小野耕世のPLAY TIME "ふたたび映画『デルス・ウザーラ』、または<記憶の迷路>について"
小野耕世のPLAY TIME
ふたたび映画「デルス・ウザーラ」、または<記憶の迷路>について
前回に続いて、1975年の黒澤明監督作品「デルス・ウザーラ」公開時に私が『キネマ旬報』8月上旬号に書いた映画評の続きを、以下に記しておく。
"私にとってこの映画は、黒澤作品のなかでも最高作と思っている「蜘蛛巣城」とならんで好きな作品となった。この映画の成功は<自然>に負うところが大きい。ひとつは、文字どおりのシベリアの大自然、もうひとつはデルスに扮したムンズクという俳優のもつ<自然>。原作のイメージそのままのこの男が出ていると、彼から目を離せなくなってしまう。それほどこの役者には、自然の輝きと魅...