ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》1871年 Photo: Tate

果てしなく広がる青い海に陽の光が降り注ぎ、水面がきらめく光景、緑の樹々に溢れる木漏れ日、窓辺に差し込むまばゆい光、あるいは、夜空に輝く月明かりなど、日常に溢れる様々な「光」は、私たちにひとときの癒しを与えてくれます。
さまざまな美しい「光」に魅了され、芸術家たちはそれを作品にしました。

このたび、「光」をテーマにした珠玉の作品が集結した展覧会、「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」が2023.10.26 ~ 2024.01.14の期間、大阪中之島美術館で開催されます。
英国・テート美術館の至宝ともいえるコレクションより、18世紀末から現代までの約200年間におよぶアーティストたちの「光」をテーマにした独創的な作品が一堂に会しました。
本展は2021年より、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドと世界を巡回し、大阪は最終会場となっています。

「光の画家」と呼ばれるターナーや、風景画の名手コンスタブルといった英国近代美術史を彩る重要な画家たちの創作、モネをはじめとする印象派の画家たちによる光の描写の追求、モホイ=ナジ・ラースローの映像作品やバウハウスの写真家たちによる光を使った実験の成果をご鑑賞ください。
ブリジット・ライリー、ジェームズ・タレル、オラファー・エリアソン等の現代アーティストによってもたらされる「光」のインスタレーション(空間芸術作品)は圧巻です。

本展では、異なる時代、異なる地域で制作された約120点の見ごたえのある作品が集結し、各テーマの中で展示作品が相互に呼応するような、これまでにない会場構成が行われています。絵画、写真、彫刻、素描、キネティック・アート、インスタレーション(空間芸術作品)、さらに映像等の多様な作品を是非、この機会にご覧ください。
様々なアーティストたちはどのように光の特性とその輝きに魅了されたのでしょうか。
それではシネフィルでもいくつかの作品をご紹介致します。

精神的で崇高な光

画像: ウィリアム・ブレイク《アダムを裁く神》1795年 Photo: Tate

ウィリアム・ブレイク《アダムを裁く神》1795年 Photo: Tate

美術作品における光の表現は時代とともに様々な変化を遂げてきました。
ウィリアム・ブレイクは、英国ロマン主義の先駆者で聖書やダンテの「神曲」などを主題にした作品に取り組み、神への畏敬の念を光で表現しました。

画像: エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ《愛と巡礼者》1896-97年 Photo: Tate

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ《愛と巡礼者》1896-97年 Photo: Tate

バーン=ジョーンズは、中世の詩人ジェフリー・チョーサーの『薔薇物語』の、愛の神キューピッドやキリスト教の天使が巡礼者の探求を導く、という考えに基づいて描いています。

自然の光

画像: ジョン・コンスタブル《ハリッジ灯台》1820年出品? Photo: Tate

ジョン・コンスタブル《ハリッジ灯台》1820年出品? Photo: Tate

ジョン・コンスタブル(1776–1837年)はターナーと並ぶ、イギリスのロマン主義絵画の巨匠です。故郷の田園風景を、卓越した画力と構成力によって繊細に描き出しました。
本作では、北海に面した歴史ある港町ハリッジの灯台が抒情的に描かれています。
大空で移りゆく雲や大気の様子などが作品の面積のほとんどを占め、光の加減とともに雲が変化する様子を細密に描写しています。

画像: ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《湖に沈む夕日》1840年頃 Photo: Tate

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《湖に沈む夕日》1840年頃 Photo: Tate

ターナーはイギリスのロマン主義の画家で 19 世紀に活躍した⾵景画の中では最も創造的な画家であるといわれ、パリで興った印象派にも影響を与えました。
彼は、光と⾊の効果を捉えることに重点を置き、細部を詳細に描いてはいません。
本作は、地形のディテールはぼんやりとして不明瞭ですが、⼣陽が輝くオレンジ⾊に空を照
らし、⽔⾯に反射する様⼦が鮮やかに描かれています。

画像: ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《光と色彩(ゲーテの理論)――大洪水の翌朝―― 創世記を書くモーセ》1843年出品 Photo: Tate

