北島博士のおもしろ映画講座 第64回 『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯へ』『凱里ブルース』
『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯へ』
原題(Long Day's Journey into Night)を聞いた時、ユージン・オニールの同名戯曲の映画化かと思った。1956年に初演されたオニールの劇は20世紀演劇の最高峰と言われ、日本では「夜への長い旅路」として上演されている。題名が示すように俳優と麻薬中毒の妻、放蕩息子に肺結核に冒されたもう一人の息子、メイドで構成されるある一家の朝から夜までの葛藤、感情の揺れが描かれる。
今回紹介するビー・ガン監督の作品は、これとは全く異なり、主人公が謎めいた女性の行方を探す旅を綴っており、一日では終わらないし、リアルさも追及されない。主人公ルオ...