気品漂う美人画で近代の京都画壇を代表する日本画家、上村松園。
若くして頭角をあらわした松園は、「美人画の第一人者」として独自の境地を拓きました。日常生活をはじめ、歴史、物語などをテーマに、清楚で品格のある女性像を、松園ならではの清澄で優美な画風で繊細に描き出し、昭和23(1948)年には、女性として初の文化勲章を受章しました。
このたび、「生誕150年記念 上村松園」が大阪中之島美術館にて、2025年6月1日まで開催されています。
上村松園(1875-1949)は京都に生まれ、京都府画学校に学び、伝統を学びながら独自の人物表現を切り拓き、生涯にわたり理想の女性像を追い求めて描きました。それらの気品ある清澄な女性像の数々は、今日も観る者に深い感銘を与えます。60年間におよぶ画業を貫き、近代美術史に揺るがない足跡を残した松園は、日本における女性芸術家のパイオニアとしての位置づけも重要です。
本展では上村松園が誕生して150年の節目を迎えることを記念し、初期の代表作《人生の花》をはじめ、絶筆となった《初夏の夕》、重要文化財に指定されている《母子》、《序の舞》など、松園の珠玉の芸術作品、100件以上が集結しています。
また、完成作品に関連した表現豊かな下絵や素描(松伯美術館蔵)も多数紹介されています。
京都生まれの松園ですが、大阪の美術館初の回顧展となり、また、巡回もございませんので、是非、この機会にご覧ください。

「生誕150年記念 上村松園」大阪中之島美術館 記者内覧会にて photo by ©cinefil
女優の木村多江さんが本展音声ガイドを務められました。淡い色合いの上品な着物姿、穏やかで優しい声がまさに上村松園が描く理想の女性像と重なります。
第1章 人生を描く
日本の女性がそれぞれの年代を迎える姿を、松園は髪型や着物などを細やかに描き分けて表現しました。本章では、女性の人生を見つめる松園の眼差しを作品から読み解きます。

上村松園 《人生の花》1899年 名都美術館 【展示期間:5/11まで】 photo by ©cinefil
松園の初期の作品で、婚礼の席に向かう花嫁とその母の姿を描いた作品です。 「晴れの日」の母と娘の心情が横顔から窺えます。 松園は、美しい着物の文化、日本の風俗を描き残したかったのかも知れません。

上村松園《青眉》1934年 吉野石膏コレクション【展示期間:5/11まで】
《青眉》に描かれている女性のように、明治の初期ごろまでは子供を出産した女性の多くは眉を剃って、歯には鉄漿(おはぐろ)をつける習慣がありました。

上村松園 《月蝕の宵》1916年 大分県立美術館 【展示期間:5/18まで】 photo by ©cinefil
夕刻の庭先、5人の人物が二曲一双の屏風に描かれています。左隻には大きな鏡に欠ける月を映して談笑する三人の女性いて、奥には子供が戯れています。右隻の女性は端正な立ち姿で描かれています。 松園が41歳の時に描かれた本作は、第10回文展に推薦で出品され、以降、松園は文展で永久無鑑査となりました。
第2章 季節を描く
四季折々に生きる女性の姿を松園は生涯にわたり描きました。
本章では、巡りくる四季の風趣のなかに息づく女性たちを描いた作品を取り上げ、温かく懐古的な松園の眼差しをご覧いただきます。

上村松園 《三美人之図》1908年 光ミュージアム 【通期展示】 photo by ©cinefil
桜の花びらが舞う暖かな晩春、花見に出かける3人の女性が華やかに描かれています。 それぞれの年代の女性が持つ美しさが気品とともに表現されています。

上村松園 《わか葉》 1940年 名都美術館 【展示期間:5/11まで】 photo by ©cinefil
庭に面した窓辺で、萩の若葉を眺める女性。若葉と同じような清々しい色合いの薄緑色の着物に、格子柄の黒色の帯。薄紫の襟に、袖口からは紅色の袖口からは紅色の襦袢(じゅばん)が覗いています。遥か遠くを見つめる眼差しには遠方にいる人への想いが感じられます。

「生誕150年記念 上村松園」大阪中之島美術館 記者内覧会にて photo by ©cinefil
第3章 古典を描く
松園は修業時代から古画の図案を研究して、古典芸能や古典文学を画題に取り上げています。
本章では、伝統的なテーマに取り組む松園の表現手法に着目して名作の数々をご紹介します。

上村松園《清少納言》1917-18年頃 【展示期間:5/11まで】 photo by ©cinefil
平安時代の作家・歌人である清少納言が中宮定子の問いかけに応えてみすを上げている様子が描かれています。 みす越しに雪景色を見せる透かしの技法に繊細な松園の手腕が見られます。

上村松園 《草紙洗小町》 1937年 東京藝術大学 【展示期間:5/11まで】 photo by ©cinefil
小野小町が草紙を洗い流して潔白を証明した瞬間が描かれています。能面を思わせる顔には強い意志が感じられます。
第4章 暮らしを描く
失われゆく風習を懐かしむ気持ちを込めて、松園は人々の日常を数多く描きました。行事を楽しみ、化粧を施し、家事に勤しむ女性たちの姿が松園の絵筆によって凛として甦ります。

上村松園 《舞仕度》 1914年 京都国立近代美術館 【展示期間:5/11まで】 photo by ©cinefil
出番を待つ緊張した様子の巻いての娘と、談笑する三人の囃子手の女性たちが対象的に描かれています。大正期の秀作。

上村松園 《鼓の音》1940年 佐伯美術館 【展示期間:5/11まで】 photo by ©cinefil
振袖姿の娘が小鼓を打とうとしている瞬間が描かれています。朱赤の着物と青い帯のコントラストが美しく描かれています。

上村松園《晩秋》1943年 大阪市立美術館蔵 【展示期間:5/13〜6/1】
日常生活の何気ない様子、縁側で障子の破れを直す女性を描いた作品です。女性の髪型は、明治以降の京都独特の形で、若い女性に人気の「粋書(すいしょ)」と呼ばれるもの。黒の掛け襟をつけた無地の着物に、青磁色の博多織の昼夜帯を締め、帯締めで留めています。透明感のある美しい青色が印象的です。
松園は日本女性の美しさを、「人生を描く」、「季節を描く」、「古典を描く」、「暮らしを描く」、と、様々なテーマで描き出しました。
日本女性の美しさは、いろいろな状況のなかで、時に凛とした強さであったり、薄氷のような儚さであったり、満開の桜のように華やかで優美であったり、小菊のように可憐で、清らかであったりさまざまです。
「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香り高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである。」(「棲霞軒雑記」『青眉抄』)と、松園は語っています。
日本女性の美しさは、さまざまですが、松園の描く女性たちは一点の曇りもなく、清澄で、優美、気品にあふれています。
是非、松園の珠玉の芸術作品をこの春、大阪中之島美術館でご堪能ください。
展覧会概要
展覧会名:生誕150年記念 上村松園
会 期:2025年3月29日(土)~6月1日(日)前期:3月29日~5月11日 後期:5月13日~6月1日
休館日:月曜日、5月7日(水) ※4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館
開場時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
会 場:大阪中之島美術館 4階展示室
展覧会サイト
美術館公式ホームページ:
お問い合わせ: 06-4301-7285 大阪市総合コールセンター(なにわコール)
※受付時間8:00~21:00(年中無休)
料金など詳細は、展覧会サイトに触れて頂きますとご覧になれます。
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「生誕150年記念 上村松園」@大阪中之島美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上2組4名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年4月21日 月曜日 24:00
記載内容
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