10月30日(土)に会場を日比谷・有楽町・銀座エリアに移転し装い新たに開幕したアジア最大級の映画祭・第34回東京国際映画祭が本日閉幕を迎え、クロージングセレモニーを行われました。東京グランプリ/東京都知事賞や今回新設され、Amazonスタジオアジアパシフィック責任者のエリカ・ノースさんも審査委員に名前を連ねたAmazon Prime Videoテイクワン賞など各部門における各賞の発表・トロフィー授与をおこないました。
つきましては、各賞の受賞作品、受賞者を下記にてご報告させて頂きます。
■第34回東京国際映画祭 クロージングセレモニー
■日時:11月8日(月)17:00~18:05
■場所:TOHOシネマズ日比谷スクリーン12
登壇者:
コンペティション部門 審査委員:イザベル・ユペール、青山真治、クリス・フジワラ、ローナ・ティー、世武裕子
アジアの未来部門 審査委員:韓 燕麗、北条誠人、石井裕也
Amazon Prime Videoテイクワン賞 審査委員:行定勲、渡辺真起子、アンドリアナ・ツヴェトコビッチ
アルバ-・メフメティ(駐日コソボ共和国大使館 臨時代理大使)、安藤裕康チェアマン
各賞の受賞者(下記、別途詳細あり)
<コンペティション部門>
<審査委員長スピーチ>審査委員長 イザベル・ユペールさんコメント:
私たちが拝見した15作品で感じたのは、映画の多様性の豊かさです。コンペディション作品の一部には言語の多様性、言語の違いがテーマになっている作品もありました。世界には多くの言語が消滅の危機にあると嘆くシーンが描かれていた反面、『ちょっと思い出しただけ』では世界の人が皆おなじ言葉を話したらいいのではないかとも話しています。
詩もコンペティション部門では多くテーマとなっていました。その他、非言語的な映画芸術も含め、あるいは音楽、演劇、舞踊、映画そのものという表現も取り上げています。私たち審査委員はコンペティション部門の審査で、現代文化における映画の位置づけについて考えることを求められました。もうすでに地位を確立しているアーティストと新しいアーティストの声、世界の多様なコミュニティを扱っている作品に対面することになりました。社会の現状を観る事ができました。こうした作品の社会のイメージの現代的なものに感動しました。以前は文化を民族的なフォークロアなものとして観る事が多かったのですが、今年の東京ではそうしたことはありませんでした。また、コンペティション部門では多くの女性が描かれていました。ここで3作品だけ挙げると、『ヴェラは海の夢を見る』と『市民』、『もうひとりのトム』これらの作品の登場人物は途方もない苦境、犯罪、暴力、虐待に直面しています。どの映画でもこうした社会の問題と人々を抑圧し続ける過去のレガシーを描いています。それでありながら、3作の主人公ともに、被害者としては描かれず、一人一人が敵を見極め対峙していくことができるようになっていく。最後に戦いの勝ち負けに左右されず、これらの作品は未来へ向かっていきます。こうした15作品と、世界を様々に探求していくのは楽しいことで、こうして審査委員として携われたことを大変光栄に思います。
安藤裕康チェアマン コメント:
長いと思った10日間もいよいよ終幕がやってまいりました。幸い2日目を除き素晴らしい秋晴れに恵まれ、新天地の会場も賑わいを見せたことを嬉しく思います。これまでのところ上映作品の評判も上々のようですが、今年の映画祭がどう評価されたか、皆様のご意見も伺い、よく分析をして来年に備えたいと思います。今回来日された著名なフランスの批評家の方が、こんなメッセージを寄せて下さいました。
「いま、東京国際映画祭が目指していることは、映画の多様性、創造性、そして世界との連携という見地から、日本の映画界のみならず映画を愛するすべての人々にとって重要であると確信しています」
この言葉をかみしめながら、前進してまいります。映画祭を支えて下さった実行委員会、官公庁、協賛企業、メディア、ボランティアの皆さん、そして何よりも観客の皆様に厚く厚く御礼申し上げ、第34回東京国際映画祭の閉幕を宣言させていただきます。
東京グランプリ/東京都知事賞
『ヴェラは海の夢を見る』(カルトリナ・クラスニチ監督)(コソボ/北マケドニア/アルバニア)
審査委員特別賞
『市民』(テオドラ・アナ・ミハイ監督)(ベルギー/ルーマニア/メキシコ)
最優秀監督賞
ダルジャン・オミルバエフ監督『ある詩人』(カザフスタン)
最優秀女優賞
フリア・チャベス『もうひとりのトム』(メキシコ/アメリカ)
最優秀男優賞
アミル・アガエイ、ファティヒ・アル、バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥ『四つの壁』(トルコ)
最優秀芸術貢献賞
『クレーン・ランタン』(ヒラル・バイダロフ監督)(アゼルバイジャン)
観客賞&スペシャルメンション
『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督)(日本)
最優秀観客賞
『ちょっと思い出しただけ』 松居大悟監督コメント:
東京国際映画祭は4回目の参加で、初めて両手に重さを感じられることが出来て嬉しいです。この作品は、この2年くらいの苦しい時間や悔しい時間を、ただ嫌な時間としてではなく、人と会う事が嬉しく感じられるような、過去と現在を抱きしめられるような前に進んでいける作品になったと思います。音楽を担当してくれたクリープ・ハイプの尾崎君が明日誕生日で、この受賞を伝えてあげられるのが嬉しい。これからも映画作ります。審査員の皆さん、映画祭スタッフの皆さん、ボランティアの皆さん、本当にありがとうございました。
<アジアの未来部門>
北條誠人 講評:
アジアの10作品が参加した「アジアの未来」の全作品を拝見して、多くの作品が映画史の巨匠の作品から学びながらもオープニングのカットから個性が際立ち、それぞれの作家の今の社会に対する問題意識が反映された、意義の深い作品だと思いました。多くの作品が私たち観るものに、映画を観ながら今の世界をどう考えるかを問いかけてきました。その結果、三人の審査員の意見は大きな幅を持つものとなり長編映画1本分の時間の議論の結果、作品賞の作品を選ぶことになりました。審査員の作品に対する意見は異なりましたが最も若きエネルギーと挑戦を感じさせる作品という点では意見が一致しました。
作品賞
『世界、北半球』(ホセイン・テヘラニ監督)(イラン)
<Amazon Prime Videoテイクワン賞>
行定勲審査委員長 講評:
素晴らしい作品を選出してくれた選考委員に感謝を致します。審査会が紛糾し、審議に3時間かかりました。それぞれがそれぞれのいいところを主張する、素晴らしい時間でした。クオリティの高い作品を観るとこれだけ票が割れるんだなと、改めて思い知りました。テイクワン賞を受賞した『日曜日、凪』は、一組の夫婦の離婚する日を描いた作品。こういったテーマを描いた作品は暗い映画が多い中、この作品はユニークな作品でした。秀逸なラストシーンが素晴らしかった。長尺を撮ったときに才能を発揮するという将来性を感じ、受賞となりました。『橋の下で』は人生に悩む主人公。コロナ禍を描き現代を表していたのですが、監督自身が主人公をパワフルに演じていた。他にも完成度の高い力強い作品群をみて、日本の映画の未来は明るいなと改めて思いました。
Amazon Prime Videoテイクワン賞
『日曜日、凪』(金允洙⦅キム・ユンス⦆監督)
Amazon Prime Videoテイクワン賞審査委員特別賞
『橋の下で』(瑚海みどり監督)
第34回東京国際映画祭