華やかな金屏風や荘厳な仏像彫刻、四季折々の美しい風景が描かれた絵画、悠久の歴史を受け継ぎ、連綿と伝えられる工芸品など、日本には、さまざまな美術品があります。
日本は島国でもあり、その文化は閉鎖的と見られがちですが、実際は現代に伝わる名品も、海外交流のなかで生み出されたものが少なくありません。
教科書でも目にしたあの名品はどのような文化交流のもとに生まれたのでしょう?
まさに、日本の美術工芸品は、「美のるつぼ」のなか、古今東西さまざまな芸術文化の交流から生まれた創造物なのです。

このたび、大阪・関西万博が開催されるのを機に、交流をテーマに日本の美術をとらえなおす特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」が京都国立博物館にて4月19日(土)~6月15日(日)開催されることとなりました。

本展では、弥生・古墳時代から明治期までの絵画、彫刻、書跡、工芸品など、国宝19件(うち1件予定)、重要文化財53件を含む200件の美の至宝が一堂に会します。
日本美術に秘められた異文化交流の軌跡をたどり、日本美術の素晴らしさを再発見する旅に出ましょう。京都国立博物館限定、巡回はございません、是非、お運びください。

画像: 《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

本作は、浮世絵画家として有名な葛飾北斎の傑作のひとつで、ゴッホが激賞し、ドビュッシーの交響詩からクローデルの彫刻にまで波及し、「グレート・ウェーブ」と呼ばれ、今日も北斎のアイコンであり続けています。
ダイナミックに荒れる大波に今にも転覆しそうな三艘の船。遥か向こうに富士山が見えます。大自然に立ち向かう小さな人間、静と動、遠くと近くを対比させつつ劇的な構図で、描かれた北斎の大迫力の不朽の名作です。

画像: 《富嶽三十六景 凱風快晴》 葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵  [前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

《富嶽三十六景 凱風快晴》 葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵  [前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

19世紀後半、ジャポニスムの隆盛にともない西欧において不滅のものとなった北斎の名声は、逆輸入され、近代日本における北斎評価にも多大な影響を及ぼしました。

「富嶽三十六景」は、北斎(1760-1849)の代表作にして、浮世絵風景画全体の代表作と言えます。
富士山という一つのモチーフをさまざまな視点から捉えた連作「富嶽三十六景」。「三十六景」というタイトルですが、「裏富士」と呼ばれる10図が追加され、46図が確認されています。

画像: 《色紙団扇散蒔絵料紙・硯箱》 江戸時代 19世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

《色紙団扇散蒔絵料紙・硯箱》 江戸時代 19世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

日本が国家として初参加したウィーン万博からの帰国時、展示品を載せたニール号が伊豆沖で沈没しました。本品はその約1年半後、海底から引き揚げられた積み荷の一部です。奇跡的な保存状態が注目され、蒔絵が豪華客船の内装に採用されるきっかけを生みました。

画像: 重要文化財《突線鈕五式銅鐸》 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土 弥生時代 1~3世紀 東京国立博物館所蔵 [通期展示]

重要文化財《突線鈕五式銅鐸》 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土 弥生時代 1~3世紀 東京国立博物館所蔵 [通期展示]

高さ134.7㎝、重さ45.5㎏と、現存する日本最大の銅鐸。鐘のように吊るして鳴らすものから、据え置いて見るものへと変容した銅鐸のなかでも最終段階のもので、『Histoire de l'Art du Japon』には日本の初期の美術における金工の代表例のひとつとして掲載されました。日本が世界に見せたかった高い技術の美術品です。

画像: 重要美術品《埴輪 鍬を担ぐ男子》 伝群馬県太田市脇屋町出土 古墳時代 6世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

重要美術品《埴輪 鍬を担ぐ男子》 伝群馬県太田市脇屋町出土 古墳時代 6世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

『Histoire de l'Art du Japon』では、埴輪は、日本の木像や塑像、銅像の起源として紹介されています。
髪を美豆良(みづら)に結い、帽子・首飾りを着け、左腰に大刀を佩(は)き、右手で鍬(くわ)を担いでいます。髪型や持ち物の特徴から中間的な階層の人物とみられ、農作業を指揮する
人物である可能性があります。

画像: 国宝《風神雷神図屏風》 俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺所蔵 [通期展示]

国宝《風神雷神図屏風》 俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺所蔵 [通期展示]

今では、教科書やテレビで、誰もが見たことがある俵屋宗達の《風神雷神図屏風》ですが、本作の存在が広く知られるようになったのは明治時代後半になってからのことです。
先に西欧で、高く評価されていた光琳に先んじた存在としての宗達、19世紀に光琳を顕彰した酒井抱一をひと連なりとする「琳派」という概念はこの時形成されました。

画像: 重要文化財《三彩蔵骨器》 和歌山県橋本市名古曽古墓出土 奈良時代 8世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

重要文化財《三彩蔵骨器》 和歌山県橋本市名古曽古墓出土 奈良時代 8世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

奈良時代に唐三彩の技術をもって日本国内で生産された奈良三彩の代表例です。透明釉(白釉)と緑釉、褐釉の3色の釉が織りなす斑点状の文様は唐三彩の施釉技法であり、その一方で、器形は日本の須恵器にある薬壺形をしています。中国・唐の技術を積極的に導入しつつも、日本での用途や好みに合わせて柔軟に改変している様子がうかがえます。

