東京都庭園美術館において2025年5月18日(日)まで「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」が開催されています。
1919年、ドイツではバウハウスが創設され、モダンデザインと新たな造形教育により世界に影響を与えましたが、1933年に廃校となりました。その後、第二次世界大戦の敗戦により、ドイツは東西に分断され、1990年に再統一されるまで東ドイツ(ドイツ民主共和国)と西ドイツ(ドイツ連邦共和国)に分かれました。
1953年には西ドイツにバウハウスの理念を継承するウルム造形大学が開設され、1968年までの短い期間ながら、デザイン理論と実践に大きな影響を与えました。また、1950年代末には西ドイツは経済的躍進を遂げ、グラフィックデザインが商業や国際的イベント(ミュンヘンオリンピック、キールウィーク、ドクメンタなど)のイメージ形成に重要な役割を果たしました。
本展では、デュッセルドルフ在住のグラフィックデザイナー、イェンス・ミュラー氏とカタリーナ・ズセック氏による「A5コレクション デュッセルドルフ」所蔵の戦後西ドイツのグラフィックデザイン資料から、ポスターを中心に、冊子や雑誌など多彩な作品を展示しています。バウハウスやウルム造形大学のモダニズムを基盤としながらも、戦後の新たな表現を模索した西ドイツのグラフィックデザインの世界が紹介されています。
展示はプロローグを含む5つのカテゴリー構成となっています。
本館1階から始まるプロローグ「西ドイツデザインへようこそ」では、航空会社ルフトハンザや1972年のミュンヘンオリンピック、セーリング・フェスティバルの「キール ウィーク」といった国際的なイベントのグラフィックデザインを紹介しています。

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景:中央は、ルフトハンザ宣伝部《ルフトハンザ – アフリカ》(1964−65)
photo©︎moichisaito

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景:2枚とも、オトル・アイヒャー《ミュンヘン オリンピック 1972》(1971)
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「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景:「キール・ウィーク」のポスター群
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本館の2階に上がると「幾何学的抽象」のカテゴリー作品が紹介されています。円や矩形、線という幾何形態の組み合わせにより画面にリズムとバランスを生み出す作品が多くみられます。抽象芸術の一形態である幾何学的抽象はグラフィックデザインの分野においても取り入れられており、バウハウスに関わったデザイナーたちによって戦後にも受け継がれました。

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景:中央がヘルベルト・バイアー《展覧会「バウハウス 50年」》(1968)
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「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景
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「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景
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続いて「タイポグラフィ」のカテゴリー作品です。「タイポグラフィ」は、グラフィックデザインにおいて情報伝達を担う不可欠な要素であり、可読性の確保が必須条件とされています。本テーマでは、言語によるコミュニケーションをいかにデザインし表現するかという、デザイナー達の意図と試行の跡を読み取れます。その表現は、精緻に設計された書体デザインから遊び心を交えたもの、さらには手描きによる自由な表現まで多様であり、そこに見られる幅広いアプローチも興味深い点となっています。

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景
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「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景:グンター・ランボー(ランボー、リーネマイヤー、ファン・デ・ザント)《展覧会「亡命P.E.N.」》(1983)
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そして新館ギャラリーに移ると、まず「イラストレーション」のカテゴリー作品が目に入ります。その多くが映画ポスターで、ハインツ・エーデルマンはビートルズのアニメーション映画『イエロー・サブマリン』のアートディレクターとして知られるデザイナーです。ハンス・ヒルマンによってデザインされた『七人の侍』(黒澤明監督)といった日本映画のポスターもあります。また、スイス出身のセレスティーノ・ピアッティによる出版社dtvとの仕事が紹介されています。

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景:ハインツ・エーデルマン《映画「イエロー・サブマリン(ザ・ビートルズ)」》(1968)
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「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景:ハンス・ヒルマン《映画「七人の侍」》(1962)
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「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景:セレスティーノ・ピアッティの作品群
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最後に「写真」のカテゴリー作品があります。これも映画ポスターが多くあります。写真技術が発達したことで、写真と手書きのイラストレーション、さらにそれらを複合してポスターを制作するというデザイナー達の創造性豊かな作品が刺激的です。

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景
photo©︎moichisaito

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景
photo©︎moichisaito
今回展示されている作品のほとんどが、当時印刷された、当時のポスターということです。西ドイツのグラフィクデザインの幅広さと質の高さを認識するとともに、これらが貼られていた当時の西ドイツの街の雰囲気を感じながら鑑賞することができると思います。
概要
会期:2025年3月8日~5月18日
会場:東京都庭園美術館
住所:東京都港区白金台5-21-9
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~18:00(入館は閉館時間の30分前まで)
休館日:月、5月7日(ただし5月5日は開館)
観覧料:一般 1400円 / 大学生(専修・各種専門学校含む)1120円 / 中・高校生 700円 / 65歳以上 700円 / 小学生以下 無料
公式サイト:https://www.teien-art-museum.ne.jp
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/250308-0518_backtomodern
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年4月20日 日曜日 24:00
記載内容
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