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《光と色彩(ゲーテの理論)――大洪水の翌朝―― 創世記を書くモーセ》1843年出品 Photo: Tate

「旧約聖書」の「創世記」によると大洪水の後、虹が現れましたが、ターナーが描いたのは太陽でした。人間と神の契約を祝福する光のようです。中央には創世記を書くモーゼが、その手前には青銅の蛇が描かれています。
ターナーはゲーテの「色彩は人間の眼の感覚と自然の光の共同作業によるもの」という「色彩論」の影響を受けました。

画像: ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》1871年 Photo: Tate

ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》1871年 Photo: Tate

自然の光を捉えようとするコンスタブルの手法は、航海の経験を積んだ英国出身のジョン・ブレット(1831–1902年)の《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》にもつながります。
ジョン・ブレットは、日本ではほとんど知られていない19世紀イギリスの画家ですが、この海景画は、いくつかの本展の会場では展覧会を象徴する作品として脚光を浴びています。穏やかな海の絵は、海外でもコロナ禍で苦しむ人々の心に響き、安らぎを与えるのでしょう。

画像: クロード・モネ《エプト川のポプラ並木》1891年 Photo: Tate

クロード・モネ《エプト川のポプラ並木》1891年 Photo: Tate

クロード・モネ(1840–1926年)は印象派を代表するフランスの巨匠で、《印象・日の出》は、印象派の名前の由来となりました。
生涯にわたり刻々と移りゆく光を探求し、《睡蓮》の連作では、光を受けて睡蓮が水面に映る作品を数多く描きました。
ポプラ並木も、異なる時間帯や気象条件のもとで連作を描き、さまざまな光のきらめき、光の変化を表現しました。

画像: ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー《ペールオレンジと緑の黄昏 —バルパライソ》1866年 Photo: Tate

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー《ペールオレンジと緑の黄昏 —バルパライソ》1866年 Photo: Tate

米国出身で、ロンドンで活躍したジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー(1834-1903年)は《ペールオレンジと緑の黄昏—バルパライソ》で空に浮かぶ雲や海を主題に、光に照らされたときの色の繊細な移り変わりを再現しました。

室内の光

画像: ウィリアム・ローゼンスタイン《母と子》1903年 Photo: Tate

ウィリアム・ローゼンスタイン《母と子》1903年 Photo: Tate

英国のウィリアム・ローゼンスタイン(1872–1945年)は、フェルメールのような、室内に光が差し込む作品を描きました。
《母と子》は親子の何気ない日常を描いた作品で、窓から差す柔らかな光の効果により、母子ふたりの親密な関係が浮かび上がっています。

画像: ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内》1899年 Photo: Tate

ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内》1899年 Photo: Tate

デンマークの画家ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864–1916年)は、北欧の日常の室内の風景を、白、黒、グレーの色調で描き、無機質で、静謐な空間を表現しました。
本作《室内》は、暗めの色使いに統一し、淡い光が差しこむ様子を効果的に描くことで、室内の静けさ、空気の冷たさなどの感覚を観る人に与えています。

色と光

画像: モホイ=ナジ・ラースロー《K VII》1922年 Photo: Tate

モホイ=ナジ・ラースロー《K VII》1922年 Photo: Tate

美術と工芸、デザインの総合的な教育を目指したバウハウス(造形芸術学校)では、幾何学的な形態を用いて光と色の関係を考察するアーティストたちが大きな足跡を残しました。
ハンガリー出身のモホイ=ナジ・ラースロー(1895–1946年)は、ワシリー・カンディンスキーとともに、色同士の関係性が生み出す視覚的効果を探求しました。
《K VII》では、光の効果で、重ねられた紙が透けているように見えます。

画像: ワシリー・カンディンスキー《スウィング》1925年 Photo: Tate

ワシリー・カンディンスキー《スウィング》1925年 Photo: Tate

ロシア出身で、のちにドイツで活躍するワシリー・カンディンスキー(1866–1944年)は、「色とは、光の波長を人の眼が捉えたもので、光の分身である」と考え、抽象画という新たなジャンルを打ち立てました。

