日本人はどこに「美」を見出し、なにを「宝」として来たのか?〜東京国立博物館創立150周年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」
タイトル画像の、鉄という素材の本質を凝縮したような、鉄のオブジェとして世界で最も美しいかも知れない物体は、かつて徳川家康も所持した短刀だ。
鎌倉時代の刀工・粟田口吉光の作であることが、実際に使われるときには柄(つか)で覆われる茎(なかご)に刻印された「吉光」の銘から分かる。近世には「名物」とされ、吉光の通称「藤四郎」(近代以前の日本人の呼び名は「吉光」であるとか「家康」であるとかの本名にあたる「諱」を使うことは滅多になく、「太郎」とか「四郎」といった通称や、公式の位がある場合は官職名で呼ばれるのが普通だった)と、写真でも分かるであろう刀身の分厚さから、「厚藤四郎」という名でも知られる。
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