北島博士のおもしろ映画講座 第32回 黒沢清監督『散歩する侵略者』
「散歩する侵略者」という題名は、これまでに宇宙からやってきた多くの侵略者の獰猛で狡猾な性質、グロテスクな形態といったイメージとは異なるので、観客に戸惑いと大いなる期待を抱せるにはおかない。
僕などはすぐにブラック・ユーモアの秀作「散歩する霊柩車」を連想したが、本作も一種のブラック・ユーモアと言えぬこともない。しかも宇宙侵略ものSFでラブストーリーでもあるのだ。
前川知大が率いる劇団イキウメの同名舞台劇を黒沢清が映画化したもので、同劇は2005年に初演され、07年、11年と再演を重ねているというから、人気のほどが知れよう。昨年公開された、昼と夜に別れた世界を描く「太陽」も彼の舞台をもとにし...