東京国立近代美術館に引き続き、9月14日より大阪中之島美術館にて開館3周年記念特別展「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」が開催されます。
本展は、豊かなモダンアートのコレクションを築いてきたパリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館のコレクションから共通点のある作品でトリオを組み、構成するという、これまでにないユニークな試みの展覧会となっています。

時代や流派、洋の東西を越えて、主題やモチーフ、色や形、素材、作品が生まれた背景など、自由な発想によって組まれたトリオの共通点はさまざまです。「モデルたちのパワー」「空想の庭」「日常生活とアート」など、本展のためだけに特別なトリオが組まれています。

20世紀から現代にかけて活躍してきた、西洋と日本の有名アーティストたち、ピカソ、ローランサン、バスキア、藤田嗣治、佐伯祐三、草間彌生など 総勢110名の作家が集結し、絵画、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など、150点あまりの作品が、34のトリオに組まれ、テーマやコンセプトに応じて7つの章に分けて紹介されています。
異色の組み合わせ、さまざまな名品による夢のような競演をお愉しみください。

コレクションのはじまり

展覧会のはじまりは、パリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館のコレクションのきっかけとなった作品の中から、椅子に座る人物像が紹介されています。

画像: 大阪中之島美術館 展示風景(トリオ<コレクションのはじまり>より) photo by ©cinefil

大阪中之島美術館 展示風景(トリオ<コレクションのはじまり>より)
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画像: ロベール・ドローネー《鏡台の前の裸婦(読書する女性)》1915年、パリ市立近代美術館 (トリオ<コレクションのはじまり>より) photo by ©cinefil

ロベール・ドローネー《鏡台の前の裸婦(読書する女性)》1915年、パリ市立近代美術館 (トリオ<コレクションのはじまり>より) photo by ©cinefil

パリ市立近代美術館からは、1961年の開館の契機を作ったジラルダン博士の遺贈品より、20世紀前半の抽象画の先駆者であるフランス人画家ロベール・ドローネーの鏡台の前に座る裸婦を描いた作品が出展です。
ドローネーの作品は、パリ ポンピドゥーセンター所蔵の大作《パリ市》も有名です。彼は、ダイナミックで鮮やかな明るい色彩を用い、ピカソやブラックとは異なる「サロン・キュビスト」として、キュビスム旋風を巻き起こしました。

画像: 安井曽太郎《金蓉》1934年、東京国立近代美術館(トリオ<コレクションのはじまり>より) photo by ©cinefil

安井曽太郎《金蓉》1934年、東京国立近代美術館(トリオ<コレクションのはじまり>より)
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東京国立近代美術館の最初の購入作品となるひとつは、日本の近代美術を代表する洋画家、安井曽太郎の作品です。《金蓉》は中国語で、「金」は美しい、「蓉」は峰という意味で、モデルの名前が峰子さんで、中国服を着ていて、中国語をはじめ何ヶ国語も嗜む才女であり美しいことなどが題名の由来のようです。
曽太郎はパリへ留学し、セザンヌの影響を受け、単にモデルの外見を描くのではなく、モデルの性格や、いま何を考えているのかも想像できるような絵画を描いています。
1952年(64歳)の時に文化勲章を受章しました。

画像: 佐伯祐三《郵便配達夫》1928年、大阪中之島美術館(トリオ<コレクションのはじまり>より) photo by ©cinefil

佐伯祐三《郵便配達夫》1928年、大阪中之島美術館(トリオ<コレクションのはじまり>より)
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大阪中之島美術館からは美術館構想のきっかけのひとつとなった実業家・山本發次郎の旧蔵品より、
30歳で夭折した天才画家・佐伯祐三《郵便配達夫》が出展されています。
二度の渡仏で佐伯は主に風景画を描いていましたが、本作は、珍しい人物画で、佐伯が病臥する前に描いた、絶筆に近い作品です。
雨の日にずぶ濡れになって制作を続けた事が原因で風邪をこじらせた佐伯が、パリの自宅で過ごしている中、この立派な白髪のひげをたくわえた郵便配達夫が郵便を届けに来たところ、佐伯の創作意欲が湧いて、モデルになってもらったのでした。病を押して、この《郵便配達夫》とあと2点を描きましたが、その後、天に召されました。佐伯の魂が感じられる唯一無二の作品です。

