第16回宝塚映画祭が開催される。
今回の特集は、谷崎潤一郎没後50周年の特集上映や、宝塚映画時代の名作を中心に開催される。
谷崎潤一郎の特集上映では、原盤を失われて幻の映画となっており、数年前にロシアで見つかった『お市の方』や、宝塚映画名作選では、三船敏郎の唯一の監督作品『五十万人の遺産』など貴重な映画が上映される。
また、林海象監督の『彌勒』も上映。幅広い視点での映画祭となっている。

谷崎潤一郎 没後50周年記念

谷崎潤一郎は若い頃から映画が好きで、大正時代には映画製作に打ち込んだ時期もあり、最初の妻の妹で『痴人の愛』のモデルとなった少女を自作の映画に出演させています。また、元タカラジェンヌと結婚した美男俳優の岡田時彦とも親しく、彼が昭和9年に夙川でなくなった折には弔辞を読みましたし、その遺児に「岡田茉莉子」という芸名を付けたのも谷崎でした。 阪神間でロケが行われた谷崎映画としては、芦屋を舞台とする『細雪』や、香櫨園の海岸で撮影された『猫と庄造と二人のをんな』などがあり、この2作は今回上演します。

細雪

画像: © 国際放映

© 国際放映

軍部の圧力で発禁処分となり終戦まもなく世に出た『細雪』は、「昭和の源氏物語」とも呼ばれて日本の近代文学を代表する名作となり、高級住宅街・芦屋の名を天下に高からしめた。発表2年後には映画化され、製作費は当時の作品としては破格の3,800万円。阪神大水害の洪水シーンなどでは特撮が使われた。作品の舞台となった谷崎潤一郎旧居「倚松庵」は住吉川沿いで公開されている。
制作 1950年 / 日本(新東宝)
原作 谷崎潤一郎
監督 阿部豊
出演 花井蘭子、轟夕起子、山根壽子、高峰秀子
フィルム 白黒 / 145分 / DCP

猫と庄造と二人のをんな

画像1: © 東宝

© 東宝

一匹の雌猫に振り回される三人の男女の生態をユーモラスに描く。原作の舞台は阪神沿線の打出界隈。同じ阪神沿線で育った森繁久彌が怠け者の主人公を関西弁で好演。撮影は香櫨園海岸などで行われた 。 1956年度キネマ旬報ベストテン第4位。文豪・谷崎潤一郎も愛猫家で知られた。
制作 1956年 / 日本(東京映画)
原作 谷崎潤一郎
監督 豊田四郎
出演 森繁久彌、香川京子、山田五十鈴、浪花千栄子
フィルム 白黒 / 135分 / 35㎜

お市の方

画像: 東京国立近代美術館フィルムセンター

東京国立近代美術館フィルムセンター

原作は女人崇拝の小説「盲目物語」。織田信長の妹にして浅井長政の妻であるお市の数奇な生涯を、新会社の大映が映画化。宝塚を退団して間もない宮城千賀子が、戦国時代を象徴する美女を演じる。原版は失われていたが、ロシア・ゴスフィルモフォンド(国立映画保存所)で近年発見された。
制作 1942年 / 日本(大映京都)
原作 谷崎潤一郎
監督 野淵昶
出演 宮城千賀子、大友柳太郎、月形龍之介、水野浩、阿部九州男
フィルム 白黒 / 88分 / 35㎜

上記の他 『春琴抄』も上映

宝塚映画 名作選

かつて宝塚には日本映画黄金期の一翼を担った映画撮影所、宝塚映画製作所がありました。
モダンなスタジオ 2棟と オープンセット、最新鋭の設備を有したこの撮影所では、実に176作品もの劇場映画(通称「宝塚映画」)が製作され ました。
宝塚がまさに「映画の都」だった時代の記憶を次の世代へと伝えるべく、宝塚映画祭では毎年宝塚映画に関する特集を企画、作品の発掘と上映を行なっています。

