10月29日(土)から11月5日(土)にかけて開催されました「第23回東京フィルメックス」。
今年はコンペティション部門には、世界各国より9作品がノミネートされ11月5日(土)に受賞作品が発表され、授賞式が行われました。
以下オフィシャルレポートとなります。
<「第23回東京フィルメックス」授賞式 概要>
【日時】11月5日(土)18:00~18:40
【場所】有楽町朝日ホール (千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11F)
【登壇者】
国際審査員 リティ・パン(審査委員長)、キキ・ファン、キム・ヒジョン
学生審査員 山辺愛咲子(やまべ・あさこ)、高野志歩(たかの・しほ)
神谷直希(プログラムディレクター)、受賞者
最初に発表される「観客賞」の紹介の冒頭、プログラムディレクターの神谷が登壇。「今年の開催に関わってくれた全ての方へ、改めて御礼申し上げます」と挨拶。財政的に苦しい状況の中、クラウドファンディングなど様々な形での協力を得て開催できた第23回について、改めて感謝の気持ちを伝えた。
観客賞は『遠いところ』(監督:工藤将亮)が選ばれた。登壇した工藤は、「すごく才能ある監督が集まるコンぺティションに選んでくれて、素晴らしい作品と競えて、光栄だった。そんな中で、観客賞をいただけてとても嬉しい。この映画の何が見どころかと言われると、俳優陣の演技だと思う。心から作品の力を、作品の内容を信じてくれてた俳優陣に感謝します。そして沖縄の皆さんへ、この賞を捧げたいと思う」と、喜びと感謝の気持ちを述べた。
続いて「学生審査員賞」が発表された。「この映画からは、彼らのアイデンティティを包み込むような優しさを感じた。ユーモアあふれる演出の中に漂う、確かな絶望感。決して明るくない社会に生きる一人の人間と、映画の外までも続いていく世界の広がり、そしてその先の人生も描き出されていた」という評価を受けた、『地中海熱』(監督:マハ・ハジ)が受賞。マハ・ハジからはテキストメッセージが到着、「とても嬉しく感激している。この瞬間に、皆さんと一緒に東京にいられたら良かったのに、と思う。そうすれば、さらに夢のような体験になったでしょう」と喜びを語った。
続いて国際審査員が登壇、東京フィルメックス・コンペティションの結果発表を迎えた。
まず初めに、今年はスペシャルメンションがあり、「リアリズムとイマジネーションを融合させた芸術的で詩的なこの作品は、腐敗やグローバル化の危険性に対する人間のどうしようもない闘いを隠喩的に表現している」という理由から、『ダム』(監督:アリ・チェリ)に授与された。
アリ・チェリからはビデオメッセージが到着、「スペシャルメンションは、私にとってとても重要です。これが東京からのものだから。今週、観客の皆さんと一緒に映画を観れて素晴らしかった。この賞は、スーダンやベイルートにいる家族や友人、そして映画に参加してくれた皆さんへ捧げます」と喜びを語った。
続く「審査員特別賞」は今年2作品が選ばれた。「私たちはどこから来て、どこへ行くのか?アイデンティティと出自を求めることで、疑問や可能性、新たな展望を切り開き、他にはない魅力的な文化と映画の旅へと導いている」と評された『ソウルに帰る』(監督:ダヴィ・シュー)と、「人命やその他の価値がどのように犠牲になっているかが考察されることで、人を搾取するメカニズムに光が当てられている」と評された『Next Sohee(英題)』(監督:チョン・ジュリ)が賞に輝いた。
ダヴィ・シューからはビデオメッセージが到着、「この映画祭で上映することは私の夢でしたが、できれば日本で配給会社を見つけて、もっと多くの人に見てもらえればと思う。この作品は、アイデンティティの問題と自分自身について扱っており、そして様々な生い立ちの人々によって作られている。フランス、ベルギー、韓国、カンボジアのみなさん、彼らと一緒になって映画を作ることができた」と喜びを語った。
チョン・ジュリは舞台に登壇。「韓国社会に限られる小さな話だと思っていたから、フィルメックスへ来て皆さんにお会いできるとは想像していなかた。上映してみて、観客の皆さんが心から共感してくれる姿に感動した。実は昨日韓国へ戻ったが、受賞を聞いて今日戻ってきた。私の映画で描かれている悲しみより、現実に惨憺たる出来事が起きていて、映画祭の間、ずっと心を痛めていたけれど、今日皆さんがくれて格別の感激に勇気をもらい、私たちを結びつてくれたこの映画という力を信じて、自分のいる場所で全力を尽くして映画を作っていきたいと思う」と話した。
そして「最優秀作品賞」は、「見事な演出による自信に満ちた映画スタイルで、モラルコントロールの巨大な網に対する個人の抵抗の探求は、次第に権力構造が不穏な邪悪さへと変化する様子を描いている。このテーマは緊急かつ普遍的である」と評された、『自叙伝』(監督:マクバル・ムバラク)が見事獲得!登壇したムバラクは「長編第一作目で、5年かかった。撮影した村と、世界中の友人の力を借りて撮影した、まさにこの映画は、友情の産物です」と、感激の気持ちを伝えた。
審査委員長のリティ・パンは、「今回の作品、全てに圧倒された。映画的に異なる様々なスタイルを持つ作品を見ることを嬉しく思った。本当なら2作品しか授与しないが、今回特別に4作品も選んだ。本当に素晴らしかったから。皆さんも、アイスクリームが一つ美味しかったらもう一つもう一つとなっていきますよね?たくさんたくさんあげてしまった感じです(笑)」と、パンらしいユーモアを交えた講評で、今年の映画祭を締めくくった。
授賞式では、人材育成プログラム「タレンツ・トーキョー・アワード」の発表も行われ、スペシャルメンションに、マウン・サン(企画:『Future Laobans』 (フューチャー・ラオバンズ)とシャルロット・ホン・ビー・ハー(企画:『TROPICAL RAIN, DEATH-SCENTED KISS』(トロピカル・レイン、デス・センテッド・キス)が選ばれた。そして「タレンツ・トーキョー・アワード」には、ソン・ヘソン(企画:『Forte(フォルテ)』)が選ばれた。