小野耕世のPLAY TIME
「鋼鉄ジーグ」に魅せられた イタリアの映画監督
「本コラム、物語の核心に触れております。ご注意ください」
1.ローマ郊外を走る男
男が走っている―というのは、映画の出だしとしては別に珍しくもないが、ここで男が走っているのはローマ郊外で、時には空中撮影を含むこのシーンには、ローマのコロシアムも一瞬、見えたりする。黒い髪でヒゲを生やした男の走る呼吸音がきこえる。〈許すな暴力〉と記した垂れ幕を手にしてデモをする人びとや、パトカーの走る場面もある。男はテヴェレ川に沿った道を走り、川岸の倉庫のような建物のなかに隠れる。彼を追ってきた男も、建物のドアを開けるが、すでに探す男の姿はない。ピストルをかまえて追っては、建物から出て、もうひとりの追手の仲...