふとタイトルから頭にうかぶことがあります。最初から、テーマがはっきりしている分、よい作品になる気がこれまたなんとなくします。まーなんとなくです。
そして、これまで自身の中で一番きたな、と思うタイトルは中編の「さとるだよ」。仮タイトルの時は確か「都市伝説S」(※SはさとるくんのS)だったのですが、
編集していく中で「さとるだよ」のセリフが頭に残り思い切ってタイトルにしてみました。

画像: さとるだよ 予告編 youtu.be

さとるだよ 予告編

youtu.be

作品自体は賛否両論あるみたいですが(笑)、タイトルだけはすごく気にいっています。
いやもちろん内容もです(笑)
こうしてみるとタイトルって本当に面白いですね。
最後に、今一番気になっている作品は、間接的にいろいろお世話になっていて、影響もうけている榊英雄監督の
「オナニーシスター たぎる肉壺」
なんかもう、完璧です。

画像3: 「レヴェナント 蘇えりし者」


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