画像: 国宝《宝相華迦陵頻伽蒔絵即冊子箱》 平安時代 延喜19年(919) 京都・仁和寺所蔵 [通期展示]

国宝《宝相華迦陵頻伽蒔絵即冊子箱》 平安時代 延喜19年(919) 京都・仁和寺所蔵 [通期展示]

空海が唐から持ち帰った経典を収めるために作られた冊子箱。
空海の死後、散逸の危機にあった貴重な経典を、醍醐天皇が集めさせてこの箱に納めました。文様は、唐の影響が濃厚な正倉院宝物のように求心的に整然と配置される一方で、極楽浄土で仏法を囀(さえず)るという霊鳥、迦陵頻伽(かりょうびんが)の顔立ちは和風で、踊ったり楽器を奏でたり、全員が違う姿をしています。唐と日本の文化の融合が感じられます。

画像: 国宝《華厳宗祖師絵伝 義湘 巻第二》(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺所蔵 [通期展示 ※巻替あり]

国宝《華厳宗祖師絵伝 義湘 巻第二》(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺所蔵 [通期展示 ※巻替あり]

新羅(しらぎ)の華厳宗の僧・義湘(ぎしょう)(625~702)が唐へ留学したとき美女・善妙(ぜんみょう)より献身を受けた説話を、伸び伸びとした筆致で描いた国宝絵巻。舞台が異国であるため、輸入された中国の絵画を参考にして作画されており、とくに宋の「帰去来辞(ききょらいのじ)書画巻」からの引用が明らかです。

画像: 《青磁輪花茶碗 銘 鎹》 中国 南宋時代 13世紀 愛知・マスプロ美術館所蔵 [通期展示]

《青磁輪花茶碗 銘 鎹》 中国 南宋時代 13世紀 愛知・マスプロ美術館所蔵 [通期展示]

口縁から胴部にかけてひび割れた部分を鎹(かすがい)で止め、口縁部には金継ぎを施した青磁輪花碗です。割れて修理されたことを欠点とせず、むしろこの茶碗の見どころとしてあらたな価値を見いだし、長所としていることも本作の大きな魅力です。あえて完璧さを求めない、日本独特の感性といえるでしょう。

画像: 重要文化財《鳥獣文様綴織陣羽織》 豊臣秀吉所用 桃山時代 16世紀 京都・高台寺所蔵 [4月19日~5月11日展示]

重要文化財《鳥獣文様綴織陣羽織》 豊臣秀吉所用 桃山時代 16世紀 京都・高台寺所蔵 [4月19日~5月11日展示]

豊臣秀吉の正妻おね/ねねゆかりの高台寺に伝来した秀吉所用の陣羽織です。孔雀や鹿、闘う動物や獣の頭部などが多彩な綴織であらわされています。特殊な金属糸の使用から、サファヴィー朝ペルシアの宮廷工房で製作された室内装飾品であったと考えられます。大航海時代の南蛮船によりもたらされ、武将の陣羽織に転用されました。

画像: 《楼閣山水蒔絵水注》 江戸時代 18世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

《楼閣山水蒔絵水注》 江戸時代 18世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

アラブ世界の金属製の香油瓶や水注を原型に、中国で銅器や磁器に写された品を、日本で木製で作らせ、漆を塗り、金銀粉で装飾させた18世紀の輸出工芸。類品がフランスのルーヴル美術館にあり、これはもともとルイ15世の寵姫ポンパドゥール侯爵夫人の愛蔵品で、その後パリで金属装飾を加えられてルイ16世の妃マリー・アントワネットの所蔵となったものです。

日本列島にもたらされた様々な異文化が融合して、美しい芸術作品が生み出されました。「日本、美のるつぼ展」のひとつひとつの作品が創造された背景には、さまざまな歴史があり、物語があります。悠久の歴史に思いを馳せ、ロマンを感じてください。

展覧会概要

展覧会名  大阪・関西万博開催記念 特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」
会期  2025(令和7)年4月19日(土)~6月15日(日)
[主な展示替]  前期展示:4月19日(土)~5月18日(日)/後期展示:5月20日(火)~6月15日(日)
休館日 月曜日
※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替を行います。
開館時間 午前9時~午後5時30分(金曜日は午後8時まで)
※入館は各閉館の30分前まで 休館日 月曜日
※ただし5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)休館
会場 京都国立博物館 平成知新館(〒605-0931 京都市東山区茶屋町527)
お問い合わせ 075-525-2473(テレホンサービス)
京都国立博物館公式HP

展覧会公式サイト

公式X・Instagram @rutsubo2025

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400 年」@名古屋市美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年4月28日 月曜日 24:00
記載内容
☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の郵便番号、電話番号、建物名、部屋番号も明記)
4、ご連絡先メールアドレス
5、記事を読んでみたい映画監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
ご記入下さい(複数回答可)
8、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
9、シネフィルのこの記事または別の記事でもSNSでのシェアまたはリツイ―トをお願い致します。
☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.

This article is a sponsored article by
''.

No Notification