ロマンス誕生

画像2: © 東宝

© 東宝

宝塚映画らしく華やかな舞台場面がたっぷり出てくる音楽映画。美空ひばりは本人役で登場し、美声を披露する。ショーの構成は、宝塚歌劇に「すみれの花咲くころ」をもたらした白井鐵造が担当。振り付けは歌劇団演出家の渡辺武雄。舞台セットも力が入っている。歌劇団の映画専科から環三千世が出演。
制作 1957年 / 日本(宝塚映画)
監督 瑞穂春海
出演 雪村いづみ、山田真二、美空ひばり、淡路恵子、環三千世、宝田明
フィルム カラー / 101分 / 35㎜

若い仲間たち うちら祇園の舞妓はん

画像3: © 東宝

© 東宝

当時日本の芸能プロの頂点に立っていた渡辺プロと宝塚映画がタッグを組んだミュージカル。人気絶頂のアイドル、ザ・ピーナッツの伊藤エミとユミ(双子です)がそれぞれ祇園の舞妓と人気歌手役を。「スパーク3人娘」として売り出し中だった中尾ミエ、伊東ゆかり、園まりも舞妓役として祇園を駆け巡る。
制作 1963年 / 日本(宝塚映画)
監督 佐伯幸三
出演 ザ・ピーナッツ、中尾ミエ、伊東ゆかり、園まり
フィルム カラー / 92分 / 35㎜

五十万人の遺産

画像4: © 東宝

© 東宝

「世界のミフネ」(当時、黒澤明監督作で欧米で圧倒的に評価されていた)が唯一監督を務めた作品。フィリピンの山奥に眠るとされる旧日本軍の特製金貨を巡る欲望を描いたアクションドラマ。タイトルの「五十万人」とは現地で散った元兵士たちを意味する。三船は元陸軍主計少佐を演じている。
制作 1963年 / 日本(宝塚映画)
監督 三船敏郎
出演 三船敏郎、仲代達矢、三橋達也、山崎努、星由里子
フィルム カラー / 98分 / 35㎜

上記の他『カモとねぎ』 『ある大阪の女』が上映

林 海象 ~モノクロームの美学~ 『彌勒』

稲垣足穂文学 初の映画化!
稲垣足穂文学初の映画化。林海象とその教え子たちによって製作された。
映画は、第一部「真鍮の砲 弾」第二部「墓畔の館」の二部構成。
足穂文学を忠実に白黒映像で再現している。音楽は映画版と生演奏版があり、生演奏版はライブ演奏で全国を巡回し話題となった.下鴨神社で神様に初めて映画を観せる奉納上映を行なった。

謎の映画『彌勒 MIROKU』は、稲垣足穂(1900~1977)の小説「彌勒(みろく)」が原作になっています。稲垣足穂の小説は今まで何人もが映画化しようと試みましたが、原作のもつ創造性の強烈さ、哲学性の深さ故に映画化は不可能とされ、原作権を守っているご遺族も、その映画化を許しませんでした。
林海象は少年の頃から稲垣足穂を愛読し、映画監督になってからも「彌勒」の映画化を夢み、独自に脚本を書き続けてきました。
それから二十数年、足穂のご遺族と会う機会があり、そこで長い話しあいのうえ、映画化の許しを受けました。しかし、その後も映画化は実現されることなく十数年が経ちました。そんな時、北白川派映画芸術運動の一作として創る機会が突如到来しました。

原作 稲垣足穂
脚本・監督 林海象
出演 永瀬正敏、土村芳、佐野史郎、井浦新、四谷シモン

謎の映画「彌勒 MIROKU」予告編其ノ一

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第16回宝塚映画祭
2015年11月21日(土)~27日(金) 兵庫県 宝塚シネ・ピピア
前売り料金:1回券 1000円 / 3回券 2700円
当日料金:1回券 1200円

宝塚映画祭2015トレイラー

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その他、上映スケジュール等詳細は下記より

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