山﨑樹一郎監督の新作『やまぶき』が11月5日(土)より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
となります。

画像1: © 2022 FILM UNION MANIWA SURVIVANCE

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この度、9月1日〜9日にクロアチアの第二都市スプリトで開催された第27回スプリト国際映画祭のインターナショナル・コンペティション部門にて『やまぶき』が最優秀作品に与えられるグランプリを受賞しました。『やまぶき』はカンヌ国際映画祭ACID部門に日本映画として初めて招待されたことを始めとして世界各地で上映され評価されていますが、受賞は今回が初めてとなります。

 日本ではほとんど知られていないが、スプリト国際映画祭はクロアチアで最も歴史の古い映画祭だ。メインストリームから外れた世界中の革新的で創造的、パーソナルでラディカルな作品を紹介することを目的に1996年に創設された。クロアチアがユーゴスラビアから独立して間もなかった時期だ。今も創設時と同じディレクターが作品選定をしており、その芸術的方針に変わりはない。これまでにクリス・マルケルやジョナス・メカス、スタン・ブラッケージ、ストローブ=ユイレ、クレール・ドゥニ、タル・ベーラ、ペドロ・コスタ、ミケランジェロ・フラマルティーノ、アルベール・セラなど先鋭的な作風の映画作家たちに映画祭名誉賞を与えてきたことから、プログラムの質の高さは想像しやすいだろう。今年は、世界中から選ばれた8本の長編作品が競い合うインターナショナル・コンペティション部門に、『やまぶき』は唯一の日本映画として出品された。

 アドリア海に面するスプリトの旧市街は、3世紀末から4世紀初頭に建造されたローマ帝国の宮殿の跡地の中に増改築を繰り返して形づくられた。当時の遺構が数多く点在しており、旧市街全体が世界遺産に指定されている。その世界遺産の中にある美しい映画館を会場としていることもこの映画祭の特徴だ。

トマト農業の繁茂期で渡航できなかった山﨑樹一郎監督に代わって、プロデューサーの小山内照太郎が上映に立ち会った。現地時間の9月3日(土)に行われた公式上映での観客の反応はヴィヴィッドで、岡山県真庭市を主な舞台に描かれた小さな物語がクロアチアの人々にも確かに共有されていることを実感したという。山﨑監督がトマト農業に携わりながら映画を作り続けていることにも観客はとても関心を示した。そして、溝口健二や小津安二郎などで知られる輝かしく長い歴史を持つ日本映画だが、『やまぶき』のようなインディペンデント作品は、ヨーロッパとは違い行政の支援がとても少ないために、トマト農家のような兼業をしなければ映画を作れないという事実に、現地の観客や映画業界人は率直に驚いていたという。

 『やまぶき』は、スプリト国際映画祭の後も世界各地での上映が決まっており、現在のところ14の映画祭から招待を受けている。来春にはフランスで全国劇場公開される予定だ。

<審査員団によるステートメント>
主人公たちの心の揺らぎが16ミリフィルムのざらついた映像に見事に表現されている。編集も秀逸で、とりわけシーンの移行が素晴らしい。落ち着いたカメラの動きが私たちを物語へ自然と誘う。だが、それらの技術的な要素以上に『やまぶき』が真に優れているのは、人生のあらゆる困難にポジティヴに向き合う道を示していることだ。

画像2: © 2022 FILM UNION MANIWA SURVIVANCE

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『やまぶき』【作品解説】

『やまぶき』は、岡山県真庭市の山間で農業に携わりながら、地方に生きる人々に光をあてて映画製作を続ける山﨑樹一郎監督の長編第3作。再び地元でロケをし、初めて16ミリフィルムで撮影に挑んだ野心作だ。

物語の舞台は現代。かつては韓国の乗馬競技のホープだったチャンスは、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働いている。一方で、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。二人とその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める−−。陽の当たりづらい場所にしか咲かぬ野生の花「山吹」をモチーフに、日本社会と家族制度の歪みに潜む悲劇と希望を描きだす群像劇だ。

チャンス役を演じるのは、イギリスで演劇を学び、今回初めての日本映画出演となる韓国人俳優のカン・ユンス。山吹役は、『Dressing Up』『左様なら』『サマーフィルムにのって』など作家性の高い作品への出演が続く演技派俳優・祷キララ。その傍に、川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、松浦祐也、青木崇高らの実力派俳優たちが集結し、田舎町に暮らす人々のほとばしる生を体現している。

『やまぶき』は、フランスのSurvivance(シュルヴィヴァンス)との国際共同製作によって完成された。『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』でアヌシー国際アニメーション映画祭で2冠を得たセバスチャン・ローデンバックがアニメーションパートを、オリヴィエ・ドゥパリが音楽を担当。また、フランソワ・トリュフォーやモーリス・ピアラ、フィリップ・ガレルなどの巨匠監督の作品を手がけた、フランス映画の伝説的な編集マンであるヤン・ドゥデが編集協力をしている。

監督、脚本:山﨑樹一郎
出演:カン・ユンス、祷キララ、川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、青木崇高
黒住尚生、桜まゆみ、謝村梨帆、西山真来、千田知美、大倉英莉、松浦祐也
グエン・クアン・フイ、柳原良平、齋藤徳一、中島朋人、中垣直久、ほたる、佐野和宏

プロデューサー:小山内照太郎、赤松章子、渡辺厚人、真砂豪、山﨑樹一郎
制作プロデューサー:松倉大夏
撮影:俵謙太/照明:福田裕佐/録音:寒川聖美/美術:西村立志
助監督:鹿川裕史/衣装:田口慧/ヘアメイク:菅原美和子/俗音:近藤崇生
音楽:オリヴィエ・ドゥパリ/アニメーション:セバスチャン・ローデンバック
編集協力:ヤン・ドゥデ、秋元みのり

製作:真庭フィルムユニオン、Survivance
配給:boid/VOICE OF GHOST

2022年|日本・フランス|16mm→DCP|カラー|5.1ch|1:1.5|97分

11月5日(土)渋谷ユーロスペース、12日(土)大阪シネ・ヌーヴォほか全国順次公開!

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