11 月 12 日(金)より渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、キネカ大森、 イオンシネマ他にて全国順次公開となる仲村トオル×杉野希妃×斎藤工×中村ゆり等の出演、鬼才・万田邦敏監督待望の新作となる『愛のまなざしを』。
この度、公開にあたって、今作の脚本を手がけられた万田珠実さんによる集中連載が、「シネフィル」で掲載されることとなりました。
制作の裏側などを交えた、公開までの制作日誌となります。
第四回 撮影3日目
2019年9月3日(火)
この日の撮影は、まず埼玉にあるSKIPシティ近くの公園で行われました。ゲートボールをするお年寄りに丁寧におことわりをして場所を譲ってもらい、セミがジージーと鳴いたり、突然雨が落ちてきたりする中を縫って、始めに綾子と茂のやりとりが、続いて貴志と茂の緊迫したシーンが撮影されました。この公園は、茂の勤め先である工場の近くにある設定で、茂は仕事中に制服のまま、何度もこうやって呼び出されているわけですね。どちらも映画の後半に出てくる、重要な場面です。
初日の間髪入れないカット割りとは真逆で、この日の監督はじっくりと時間をかけて、それぞれの人物をどう動かし、どうセリフを言ってもらうか、現場で考えていました。私の書く脚本は二人の人物の会話シーンが多く、ただ座って喋っていると動きのないつまらない芝居になってしまうといって、監督はいつも役者さんをどう動かすかに頭を悩ませています。この日も、綾子に鉄棒の周りをグルグル回らせたり、段差の所でしゃがんだり立ったりさせては、その動きを見て、やっぱりああしてこうしてと、試行錯誤していました。そうやって役者さんの動きが決まってくると、綾子の気持ちも見えてきて、文字だけの脚本の世界とは違う世界がそこに見えてくるのだと、監督は言っております。
綾子と茂のシーンの次は、茂を前にして動揺や葛藤を見せる貴志を描くシーンです。昼休憩を早めに切り上げた監督は、スクリプターの小出豊さんを仲村トオルさんに見立て、あちこち立たせては貴志の動きを思案しています。そしてしばらくするとようやく、周囲を見守るようにたたずむコアラの遊具に狙いを定めました。
昼休憩が終わり、いよいよ男二人の火花を散らすやりとりが始まりました。コアラを挟んでの。いや、緊迫した場面なんですよ。なのにコアラ…。このコアラの破壊力に負けない貴志のありようが、一体どのようなものだったのか。これはもう実際に映画を見て確かめ、感じていただくしかありません。監督が繰り出す意表をつく提案に、仲村さんは一生懸命応えてくださいました。面白い。怖いけどワクワクする。貴志の輪郭がどんどんはっきりしていくような気がしました。
そして、実はこの日の昼食の間に、私は仲村さんと希妃さんそれぞれに、とても大事な話を持ちかけていました。それは、リハーサルで感じた貴志の狂気についてです。脚本では気付かなかった貴志の本性とでもいうべき狂気を、これから撮影する部分にどう反映させるか。どこに落着させるか。そしてできればこれから脚本を手直しして、ラストを変えたいと考えていることも伝えました。その時は、まだ具体的にどうするかは思いついていませんでしたが、コアラのシーンの仲村さんのお芝居を見ているうちに、ぼんやりと形になりかけていたのでした。
「愛のまなざしを」予告編
【STORY】
亡くなった妻に囚われ、夜ごと精神安定剤を服用する精神科医・貴志のもとに現れたのは、モラハラの恋人に連れられ患者としてやってきた綾子。恋人との関係に疲弊し、肉親の愛に飢えていた彼女は、貴志の寄り添った診察に救われたことで、彼に愛を求める。いっぽう妻の死に罪悪感をいだき、心を閉ざしてきた貴志は、綾子の救済者となることで、自らも救われ、その愛に溺れていく…。しかし、二人のはぐくむ愛は執着と嫉妬にまみれ始めるのだった――。
出演:
仲村トオル 杉野希妃 斎藤工 中村ゆり 藤原大祐
万田祐介 松林うらら
ベンガル 森口瑤子 片桐はいり
監督:万田邦敏
脚本:万田珠実 万田邦敏
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