現実と非現実のあわい

このトリオは、いずれも過去の絵画を参照し、画家が自らの分身のような存在を描き込むことで、現実と非現実のあわいを出現させているという点で共通しています。

画像: ヴィクトル・ブローネル《ペレル通り2番地2 の出会い》1946年、パリ市立近代美術館 (トリオ<現実と非現実のあわい>より) photo by ©cinefil

ヴィクトル・ブローネル《ペレル通り2番地2 の出会い》1946年、パリ市立近代美術館 (トリオ<現実と非現実のあわい>より) photo by ©cinefil 

ブローネルは、かつてアンリ・ルソーが住んだペレル通り2番地2に引っ越したことから、ルソーの《蛇使いの女》(1907年、オルセー美術館)に、自らが生み出した、巨大な頭部と2つの身体、6本の腕を持つ「コングロメロス」を登場させています。

画像: 有元利夫《室内楽》1980年、東京国立近代美術館(トリオ<現実と非現実のあわい>より) photo by ©cinefil

有元利夫《室内楽》1980年、東京国立近代美術館(トリオ<現実と非現実のあわい>より)
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ピエロ・デッラ・フランチェスカら初期ルネサンスのフレスコ画に魅せられた有元の絵画は、他の多くの作品にもみられる古典的な女性が中央に鎮座し、非現実的でありながら懐かしさを漂わせています。

画像: ルネ・マグリット《レディ・メイドの花束》1957年 大阪中之島美術館 (トリオ<現実と非現実のあわい>より) photo by ©cinefil

ルネ・マグリット《レディ・メイドの花束》1957年 大阪中之島美術館
(トリオ<現実と非現実のあわい>より) photo by ©cinefil 

マグリットはしばしば描いた山高帽の男の背に、ボッティチェリの《春》(1482年頃、ウフィツィ美術館)の花の女神フローラを重ねました。

モデルたちのパワー

横たわる女性の肖像画は、西洋美術史の歴史の中で受け継がれる伝統的な構図のひとつで、かつては、女性の理想的な美が描かれていました。
ここでは、マティスの《椅子にもたれるオダリスク》と、萬鉄五郎《裸体美人》(重要文化財)、モディリアーニの《髪をほどいた横たわる裸婦》がトリオとなっています。
それぞれに個性的な女性像が描かれ、いずれもくつろいだポーズで横たわっていますが、かつての男性から見られる対象としての理想の女性美とは異なり、女性の強い意志が感じられます。

画像: 大阪中之島美術館 展示風景(トリオ<モデルたちのパワー>より)photoby ©cinefil

大阪中之島美術館 展示風景(トリオ<モデルたちのパワー>より)photoby ©cinefil

画像: アンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》1928年、パリ市立近代美術館 (トリオ<モデルたちのパワー>より) photo by ©cinefil

アンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》1928年、パリ市立近代美術館
(トリオ<モデルたちのパワー>より) photo by ©cinefil 

「色彩の魔術師」とも呼ばれたマティス。華やかに装飾された部屋の中でくつろぎ、横になる女性は、見られることを意識していないようで、美しさの中に女性の強さ、パワーが感じられる作品です。

画像: 萬鉄五郎《裸体美人》(重要文化財)1912年、東京国立近代美術館(トリオ<モデルたちのパワー>より)展示期間:9/14(土)―11/22(金) photoby ©cinefil

萬鉄五郎《裸体美人》(重要文化財)1912年、東京国立近代美術館(トリオ<モデルたちのパワー>より)展示期間:9/14(土)―11/22(金) photoby ©cinefil 

寝転んでこちらを見下ろすような萬鉄五郎の《裸体美人》。東京美術学校(現・東京藝術大学)の卒業制作として描いた作品で、フォービスムの影響を受け、それまでとは違う作風となっています。

画像: アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》1917年、大阪中之島美術館 (トリオ<モデルたちのパワー>より) photo by ©cinefil

アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》1917年、大阪中之島美術館
(トリオ<モデルたちのパワー>より) photo by ©cinefil 

「横たわる裸婦」をテーマに描いたルネサンス期のティツィアーノの作品《ウルヴィーノのヴィーナス》を意識して描かれたとも言われていますが、モディリアーニは古典的とは真逆の新しい独自の感性で、斬新に描いています。
頭の上部は切り取り、女性を大きくクローズアップした構図となっていて、女性の強い眼差しが感じられます。

