北島博士のおもしろ映画講座 第38回 「ラブレス」--なんと悲痛な響きの言葉だろうーこの映画ほど痛烈な衝撃を見る者に与える映画はそうないだろう
「ラブレス」--なんと悲痛な響きの言葉だろう。その言葉を題名としたこのロシア映画ほど、痛烈な衝撃を見る者に与える映画はそうないだろう。
両親が口論しているのを別室にいる12歳の息子が耳をふさいでいる光景を見ると、深い悲しみにおそわれずにはおかない。だが、映画はそんな観客の感傷に訴えることより、淡々と両親の不和、少年の日常を描くことでより強い印象を与えることに成功している。
監督は、放蕩親父が帰ってきたことから起きる波紋を甘さを排して描ききった「父、帰る」、社会の底辺に押し込められた貧しい人が不当な扱いをされるという「裁かれるは善人のみ」のアンドレイ・ズビャギンツェフ。
この二作同様に、両...