11 月 12 日(金)より渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、キネカ大森、 イオンシネマ他にて全国順次公開となる仲村トオル×杉野希妃×斎藤工×中村ゆり等の出演、鬼才・万田邦敏監督待望の新作となる『愛のまなざしを』。
この度、公開にあたって、今作の脚本を手がけられた万田珠実さんによる集中連載が、「シネフィル」で掲載されることとなりました。
制作の裏側などを交えた、公開までの制作日誌となります。
第八回 撮影8日目
2019年9月9日(月)
8〜9日にかけて首都圏に上陸した台風15号は、記録的な暴風を伴いました。千葉県のゴルフ練習場が倒壊した台風といえば、思い出していただけるでしょうか。もっとも当日の私たちはニュースを見る暇もなく、そんなことが起こっているとは知りもしませんでしたが…。
前日の夜から電車は止まり、それを見越して主なスタッフは翌朝車でピックアップする手配を整えるなど、柴野 淳さんをはじめ制作の方々は精一杯の対応をしてくださいましたが、やはり当日はトラブルが発生しました。
この日の現場は戸建てのハウススタジオとは別の貸しスタジオで、茂の部屋と綾子の実家を撮ることになっていました。予定していた時刻に到着できない出演者やスタッフがいてスタートは遅れ、やっと撮影開始になるとなぜか隣のマンションの非常ベルが鳴りっぱなしに。結局午前中はほぼ何もできない状態でした。どう考えても、予定していたシーンを全て撮ることは無理です。しかしこの場所を借りられるのはこの日が最後。一体どうしたらいいのか…。
茂と綾子のやりとりは、重要かつセリフが長いので削るのが難しい。となると、森口瑤子さん演じる綾子の母と、松林うららさん演じる綾子の妹が登場するシーンをいじるしかありません。元々の予定では、貸しスタジオ内と、そこから少し離れた川縁の2カ所で撮影するはずでしたが、外のロケ場所に移動している時間がありません。そこで2シーンを1シーンにまとめ、スタジオ内だけで撮ることになりました。
森口さんにお会いするのは、『UNloved』以来です。今回はほんの短い出番ながら、しかもクランクイン直前の依頼だったにもかかわらず、出演を快諾して下さり、それだけでもありがたかったのにこんなことになってしまい、本当に申し訳ない気持ちでした。ただ、前のシーンの撮影が押した分、森口さんの出番も遅れ、空いた時間にたくさんお話しさせていただけたのは、至福のひとときでした。ここに仲村さんがいれば『UNloved』の同窓会になったのに、この日に限って仲村さんは出演がなくてお休み。本当に残念でたまりませんでした。
結局台詞を一つ増やす形で脚本を書き換え、準備が整うのを待ちましたが、なかなかスタンバイの声がかかりません。やっと現場に入った頃には、すでに日が傾き始めていました。森口さんは斎藤工さんと初めての共演だそうで、それなのに芝居はほぼぶっつけ本番。斎藤さんの自然な感じの演技に、とても上手く芝居を合わせてくださり、陰影のある綾子の母を演じて下さいました。お二人の息の合った演技のおかげで、日が落ちるギリギリで撮影は何とか終了しました。
以前、この監督は役者に細かい演出をすると書きましたが、中にはその方法を取らず自由に動いてもらう役者さんもいます。今回はそれが斎藤工さんでした。斎藤さんは、自然体の演技が持ち味の役者さんだと思います。それゆえか監督も斎藤さんには特に動きを指示しなかったと思いますが、そのため茂には、貴志や綾子にはない柔らかさやナチュラルさが出ました。そこに、「台詞はなるべく脚本通りにお願いします」という私の僭越な注文のせいで固さや不自然さが加わり、いつもとはひと味違った斎藤工の魅力が生まれているのではないかと思うのですが…。これもまた、図々しい脚本家の欲目でしょうか。
『愛のまなざしを』予告
【STORY】
亡くなった妻に囚われ、夜ごと精神安定剤を服用する精神科医・貴志のもとに現れたのは、モラハラの恋人に連れられ患者としてやってきた綾子。恋人との関係に疲弊し、肉親の愛に飢えていた彼女は、貴志の寄り添った診察に救われたことで、彼に愛を求める。いっぽう妻の死に罪悪感をいだき、心を閉ざしてきた貴志は、綾子の救済者となることで、自らも救われ、その愛に溺れていく…。しかし、二人のはぐくむ愛は執着と嫉妬にまみれ始めるのだった――。
出演:
仲村トオル 杉野希妃 斎藤工 中村ゆり 藤原大祐
万田祐介 松林うらら
ベンガル 森口瑤子 片桐はいり
監督:万田邦敏
脚本:万田珠実 万田邦敏
公式HP:aimana-movie.com
Facebook:aimana.movie
Twitter:aimana_movie
instagram:aimana_movie