カバー画像 TAKT PROJECT 《glow ⇄ grow: globe》 2023年
光硬化樹脂、LED ほか 直径100cmから成長 作家蔵 photo by ©cinefil
京都市京セラ美術館において、特別展「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」が6月4日まで開催中です。
とても新鮮で、画期的な展覧会で、アーティストたちの情熱、躍動感が伝わってきました。この感動をより多くの方々に届けたいと思います。
本展では、近年、地球環境への意識が高まり、テクノロジーが進化してゆく社会の中で、人間こそが成し得ることの重要性が再認識されています。
デザインを軸としてリサーチと思索を重ねてきた川上典李⼦⽒(武蔵野美術⼤学客員教授)が企画、監修を務め、人間や地球の歴史を意識しながら、柔軟な発想でめざましい活動を展開する日本のアート、デザイン分野の 20 作家(個人・チーム)が、ジャンルを超え、素晴らしい作品による競演をしています。
いまだ、ロシアとウクライナの戦争は終わりが見えず、新型コロナや新たなウイルスの脅威に日常生活が脅かされる日々。さまざまな問題に世界が直面する激動の時代の中で、「創造へ向かう跳躍するエネルギー」はきらめきを放ち、私たちを感動させてくれるでしょう。
それでは、展覧会構成に従って、いくつかの作品を観ていきましょう。
1 ダイアローグ:大地との対話からのはじまり
本展参加アーティストやデザイナーの活動形態は、アート、デザイン、ファッション、建築、映像など、さまざまですが皆、未来を想い、前進を続けています。
日本の伝統をふまえながら、未来の生活のあり⽅を探る現代日本のクリエイター「日本のものづくり」に世界の注目が集まっています。
「うつわ」の作家、田上真也の手捻りによるシリーズ「殻」は手と土による対話的思考の上で入念に練り上げられました。「殻」は内に生命を宿し、やがて外に向かって破られます。
青色は原初、生命が誕生した海の色で、また終わりを迎えた生命の行方を感じさせる空の色でもあるそうです。
「つくり手の考えを木に押し付けるのではなく、木の魅力を最大限に引き出したい。出会った木との共同作業として新たな魅力を生み出すということです。」という中川周士。
京都の木桶職人の家に生まれました。人間国宝の父、中川清司が生み出した「柾合(まさあ)わせ」の技法を用いた作品です。素直に木と向き合い、美が生まれました。
2 インサイト:思索から生まれ出るもの
環境問題が叫ばれる中、「人間とは、生命とは?」と思索しながら、悠久の時の流れに寄り添い、地球上の自然が育んだ素材を用いてメッセージ性のある作品が創造されています。
岩崎貴宏は、Out of Disorderシリーズで、タオルや糸などを材料に小さな鉄塔やクレーンを造り、柔らかく繊細なランドスケープを織り成しています。それは広大なジオラマの一場面のようです。黒い地層の断面の上に山あいから都市へ移動する5つの風景を、細密かつ大きなスケールで表現しています。
「ブロークンチューリップ」をご存知でしょうか?花びらや葉に斑(まだら)模様の入った稀少なチューリップは「ブロークンチューリップ」と呼ばれ、17世紀オランダでは、この花が人々を熱狂させ、その球根で家が買えるほどの高値にまで高騰したのです。ところが突然、急落し、経済の崩壊を引き起こしました。これが初のバブル崩壊でした。
その後20世紀になって、斑模様は、ウイルスが原因であることが判明しました。
井上隆夫はこの「ブロークンチューリップ」を透明なアクリルのブロックに封じ込めることに一貫して取り組みました。チューリップ以外にも、桜やタンポポ、ひまわりの作品も制作されたそうです。
本展では、封じ込めた「ブロークンチューリップ」が二重螺旋の形状に積んだタワーのように展示されていて、危うげなバベルの塔や蜘蛛の糸を彷彿させます。
「超えてはならぬ一線を人間の欲望が超えた瞬間をもたらした花を、全方向から目にできる状態に積んで、私自身も見てみたかった。」と、ご自身は語っています。
高橋賢吾は、大学で鋳金技法を学び、自然への畏敬の念や、現代における死生観を一貫したテーマとし、作品制作を続けています。東日本大震災をきっかけに『死』『生』についてあらためて考えるようになったそうです。生花をじかに型に埋め込み、焼成、アルミニウムを流し込む独自の技法によって、生花を白く輝く姿に再生します。
厚み僅か0.1ミリという精緻な造形を駆使して動物の頭蓋骨を表現しました。
佐野文彦の作品は、京都市京セラ美術館の庭を背景に、芸術と自然の融合が感じられます。
3 ラボラトリー:100年前と100年後をつなぎ、問う
歴史の中で培われてきたものづくりの担い手たちの、新たな未来に向けての取り組み、歴史と伝統を継承しつつ、京都を拠点に革新的な活動を展開するチームの熱い想いを是非、ご覧ください。
西陣織や、茶筒、抹茶茶碗など、京都ならではの素材を生かした『もの』の創造。
「日常で使われる『もの』の命を100年先につなぐためにいま何をなすべきか」という課題に取り組んでいます。
1688年(元禄元年)に創業した西陣織の「細尾」は社内にリサーチ部門「HOSOO STUDIES」
を設けました。ここは1200年の歴史を有する京都の織物と、今日のサイエンスやテクノロジーが出会う場です。
コンピュータ・プログラムで生み出された新しい美の創出は圧巻です。
伝統技法を継承し、130年余りの手仕事を経て作られる茶筒の高い気密性と滑らかな開閉性、自重で自然と落ちてくる蓋も特徴です。
その超絶技巧が創り出す「蓋と筒」に観る人、触れる人は心を揺さぶられます。
手仕事とテクノロジーをつなぐことを主軸に伝統と未来が紡がれた新しい茶筒の世界が拓かれました。
4 リサーチ&メッセージ:未来を探るつくり手の現在進行形
綿密なリサーチを重ねて課題解決を図ることで世界の注目を集めるデザイナーの最新活動が紹介されています。
TAKT PROJECT のリサーチに基づく本展のためのインスタレーションや、人⼯と自然の関係に着目した《glow ⇄ grow: globe》の会期中の変化は必見です。
革新的な衣服づくりを提案する A-POC ABLE ISSEY MIYAKE のチームは、京都で受け
継がれる技術をとり入れた最新コレクションを披露。
ニューヨークで活動する田村奈穂の静謐に包まれたインスタレーションも日本初公開です。
個性あふれる数々の作品からは、激動期のサバイバル、未知の受容、未来に向けた創造などへの先見性を読み取ることができるでしょう。是非、この感動を京都市京セラ美術館で体感してください。
展覧会概要
展覧会名:特別展 跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー
会期:2023 年 3 月 9 日(木)~6 月 4 日(日)
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
開館時間:10:00~18:00(最終入場は 17:30)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
料金:一般:1,800(1,600)円 ⼤学・専門学校生:1,500(1,300)円
高校・中学生:1,100 (900 )円 小学生:600 (400 )円 未就学児無料
※( )内は20 名以上の団体料金 ※京都市内に在住・通学の小中学生は無料 ※障害者手帳等ご提示の⽅は本人及び介護者 1 名無料(学生証、障害者手帳等確認できるものをご持参ください)
主催:京都市、京都新聞、日本経済新聞社
企画:京都市京セラ美術館、川上典李⼦、米山佳⼦
監修:川上典李⼦
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」@京都 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2023年4月17日 月曜日 24:00
記載内容
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1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の郵便番号、電話番号、建物名、部屋番号も明記)
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