空想の庭

この3作品の画家はそれぞれが好んだ草花や果物、動物などを画面に配置し、自由に「空想の庭」を創り出しています。草花で埋め尽くされた装飾的な画面。幻想的で美しい世界が広がっています。

画像: 東京会場(東京国立近代美術館)展示風景  トリオ<空想の庭>

東京会場(東京国立近代美術館)展示風景  トリオ<空想の庭> 

作品は左から、辻永《椿と仔山羊》1916年、東京国立近代美術館、ラウル・デュフィ《家と庭》1915年、パリ市立近代美術館、アンドレ・ボーシャン《果物棚》1950年、大阪中之島美術館

画像: 辻永《椿と仔山羊》1916年 東京国立近代美術館(トリオ<空想の庭>より) photo by ©cinefil

辻永《椿と仔山羊》1916年 東京国立近代美術館(トリオ<空想の庭>より) 
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辻永は、草花を愛した父の影響でかつて植物学者を志していました。愛らしい羊と華やかな赤い花でファンタジーに溢れる世界を創り出しています。

画像: ラウル・デュフィ《家と庭》1915年 パリ市立近代美術館 (トリオ<空想の庭>より) photo by ©cinefil

ラウル・デュフィ《家と庭》1915年 パリ市立近代美術館 (トリオ<空想の庭>より) photo by ©cinefil

デュフィは、植物園の近くに住み、動植物をモチーフにしたテキスタイルデザインを数多く手がけました。爽やかで美しい庭園を色鮮やかに描きました。

画像: アンドレ・ボーシャン《果物棚》1950年、大阪中之島美術館 (トリオ<空想の庭>より) photo by ©cinefil

アンドレ・ボーシャン《果物棚》1950年、大阪中之島美術館 (トリオ<空想の庭>より)
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ボーシャンは、独学で画家になる前に園芸業を営んでいました。緑の樹々と果物の繊細な表現、美しい色彩で「空想の庭」を描きました。

都市のグラフィティ

20世紀の芸術の中心地となるパリとニューヨークでは、路上アートが盛んになりました。それは単なるグラフィティ(落書き)ではなく、立派なアート(芸術)となったのです。

画像: 大阪中之島美術館 展示風景 (トリオ<都市のグラフィティ>より) photoby ©cinefil

大阪中之島美術館 展示風景 (トリオ<都市のグラフィティ>より) photoby ©cinefil

作品は左から、ジャン=ミシェル・バスキア《無題》1984年、大阪中之島美術館、佐伯祐三《ガス灯と広告》1927年、東京国立近代美術館、フランソワ・デュフレーヌ《4点1組》1965年、パリ市立近代美術館

1980年代バスキアはしばしば日本を訪れて、個展やグループ展を開催していました。
ニューヨークと東京に刺激を受けたバスキアは、科学的図式や英語とともに漢字も本作に書き込んでおり、ストリートのエネルギーと多国籍文化へのまなざしが感じられます。

1927年、佐伯は乱雑にポスターが張り重ねられたパリの街角を素早い筆さばきで描き出しました。そこには後のグラフィティアートにつながる要素が見られます。

1965年のパリ、実験詩の詩人であったデュフレーヌは、複数の層になったポスターを壁から剥がし、それらをカンヴァスに貼ることで作品にしました。

34のトリオに組まれた約150点あまりの、名だたるアーティストたちによる錚々たる作品が集結しています。
7つのテーマやコンセプトによる異色の組み合わせ、珠玉作品による競演を是非、ご堪能ください。

展覧会概要

会期 2024年9月14日(土)~2024年12月8日(日)
会場 大阪中之島美術館
展示室 4階展示室
住所 大阪府大阪市北区中之島4-3-1
時間 10:00~17:00 (最終入場時間 16:30)
休館日 月曜日 
観覧料 一般 2,100円(1,900円) 高大生 1,500円(1,300円) 中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金
※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
展覧会公式サイトURL https://art.nikkei.com/trio/ 

TEL 06-4301-7285 大阪市総合コールセンター(なにわコール)
受付時間 8:00~21:00(年中無休)

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、開館3周年記念特別展「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」@大阪中之島美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上2組4名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2024年9月23日 月曜日 24:00
記載内容
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