11 月 12 日(金)より渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、キネカ大森、 イオンシネマ他にて全国順次公開となった仲村トオル×杉野希妃×斎藤工×中村ゆり等の出演、鬼才・万田邦敏監督待望の新作となる『愛のまなざしを』。
この度、公開にあたって、今作の脚本を手がけられた万田珠実さんによる集中連載が、「シネフィル」で掲載されることとなりました。
制作の裏側などを交えた、制作日誌となります。
そして、ついに最終回。

第十回 クランク・アップ

2019年9月13日

いよいよクランク・アップの日を迎えました。この日は午前中に三鷹の路上で祐樹と藤野詩音さん演じる同級生のシーンがあり、午後は綾瀬の地下道に移動して、ラストシーンの撮影が行われました。

画像: カバンの持ち方にまで、細かい指示が

カバンの持ち方にまで、細かい指示が

私は三鷹の現場には行かなかったのですが、話を聞くと、横断歩道で同級生と別れるシーンは何度もテイクを重ね、藤原くんは相当走らされたようでした。続く地下道のシーンでもやはり、父親と別れたあと、全力疾走で走るよう、監督から指示がありました。しかもこのカットはかなり奥まで写っていて、フレームアウトするまで相当な距離があります。夜になっても蒸し暑く、テストから本番まで何度も走った藤原くんは、汗だくになっていました。完成したカットは、涼しい顔ですけどね。

脚本を書いている時は意識していませんでしたが、悩みを抱えた祐樹って、何かから逃げるために走り続ける子だったんですね。そう思うと、走り去っていく祐樹の後ろ姿が、ますます愛おしく思えます。

後先になってしまいましたが、私が藤原くんの演技に感心したのは、裕樹の部屋に父親が入ってくるシーンでした。見た方はもうお気づきでしょうか。最初に聞こえたノックに答える「何?」と、入ってきたのが父親だとわかってから言う「何?」の声のトーンが、全然違うんです。一度目はおばあちゃんかと思ったのでしょうか、いつもの感じで。ところがこの時入ってきたのは、珍しく家にいた父親だった。そうわかった時の祐樹の気持ちが、瞬時に声に現れています。デビュー作にして、この演技プラン。立派だと思います。

画像: 最後まで全力疾走!

最後まで全力疾走!

さて、いよいよラストシーンの撮影となりました。このシーンはネタバレになってしまうので、詳細は触れないでおこうと思いますが、一つだけ紹介しておきたいのが、撮影中に脚本を書き替えたラストについてです。実は書き換えたとはいえ、撮影の時点でもまだ、全く意味の異なる二つの終わり方が用意されていたのです。しかも、最後の最後までどちらにするかが決められず、結局ふたつともが撮影され、どちらにするかの結論は編集段階に持ち越されたのでした。どのようなラストシーンになったのかは、完成した映画で確かめてみて下さい。

代わりと言ってはなんですが、ここで衣装・持ち道具の話をさせて下さい。貴志は、私のたっての願いで、白シャツに黒ズボン、黒縁メガネをトレードマークとさせていただきました。普通、医者といえば白衣を着ているものですが、精神科医ということもあってそれにはこだわらず、仲村さんが一番カッコよく見えることを優先しました。特に黒縁のメガネは、普段お会いした時にとても素敵だったので、無理を言って仲村さんのご自前を使わせていただくことになりました。映画をご覧になる時、ちょっと注意してみて下さい。医者としての貴志は必ず白シャツに黒ズボンを着ており、さらに相手を患者として見ている時は、必ずメガネをかけていますから。

さて、クランク・アップとなったこの日、残念ながら貴志は白シャツ、黒ズボンではありませんでしたが、そのことが何を意味するのかは、最後まで見て下さった方にはわかると思います。かたや綾子は、派手な服装や化粧から、だんだんと地味な服、素顔に近いメイクに変化していきます。これもまた、綾子の変化の現れとして見ていただけたらと思います。

画像: 衣装もきまっている貴志と綾子

衣装もきまっている貴志と綾子

2年前の9月に12日間で撮り上げた映像は、最初の編集バージョンが130分となり、その後30分もカットされた後、思いも寄らぬコロナ禍という状況を経て、2021年の11月、ようやく一般公開されることとなりました。ここに来るまでが長かったのは確かですが、公開された後も、作品を多くの方に見ていただくための活動は、まだまだ続きます。どうか、一人でも多くの方の目に留まりますようにとの思いを込めて、この日誌を書きました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

『愛のまなざしを』予告 

【STORY】
亡くなった妻に囚われ、夜ごと精神安定剤を服用する精神科医・貴志のもとに現れたのは、モラハラの恋人に連れられ患者としてやってきた綾子。恋人との関係に疲弊し、肉親の愛に飢えていた彼女は、貴志の寄り添った診察に救われたことで、彼に愛を求める。いっぽう妻の死に罪悪感をいだき、心を閉ざしてきた貴志は、綾子の救済者となることで、自らも救われ、その愛に溺れていく…。しかし、二人のはぐくむ愛は執着と嫉妬にまみれ始めるのだった――。

出演:
仲村トオル 杉野希妃 斎藤工 中村ゆり 藤原大祐
万田祐介 松林うらら
ベンガル 森口瑤子 片桐はいり

監督:万田邦敏
脚本:万田珠実 万田邦敏

公式HP:aimana-movie.com
Facebook:aimana.movie
Twitter:aimana_movie
instagram:aimana_movie

渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、キネカ大森、 イオンシネマほかにて全国順次公開中!

This article is a sponsored article by
''.