画像: ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング (726)》1990年 Photo: Tate, © Gerhard Richter 2023 (10012023)

ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング (726)》1990年 Photo: Tate, © Gerhard Richter 2023 (10012023)

ゲルハルト・リヒターはドイツを代表する抽象画家で、世界からも今、最も注目されている芸術家のひとりです。
光がどのように機能し、作品の外観を超えて、現実を⽰すことが出来るのかということに関⼼を持っていました。

光の再構成

画像: デイヴィッド・バチェラー《ブリック・レーンのスペクトル 2》2007年 Photo: Tate, © David Batchelor

デイヴィッド・バチェラー《ブリック・レーンのスペクトル 2》2007年 Photo: Tate, © David Batchelor

英国で生まれたデイヴィッド・バチェラー(1955年–)は1990年代初頭から、都市生活を送る人々が光と色をどのように経験するのかに着目するようになります。色鮮やかなライトボックスを用いた作品《ブリック・レーンのスペクトル 2》は鑑賞者に都市を想起させることを試みています。

画像: ピーター・セッジリー《カラーサイクルⅢ》1970年 Photo: Tate, © Peter Sedgley, courtesy of The Redfern Gallery, London

ピーター・セッジリー《カラーサイクルⅢ》1970年 Photo: Tate, © Peter Sedgley, courtesy of The Redfern Gallery, London

ピーター・セッジリーはロンドンで生まれ、建築学校で学び、デザイン、建築事務所を設立。1961年から絵画制作を行い、ブリジット・ライリーとともに、オプティカル・アートの代表的な存在となりました。鮮やかな色彩の同心円、線による錯視的表現を追求しました。

広大な光

画像: ジェームズ・タレル《レイマー、ブルー》1969年 © 2023 James Turrell. Photograph by Florian Holzherr

ジェームズ・タレル《レイマー、ブルー》1969年 © 2023 James Turrell.
Photograph by Florian Holzherr

大学で知覚心理学を学び、飛行機を自ら操る米国出身のジェームズ・タレル(1943年–)は光をどのように経験するかという問いのもと、光が鑑賞者を包み込むインスタレーション作品を1960年代半ばから制作してきました。
《レイマー、ブルー》の鮮やかなブルーの光は一度観たら忘れられない美しさです。

画像: テート・ブリテン正面外観、ロンドン、ミルバンク、2006年  Photo: Tate

テート・ブリテン正面外観、ロンドン、ミルバンク、2006年  Photo: Tate

テート美術館は、イギリスを代表する近・現代美術の殿堂で、英国政府が所有する美術コレクションが収蔵され、ロンドンのテート・ブリテン、テート・モダンと、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスの4つの国立美術館から構成されています。

画像: セント・ポール大聖堂から見たテート・モダン、ロンドン、サウスバンク、2016年  Photo: Tate

セント・ポール大聖堂から見たテート・モダン、ロンドン、サウスバンク、2016年  Photo: Tate

イギリスの近・現代美術の殿堂テート美術館より、異なる時代、異なる地域の「光」をテーマにした至宝約120点の作品が集結しました。さまざまな作品が放つそれぞれの「光」を是非、ご堪能ください。
光を用いた大型インスタレーション(空間芸術作品)も登場します。いずれも日本初出品となるジェームズ・タレル《レイマー、ブルー》やオラファー・エリアソン 《星くずの素粒子》が作り出す光の空間をご体感ください。

展覧会概要

展覧会名 テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ
会期 2023年10月26日(木)~2024年1月14日(日)
会場 大阪中之島美術館
展示室 5階展示室
住所 大阪府大阪市北区中之島4-3-1
時間 10:00~17:00 (最終入場時間 16:30)
休館日 月曜日、12月31日、2024年1月1日
※ただし2024年1月8日は開館
観覧料 一般 2,100円(1,900円) 高大生 1,500円(1,300円)
小中生 500円(300円)
※( )内は20 名以上の団体料⾦
TEL 大阪市総合コールセンター(なにわコール)06-4301-7285
受付時間 8:00ー21:00(年中無休)

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」@大阪中之島美術館美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上2組4名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2023年11月27日 月曜日 24:00
記載内容
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