連載:おしゃべりな映画たち 第7回
『1秒先の彼女』(2020年/チェン・ユーシュン監督)
「単なる、ダサかわいい、ロマンティックコメディです」という顔をして、すましている、この映画が、実際のところ、観客に、何をしかけているのか。考えれば考えるほど、わからなくなるのです。ものすごく奥手な女性がギリギリのところで見る離人症的な夢としての、『アメリ』(2001年/ジャン=ピエール・ジュネ監督)を、プロトタイプにしているのは、間違いないとして。ここで描かれた、圧倒的なさびしさといじましさを包み込むような何かを、なんとよんだらいいのでしょう。
この映画の監督、チェン・ユーシュンは、エドワード・ヤンたちが台湾映画を盛り上げた時期の最後、1998年にデビューし、それから、すぐに、映画を撮れ...