69歳のお誕生日、2017年春には大回顧展『David Bowie is』が日本にもやって来る!という嬉しい知らせ聞いたところなのに。その2日後、1月10日。まだ少し信じられない気分です、よね……。

 デヴィッド・ボウイと映画との関わりはご存知の通り。『地球に落ちて来た男』(1976)、『戦場のメリークリスマス』(1983)など自身が出演する作品も数多いわけですが、彼の楽曲がとても印象的に使われている作品も多数。監督たちが、「ここでは絶対ボウイのこの曲使いたいんだ!」という意思すら伝わってきそうな、単なるBGMではない起用っぷりに唸らされ、引き込まれて我々はスクリーンにさらに釘付けになっていく。
 80年代、ジョン・ヒューズ監督が『ブレックファスト・クラブ』を”Changes”の歌詞引用から始めたり、『汚れた血』ではレオス・カラックスが起爆剤のように“Modern Love”を使ってドニ・ラヴァンを疾走させたりしていましたよね。若者たちの熱い心情がボウイの楽曲に乗っかってほとばり、放たれるという名シークエンスはそれぞれの作品を少なからず牽引していたと言ってもいい。
 ここ最近で公開された佳作の中にも、映画とボウイの楽曲とがコラボした名シークエンスはいくつもありました。ボウイよりもずいぶんと年若な監督たちにも彼の作品は強く深く受け入れられているんだな、とつくづく。ボウイが持ち続けていた革新的な心意気が登場人物たちに寄り添うように流れるのはある種の快感と言うほかなく。若い衆らの支持を知ってか知らずか、ときを同じくして約10年ぶりの新譜“The Next Day”を引っさげて来たわけですからね。ますます天晴れなボウイ氏だったわけです。
 どれも本当に好きな作品(個人的嗜好ですんませんっ。けれど、どれもオススメ!)。映画好きとしては、これらの作品を今一度観直したりして、遅ればせながらのご冥福をお祈りすることにいたします。

『フランシス・ハ』(2012)

 マンハッタンで不器用にも果敢に、そして何となくチャーミングにも生きてるフランシス。そんな彼女がチャイナタウンを駆けたときのBGMは“Modern Love”。右往左往しながらのトホホな毎日だけれど、このときだけは全部吹っ切って“前しか見てない”度が急上昇。この、ひとときの幸福感を我々も目撃できるところは間違いなくこの映画のひとつの山場。トリュフォー映画の音楽も多用されていてそれもまた巧み、とか、カイロ・レン@スター・ウォーズのアダム・ドライバーの姿もwとか、いろいろ書きたいこともありますが、また別の機会に。

『クロニクル』(2012)

 デイン・デハーンが切なさと焦燥を募らせるティーンエイジャーを演じて注目を浴びることとなったSF佳作。失業した父親の暴力と家庭の閉塞感に耐えられなくなった彼は、”Ziggy Stardust“に掻き立てられるように荷物をまとめて家を飛び出して……。

『ウォールフラワー』(2012)

 ジュブナイル小説の映画化、本作でキラキラしてたシークエンスのひとつが、ピックアップトラップを走らせて盛り上がる夜。ラジオから流れる“Heroes”に「パーフェクトな曲じゃないの!」とエマ・ワトソン扮するサムが思わず立ち上がって一身に風を受ける。明日が待ち遠しいと言わんばかりの表情の彼女のことを、祝福せずにはいられないわけです。

こちらはおまけ。
『LIFE!/ライフ』(2013)

 一歩踏み出すべきか迷いに迷っていた主人公ウォルターが、同僚のシェリルが歌う“Space Oddity”にドンッと背中押されてGO! サビからはボウイとのデュエットをお楽しみください♫

松本典子
ライター・編集者。
前職では念願の”映画漬け”編集生活を堪能するも忙しすぎて映画なかなか観られなかったという驚愕(←自分的)過去を持つ。現在、せっせと取り戻し修業中。

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