(カバー画像)「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
鮮やかな黄色の《ひまわり》や青色が印象的な《自画像》で知られるフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)。彼は、自然の持つ強さや美しさに感動し、優れた描写力、豊かな表現力によって、生命力あふれる独自の作品を描き出しました。名作の誕生までには、様々な困難もありましたが、弟・テオの支えもあり、後にはポスト印象派の巨匠と呼ばれるまでになりました。37 歳という若さで生涯を閉じたゴッホでしたが、彼の作品は、没後も、テオやその家族によって大切に受け継がれ、後世に伝えられたのです。
「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」が、大盛況の大阪展に続き、東京都美術館にて、2025年12月21日(日)まで開催されています。本展では、ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリーコレクションに焦点が当てられています。ゴッホの200点を超える絵画、500点以上の素描・版画を所蔵するファン・ゴッホ美術館の作品を中心に、ゴッホの作品30点以上に加え、ゴッホが影響を受けた印象派の画家、ゴーガンやピサロたちの作品が紹介され、日本初公開となるゴッホの貴重な手紙4通など合計75点が展示されています。
ゴッホの家族が受け継いできた画家の作品と夢をご覧ください。
ファン・ゴッホ家のコレクションからファン・ゴッホ美術館へ
ゴッホの死後、その作品の大半は弟・テオが受け継ぎましたが、テオはゴッホが亡くなった後、わずか半年でこの世を去り、その後、テオの妻・ヨーが受け継ぐことになりました。 ヨーの死後は、息子のフィンセント・ウィレムがすべてのコレクションを相続、コレクションの散逸を防ぐため、1960年には、フィンセント・ファン・ゴッホ財団が設立され、1973年、国立フィンセント・ファン・ゴッホ美術館(現ファン・ゴッホ美術館)が開館しました。
展覧会メインビジュアルとなっている《画家としての自画像》は、パリ時代の終盤に描かれた作品で、パレットを持ちイーゼルを前に、画家としての自身を描いた珍しい作品です。1890年に、ゴッホと初めて出会った弟テオの妻・ヨーは、すべての自画像の中でも本作がこの時のゴッホの印象に似ていると回想しています。
フィンセントとテオ、ファン・ゴッホ兄弟のコレクション

エルネスト・クォスト 《タチアオイの咲く庭》 1886-90年 油彩、板 45.5×55cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
見事に咲く、生命力にあふれるタチアオイの作品。ゴッホはクォストの描く本作を高く評価し、南仏で制作している際には、そのように自分もヒマワリを描きたいと考えていました。オーヴェール滞在中の手紙からは、クォストに会いにパリに行き、彼の作品を入手しようとしていたことがわかります。本作の裏面には「テオ・ファン・ゴッホへ/私の友人フィンセントがこのうえなく愛するこの絵を」と記されています。
フィンセント・ファン・ゴッホの絵画と素描
オランダ
ゴッホは、「ハーグ派」との出会いによって、自然観察力や描写力など絵画の基礎を学びました。

フィンセント・ファン・ゴッホ《女性の顔》1885年4月 油彩、カンヴァス ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
ハーグ派の影響を受けた初期の作品では重厚な色彩が多く、農婦を力強く描いています。
ゴッホは、貧しい農民たちの支えになることを目指し、絵を描くことで農民たちの暮らしの真実を伝え、貢献したいと願っていました。
パリ
弟のテオを頼ってパリに赴き、ロートレックや、ベルナール、ピサロら印象派の画家たちと交流を持ち、影響を受けます。

フィンセント・ファン・ゴッホ《モンマルトル:風車と菜園》1887年3-4月 油彩、カンヴァス ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
パリに出て、印象派の作品を初めて実際に目にしたゴッホは、新しい色彩と筆づかいを習得しなくてはならないと感じ、色彩は明るくなり、軽やかな筆触になりました。ゴッホはモンマルトルの農村的なモティーフを好み、本作では早春の美しい田園風景が描かれています。三次元のものを二次元に表現するため、パースペクティブ・フレーム(遠近法の枠)を通して風景を見ています。
アルル
南仏の明るい光のもとでゴッホは、自然の美しさを描き出します。
「周囲を見渡すと自然の中にたくさんの発見があって、それ以外のことを考える時間がほとんど無いことだ。」と、ゴッホは手紙に書いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ《耕された畑(「畝」)》1888年9月 油彩、カンヴァス ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil

フィンセント・ファン・ゴッホ《浜辺の漁船、サント=マリー=ド=ラ=メールにて》 1888年6月 油彩、カンヴァス 65×81.5cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
南仏アルルに居を定めたゴッホは、サント=マリー=ド=ラ=メールという小さな漁村を訪れました。オランダ時代から海景画を手がけていたゴッホにとって、地中海はかねてからの憧れの地でした。本作は現地でのスケッチをもとにアルルで描かれました。パリでジャポニズムが流行し、ゴッホも新しい表現様式を探し、日本美術を参考にして、大胆な遠近法を用い、平面的に描きました。

フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》 1888年11月 油彩、カンヴァス
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
ゴーガンと共同生活していた頃の作品。画家ミレーに憧れ、彼の描いた「種まく人」を自らも描きたいと試行錯誤を繰り返し、本作の構図にたどり着きました。大胆な構図で描かれ、大木は、日本の浮世絵の影響が感じられます。
サン=レミ
1889年、ゴッホは、アルルを離れ、ゴーガンとの決裂による傷心と、病気による発作を癒すために、サン=レミという小さな村の療養院に入りました。療養院の外での制作が許可されるようになると、風景画を描くようになりました。

フィンセント・ファン・ゴッホ《羊毛を刈る人(ミレーによる)》1889年9月 油彩、カンヴァス ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
本作はゴッホの尊敬するミレーの同タイトルの作品を模写しつつ、自身の表現に展開したものです。

フィンセント・ファン・ゴッホ《オリーブ園》 1889年11月 油彩、カンヴァス
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
1889年秋、ゴッホが最も力を入れて取り組んだのがオリーブ園でした。炎のように燃える生命力を感じる糸杉と同じく、彼はオリーブを重要なモティーフと位置づけ、オリーブ園の絵画を少なくとも15点制作しました。テオ宛ての手紙によると、寒いがとても美しく澄んだ日差しの中で、本作を含む5点を生み出したといいます。本作はオリーブの木々がリズミカルに配され、無数の短い筆触が並置されるように描かれています。ゴッホの晩年の作品によく見られる、うねるような筆致の様式です。
オーヴェール=シュル=オワーズ
サン=レミを離れたゴッホは、オーヴェールに移り住みました。テオへの手紙では村の家々の美しさを伝え、「オーヴェールはたしかにとても美しい」、「ここはとても色彩が豊かだ」と記しています。

フィンセント・ファン・ゴッホ《農家》1890年5-6月 油彩、カンヴァス ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
農家は、オランダ時代から関心をもって描いていたモティーフでしたが、オランダ時代とは違って、鮮やかで明るい色彩、荒い筆致でおおまかに描かれています。

フィンセント・ファン・ゴッホ《麦の穂》 1890年6月 油彩、カンヴァス
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
なだらかな丘陵と麦畑の広がるオーヴェールに着いた時、ゴッホは敬愛する画家たちが表現した「麦の声」を感じたといいます。一本一本の麦のかたちや色彩を入念に観察しました。《麦の穂》を描く難しさは、ゴーガンに宛てた手紙(未送付)にも「このように麦の習作を試みているが、うまく描けない」と語られていますが、生命力あふれる麦の穂が一面に清々しく描かれています。クローズアップで描く手法には、日本美術の影響が伺えます。

「傘を持つ老人の後ろ姿が描かれたアントン・ファン・ラッパルト宛ての手紙」1882年9月23日頃 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) 「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
ファン・ラッパルトは、ゴッホがブリュッセルで出会った先輩画家で、ふたりは手紙で自らの制作や雑誌に掲載された挿絵など、美術の話題を語り合いました。
わずか10年ほどの画業の中で、自然派の農民を描く作風から、印象派の影響を受け、光あふれる色鮮やかな美しい風景を描くようになったゴッホ。
彼は光り輝く自然の美しさに感動し、その感動を芸術で表現したのです。
ゴーガンとの共同生活の後、「耳切事件」を起こすなど、壮絶な人生でしたが、最後には、自然の強さと美しさを表わした生命力あふれる作品を描き、独自の世界を築きました。
ゴッホの感動的な芸術を是非、ご堪能ください。
そしてゴッホの作品を受け継ぎ、世に広めた家族の愛を感じてください。

「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」東京都美術館報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil
幅14メートルを超える鮮やかな異空間でのイマ―シブ映像は圧巻。感動的なゴッホの世界をご体感ください。
展覧会概要
展覧会名「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」
会期 2025年9月12日(金)~12月21日(日)
会場 東京都美術館
休室日 月曜日、9月16日(火)、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)
※ただし9月15日(月・祝)、9月22日(月)、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)は開室
開室時間 9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
お問い合わせ先TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
料金など詳細は公式サイトをご覧ください。
公式サイト:https://gogh2025-26.jp
X:@gogh2025_26 Instagram:@gogh2025_26
[名古屋展] 2026年1月3日(土)~3月23日(月) 愛知県美術館
東京展は下記の通り、日時指定予約を行います。
土日、祝日および12月16日(火)以降は日時指定予約制。
当日空きがあれば入場可。
※12月12日(金)までの平日にご来場の場合は日時指定予約は不要。
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢@東京都美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上3組6名様に無料鑑賞券をお送り致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年9月29日 月曜日 24:00
記載内容
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