推理小説家の巨匠レイモンド・チャンドラーが生み出した“私立探偵フィリップ・マーロウ”をハリウッドの名優 リーアム・ニーソンが演じた「Marlowe」が、『探偵マーロウ』の邦題で6月16日(金)に全国公開となります。

画像1: ©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

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『探偵マーロウ』

リーアム・ニーソンの映画出演100本目にあたるノアール・スリラー。ニーソンといえば、「シンドラーのリスト」のシンドラーのように篤実な役柄を演じることもあるが、最近は圧倒的にアクション映画のヒーロー役が多い。「アイス・ロード」「Memoryメモリー」「マークスマン」といった近作で、それぞれトラック運転手、ボケの始まった殺し屋、牧場主を演じており、職業は様々だが、組織に属さず、一匹狼として行動する孤高のヒーローという点では共通している。今回演じるのはレイモンド・チャンドラーが生み出した“ミーン・ストリートを歩む”私立探偵フィリップ・マーロウ。もっともニーソンは2014年のローレンス・ブロック原作「誘拐の掟」でも主役のマット・スカダーを演じており、私立探偵役は初めてではない。

画像2: ©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

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 イギリスの権威あるブッカー賞を受賞したジョン・バンヴィルが、ミステリーを書くときに使うベンジャミン・ブラック名義で2015年に発表した『黒い瞳のブロンド』(早川書房)を映画化したもの。『ロング・グッドバイ』(1953)の続編という形をとっている。1939年、ベイ・シティに探偵事務所を構えるマーロウに、謎めいた美女クレア・キャベンディッシュが行方不明になった元愛人ニコ・ピーターソンを探してくれと依頼した。ニコを探して、会員制社交クラブに行くが、情報はつかめなかった。クレアの母ドロシー・クインキャノンはハリウッドの大スターだが、傲慢で高飛車、娘にもその夫リチャードにも容赦ない。ニコがクラブのゲート前で轢き逃げされて死亡するが、クラブ会員には有力者や警察のトップもいるせいか、警察の捜査もおざなり。ニコをメキシコのティファナで見かけたというクレアの証言から、ニコの死は偽装らしいと推理。ニコの妹、ニコが隠した何かを探し求めるメキシコ人グループ、クラブの支配人、犯罪組織の大立者がからんで、謎は深まり、派手なクライマックスのあとに、意外な真相が明らかになる。

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©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

 過去のマーロウ映画を振り返ってみると、ユーモアと凝った作りが特徴のロバート・アルトマン監督作「ロング・グッドバイ」(1973)よりも、ムード・アクションたっぷりのディック・リチャード監督の「さらば愛しき女よ」(1975)の方が、40年代のLAをほうふつとさせた。本作は「さらば愛しき女よ」に似ており、40~50年代に量産されたフィルム・ノワールを想起させる。マーロウもの、というより私立探偵ものの定石といえる失踪人捜索の依頼から始まり、聞き込み中に暴漢に襲われたり、依頼人が嘘をついていたことが判明したりする。満身創痍となりながら、突き詰めた真相は決まって意外なものという私立探偵映画のパターンを踏襲しつつ、多彩なキャラクター、スムースなストーリーの流れ、警察、クラブ、撮影所、ニコの安アパート、クインキャノンの豪邸と、TPOの巧みな構成が秀逸。

画像4: ©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

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画像5: ©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

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2011年の「アンノウン」でニーソンと共演したダイアン・クルーガーがクレア、ジェシカ・ラングがクインキャノンを演じ、他にアラン・カミンズ、ダニー・ヒューストン、コルム・ミーニーらが脇を固めている。スペインのバルセロナ周辺でロケ撮影を六週間、監督したニール・ジョーダンの母国アイルランドでスタジオ撮影を二週間かけて行われた。なお「ロング・グッドバイ」も角川シネマ有楽町にてロバート・アルトマン傑作選の一編として上映されているので、見比べるのも一興。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。
著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。 

映画『探偵マーロウ』予告解禁 

画像: 映画『探偵マーロウ』予告解禁 2023年6月16日(金)公開【STAR CHANNEL MOVIES】 youtu.be

映画『探偵マーロウ』予告解禁 2023年6月16日(金)公開【STAR CHANNEL MOVIES】

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【ストーリー】
1939 年、ロサンゼルス。私立探偵フィリップ・マーロウのもとに現れたのは、見るからに裕福そうなブロンドの美女。「突然姿を消したかつての愛人 を探してほしい」――依頼を引き受けたマーロウだったが、捜査を進めるにつれ映画産業が急成長する“ハリウッドの闇”に飲み込まれ・・・予測不 能な展開の連続、探偵マーロウが辿り着く真相や如何に!?

監督:ニール・ジョーダン
脚本:ウィリアム・モナハン、ニール・ジョーダン
原作:「黒い瞳のブロンド」(ベンジャミン・ブラック/小鷹信光 訳 早川書房刊)
出演:リーアム・ニーソン、ダイアン・クルーガー、ジェシカ・ラング、アドウェール・アキノエ=アグバエ、ダニー・ヒューストン、アラン・カミング
原題:Marlowe/2022 年/アイルランド・スペイン・フランス/英語/109分/カラー/字幕翻訳:船越智子
配給:STAR CHANNEL MOVIES
©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

6 月 16 日(金)、TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー

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