江戸琳派に先取りされていた「現代芸術」の奇跡
根津美術館 重要文化財指定記念特別展「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」
不思議な絵だ。「異様」とすら言えるかも知れない。あえて限定された色数が濃厚かつフラットに塗られ、背景は一面の分厚そうな金箔。あまりに強烈な色彩の取り合わせに、「毒々しい」と感じる人もいるかも知れない。
いやそれを言うならいっそ「まがまがしい」と形容する方が相応しい、とさえ個人的には思う。あまりに濃厚な世界観の中には、なにかこの世のものならざる空気、異次元の、狂気にも近いなにかさえ宿っていそうだ。だからこそ、この屏風は観る者の目を釘付けにする。
なんの情報も与えられずに突然そこに立たされたとしよう。果たしてどれだけの人が日本の、それも19世紀前半つまり前近代のいわゆる古典・伝統絵画だと、す...