かの有名なクリムトに「才能がある?それどころかありすぎる」と言わしめた天才画家エゴン・シーレ(1890-1918)。
シーレは、世紀末を経て芸術の爛熟期を迎えたウィーンにおいて、人間の内面を強烈に描き、わずか28年の短い生涯の間に鮮烈な表現主義的作品を残し、美術の歴史に名を刻みました。
このたび、日本で約30年ぶりとなる、エゴン・シーレの展覧会「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」が東京都美術館において、2023年1月26日より4月9日まで開催されます。
本展はエゴン・シーレ作品の世界有数のコレクションで知られるウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、シーレの油彩画、ドローイングなど合わせて50点に加え、クリムト、ココシュカ、ゲルストルをはじめとする同時代作家たちの作品もあわせた約120点の作品が紹介される大規模展です。
強烈な表現力を持った若き天才画家エゴン・シーレと、ウィーン世紀末美術を是非、ご堪能ください。
シーレは、最年少でウィーンの美術学校に入学するも、保守的な教育に満足せず退学し、若い仲間たちと新たな芸術集団を立ち上げたのですが、常識にとらわれない創作活動により逮捕されるなど、波乱に満ちた生涯でした。
孤独と苦悩を抱えた画家は、ナイーヴな感受性をもって自己を深く洞察し、ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出したのでした。
表現性豊かな線描と不安定なフォルム、鮮烈な色彩で斬新な作品を描き、自分は何者かを問い続けたシーレですが、無情にも当時流行したスペイン風邪により、わずか28歳で儚い人生を閉じました。
シーレは当時のウィーン美術界の中心人物だったグスタフ・クリムトと個人的に知り合い、影響を受けました。この絵画にはそれが、最もよくあらわれています。正方形のカンヴァスや背景に金や銀を用いる手法は、明らかにクリムトのものであり、絵画の装飾性、平面性を高める役割を果たしています。中心に据えられた花と葉もまた大胆な色面で表わされ、シーレの後の作風を予見します。
生涯にわたり自画像を描き続けたシーレは、世紀末のウィーンという多様な価値観が交錯し対立する世界に生きながら、自画像を通して自己のアイデンティティーを模索し続けました。本作は、シーレが21歳の時の作品。中央の人物は画家自身であり、目を閉じて瞑想に耽っているようです。背後に迫るもう一人の人物は、赤、緑、黒と複数の色彩で表わされた手前の人物の顔面とは対照的に蒼白でまぶたは窪み、頬はこけていて、いわば死人の顔です。画家は自分自身と、近づいてくる自分の運命と対峙しているのでしょう。
個性的な人物画で知られるシーレですが、風景画の比率は少なくありません。本作に描かれている町はシーレの母親の故郷で、彼自身も何度か訪れた町です。高い視点から、家々がひしめく町全体が平面的にとらえられています。シーレの風景は静謐で、暗い色調の作品が多いなか、本作は構図や色彩にリズムがあり、おとぎの国のような雰囲気が漂っています。
キリスト教絵画の伝統的な聖母子像を思わせる構図に収められた母と子。ですが、目と口をしっかりと閉じた母親の表情は、世界との断絶を感じさせます。一方、目を見開いたこどもは恐怖心をあらわにしているようです。シーレの母子像は、平和や愛情の象徴というよりむしろ、死や不安をほのめかす作品となっています。本作においてシーレは明らかに筆ではなく、指を使って描いていて、一部に指紋が残されています。
伝統的な裸婦像からかなり逸脱し、シーレの裸婦の多くは体を極端にひねったり、うずくまったり、膝を抱え込んだりと、バラエティに富んでいます。本作では、女性がひざまずいた状態から突然に前屈みになった瞬間がとらえられているようです。ふわりと膨らんだスリップと、露わになった太腿は、シーレらしいエロティックな演出であるとともに、画中に運動感をもたらす要素となっています。
クローズアップで描かれた女の肌は青白く、頬はこけ、大きな瞳は涙でうるんでいます。モデルは1911年から15年にかけてシーレの恋人だったヴァリー・ノイツェルで、いびつに描かれた黒いスカーフの向こうには、神経質そうな表情の顔がみえます。まるで彼女の思考がこの男で占められていて、彼女の悲しみの原因が男にあることが示されているようです。男はほかならぬシーレ自身であり、不穏な描写に二人の複雑な関係があらわれています。
《ユディト》や《接吻》などゴージャスな雰囲気が漂う作品が有名で、日本でも人気の高いクリムト。ウィーン世紀末美術のもっとも重要な画家です。保守的なウィーン画壇に対抗すべくウィーン分離派を創設し、官能的な女性像や、建築や工芸といったジャンルを超えた表現を通して、新しく自由な芸術を模索しました。
1907年頃にシーレと知り合ったクリムトは、若い画家を理解し、自身のコレクターたちに彼を紹介しました。1908年から1909年頃のシーレの作品には、正方形のカンヴァスや背景の装飾的な表現などに、クリムトからの影響が見てとれます。
シーレも影響を受けたウィーン分離派をクリムトとともに創設し、機関誌『ヴェル・サクルム』のデザインを担当しました。1903年にはウィーン工房を設立します。画家としてだけでなく、空間デザイン、家具や工芸品のデザインなど、幅広い分野で才能を発揮しました。絵画においては、風景画や象徴的な作品を得意としたほか、本作のように花をモティーフとする装飾的な作品も制作しました。
天才画家シーレは第一次世界大戦に従軍し、最期はスペイン風邪によって短い生涯を閉じることになりました。
「戦争が終わったのだから、僕は行かねばならない。僕の絵は世界中の美術館に展示されるだろう。」
シーレのこの言葉に胸が痛くなります。シーレはもっと生きて、もっと多くの作品を描きたかったのでしょう。
シーレが生きた時代からおよそ100年経った今、ロシアとウクライナの戦争は終わりが見えず、新型コロナウイルスも未だ世界中で衰えることはありません。
展覧会概要
展覧会名│「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」
会期│2023年1月26日[木]─ 4月9日[日]
開室時間│9:30-17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日│月曜日
※会期等は変更になる場合がございます。
会場│東京都美術館(東京・上野公園)〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
観覧料 | 一般 2,200円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 65歳以上 1,500円
チケット発売日 | 2023年1月12日(木)10時より予約開始
※本展は、展示室内の混雑を避けるため、日時指定予約制となっております。日時指定予約制は記載必須でお願いします。
※詳しい販売方法は、後日、本サイトにて発表いたします。
公式サイト│https://www.egonschiele2023.jp
公式Twitter│@schiele2023jp
お問い合わせ│050-5541-8600(ハローダイヤル) ※全日9:00-20:00
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」@東京都美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上3組6名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆ 応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2023年2月20日 月曜日 24:00
記載内容
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