新鋭・平田雄己監督特集上映、初開催。
サン・セバスティアン国際映画祭入選・大場みなみら出演の短編『ピクニック』&藝大修了制作・細川岳主演による中編『ロスト・イン・イメージズ』が、ポレポレ東中野にて 11 月 22 日(土)より三週間限定公開決定!

“平田雄己はまぎれもなく未来の映画作家だ。”―蓮實重彦

平田雄己監督プロフィール

神奈川県出身・1999 年生まれの現在 25 歳。日本大学芸術学部映画学科監督コースを卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に進学。蘇鈺淳監督『走れない人の走り方』の演出部をはじめスタッフとしても経験も積みつつ、大学院の教授であった黑沢清・諏訪敦彦・塩田明彦らに師事。東京藝術大学大学院映像研究科在学時に制作を行った『ピクニック』と『ロスト・イン・イメージズ』はいずれも高評価を受けていながら、これまで学内および修了制作展での上映しか行われておらずソフト化・配信予定も無く、本特集が貴重な上映機会となる。
また、2023 年、オフィス桐生主催「20 祭」コンペに選出された短編『二十才の夜』が 7 月に池袋シネマロサにて公開。また、短編『凛として』が第 36 回東京国際映画祭 Amazon テイクワ ン賞ファイナリスト作品にノミネートされた他、共同監督したドキュメンタリー『大崎から』が東京ドキュメンタリー映画祭⻑編コンペティション部門に選出された。2024 年、短編『ピクニック』が第 72 回サン・セバスティアン国際映画祭の NEST 部門にノミネートされた。

平田雄己監督からのコメント

このたび、大学院時代に制作した作品を、より多くの方にご覧いただける機会をいただき、大変光栄に思います。
おそろしい速さで社会が移り変わり、フィクションと現実の境界が曖昧になっていくなかで、映画には何ができるのか。もしかすると、そのどちらも描き出せることが、映画の魅力なのかもしれない。そんなことを考えながら、取り組んだ作品です。
まったくジャンルの異なる 2 作品ですが、どちらにも、この不確かな世界で、それでも何かを信じようとする人々の姿が映っています。ご覧になった方々の中にも、何か共鳴するものがあれば嬉しいです。

<作品紹介>

『ピクニック』

(東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻 18 期春期実習作品)★第 72 回サン・セバスティアン国際映画祭 NEST 部門 正式出品
STORY
ある日文乃は、恋人の修一、その娘の湊とピクニックに行く。しかし3人の空気は少しぎこちない。やがて、3人は散り散りに。死んだ母・美帆との記憶に浸る湊。過去の家族の幻想を見る修一。そして、文乃の前には美帆が現れる。

画像: ©2023 東京藝術大学大学院映像研究科

©2023 東京藝術大学大学院映像研究科

出演:大場みなみ ⻄山真来 佐々木想 上坂美来
監督:平田雄己 脚本:福嶋芙美 平田雄己 プロデューサー:大槻美夢 撮影・照明:小澤将衡 録音・サウン
ドデザイン:谷口祐 美術:粟悦 衣裳・ヘアメイク:前川睦巴 編集:王菲児 音楽:佐藤七海
(ステレオ/ヨーロピアンビスタ/20 分/2023) ©2023 東京藝術大学大学院映像研究科

『ロスト・イン・イメージズ』

(東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻 18 期修了制作作品)
信じられる世界の終わり。
STORY
探偵映画の製作に取り組む監督の桐山。しかし、出演していた女優・美羽が謎めいた失踪を遂げたことから、撮影は中止に陥ろうとしていた。桐山は、美羽の兄を名乗る謎めいた男・真とともに美羽の行方を探し始めるが、劇中の出来事によって現実が侵食されていき、大きな混乱の渦に巻き込まれていく。

画像: ©2024 東京藝術大学大学院映像研究科

©2024 東京藝術大学大学院映像研究科

出演:細川岳 大⻄信満 向里祐香 川瀬陽太 遊屋慎太郎 村上由規乃 宮田佳典 服部⻯三郎 齊藤由衣
監督:平田雄己 脚本:平田雄己 福嶋芙美 峰岸由依 プロデューサー:大槻美夢 撮影:韓天翼 照明:小澤
将衡 美術:庄蕾⻨ 袁彦妮 録音・サウンドデザイン:邱文翰 編集:許佳雯 助監督:志筑司 季子汀 CG
制作:D.Rock-Art 音楽:須藤佳帆
(5.1ch/シネマスコープ/56 分/2024) ©2024 東京藝術大学大学院映像研究科

【COMMENTS】

また、本特集上映開催にあたり批評家の蓮實重彦さんよりコメントが届きました。さらに『ロスト・イン・イメージズ』完成時に提供された、大学院の教授陣であり映画監督の塩田明彦・諏訪敦彦・筒井武文からのコメントも掲載いたします。

◯蓮實重彦
ふと目にした『ピクニック』のショットの連鎖に強く惹かれた。厳密なのに緩やかだ。緩やかなのに厳密である。
『ロスト・イン・イメージズ』も、撮れている。平田雄己はまぎれもなく未来の映画作家だ。

◯塩田明彦
マホガニーに囲まれた探偵事務所に瞳に光のない女が現れ、失踪者の捜査を依頼する。案の定、事件は錯綜していくのだが、これは映画内映画の話で、実はこの映画の出資サイドは女優を変え、新たな映画を創ろうとしている。
これに猛反発する監督だが、瞳に光のない女優がどこかへ失踪し、新たな謎が、彼の私生活を覆い始める。イメージは増殖し、謎もまた増殖していく。そうこうするうち突如、天地の軸と水平の軸が交錯し、突発的で同時多発的なアクションが画面の上を駆け抜けていく。映画とはなによりもまず“活劇”なのだと知る者のみに可能な、見事な映画的瞬間がそこにある。

◯諏訪敦彦
「フィルム・ノワール」という失われたジャンルを映画化するために、映画を作るというメタフィクションを導入することで虚構と現実の対立が仕組まれるが、現実の物語もまた虚実を往復する女の謎の疾走によってフィルム・ノワールと化してゆき二つの世界は相互に侵食してゆく。その外側にさらに国家的な陰謀を進行させることで世界を調停させようとするが、それもまた虚構の内部に織り込まれてしまうことに変わりはない。自ら仕掛けた二重三重の罠に自分で嵌まり込むかのように物語は錯綜し、出口などないように思えるが、その混沌に身を呈する決意によって映画は冒頭に現れる子ども=自然という圧倒的な他者との回路を模索する。このような挑戦をした映画が他にあるだろうか。

◯筒井武文
平田雄己の『ロスト・イン・イメージズ』は、失踪した夫の探索を依頼される探偵という、陰影を強調したフィルム・ノワールとして始まるが、主演女優の失踪で物語が中断し、女優を探して撮影を再開しようとする監督とシナリオを変更しようとするプロデューサーの対立の物語になっていく。しかし、そこでも不条理な陰謀の世界が展開され、作る主体が解体されていく。フィクションは宙吊りされ、時間が消滅していくような映画体験をもたらすのである。

【予告編】

画像: 平田雄己監督特集上映《Lost in Images》|『ピクニック』&『ロスト・イン・イメージズ』予告編 www.youtube.com

平田雄己監督特集上映《Lost in Images》|『ピクニック』&『ロスト・イン・イメージズ』予告編

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