世界映画史が誇る孤高の映画作家カール・テオドア・ドライヤー監督の特集上映を「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」と題し、12月下旬よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次にて開催されます。
1889 年 2 月 3 日にデンマーク・コペンハーゲンで生まれ、79 年の生涯で長編 14 作品を発表したカール・テオドア・ドライヤー。
人間、とくに女性の心の本質をフィルムで 見つめ続け、“信ずる”とは何なのかを問い続けた孤高の映画作家。独創的で革新的な作品を生み出し、ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、イングマー ル・ベルイマン、小津安二郎などの巨匠たちからアルノー・デプレシャン、ギャスパ ー・ノエ、ラース・フォン・トリアーといった現代の先鋭たちにまで多大なる影響を与え世代を超え敬愛されている。
解禁となったティザービジュアルでは、ルネ・ファルコネッティ演じる『裁かるゝジャンヌ』のジャンヌの祈りを捧げる姿を中心に4作品の象徴的な場面写真がピンクと青の鮮やかなグラデーションで彩られている。
今回の特集上映では、ゴダールが『女と男のいる舗道』で引用し、“人間”ジャンヌ・ダルクを描いた無声映画の金字塔的作品『裁かるゝジャンヌ』、魔女狩りが横行した混沌の時代を映し出し、ギャスパー・ノエがその火刑シーンを『ルクス・エテルナ永遠の光』で引用したことでも話題となった『怒りの日』、カイ・ムンクの戯曲「御言葉」を原作に家族の葛藤と信仰の真髄を問い、ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞した代表作『奇跡』、そして愛を探し求め続けた一人の女性の姿を完璧な様式美の映像で捉えた遺作にして集大成的作品『ゲアトルーズ』の4作品をラインナップ。すべてデジタルリマスタリングされた素材での上映となり、新素材での劇場上映は『怒りの日』『奇跡』『ゲアトルーズ』の3作品は今回が初めて、『裁かるゝジャンヌ』は2019年に行われた特集上映「ゴーモン珠玉のフランス映画史」以来の貴重な上映となる。
「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤーセレクション」(http://www.zaziefilms.com/dreyer2021)は、12月下旬よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次開催。
カール・テオドア・ドライヤー
(Carl Theodor Dreyer, 1889 年 2 月 3 日~1968 年 3 月 20 日)
1889 年 2 月 3 日、コペンハーゲンでスウェーデン人の母のもとに私生児として生まれる。経済的理由から養子に出され学校卒業後は通 信電話会社勤務を経てジャーナリストとして活動、手掛けた映画評が大手映画会社の目に留まったことから脚本執筆を開始。1919 年に 『裁判長』で監督デビュー、デンマーク・スウェーデン・ドイツ・ノルウェーと様々な国で制作を続け『あるじ』(25)のフランスでの大 ヒットが『裁かるゝジャンヌ』制作へと繋がる。しばしば困難に見舞われながらも、『奇跡』がヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受 賞。切望していた「ナザレのキリスト」映画化実現を目前に控えた 1968 年 3 月 20 日に息を引き取る。享年 79。
「裁かるゝジャンヌ」
監督・脚本・編集:カール・テオドア・ドライヤー
歴史考証:ピエール・シャンピオン
撮影:ルドルフ・マテ
出演:ルネ・ファルコネッティ、アントナン・アルトー
1928年/フランス/モノクロ/スタンダード/ステレオ/97分
【伴奏音楽】作曲・演奏・録音:カロル・モサコフスキ(オルガン奏者)/2016年
<STORY>
ジャンヌ・ダルクは百年戦争で祖国オルレアンの地を解放に導くが、敵国イングランドで異 端審問を受け司教からひどい尋問を受ける。心身ともに衰弱し一度は屈しそうになるが、神 への信仰を貫き自ら火刑に処される道を選び処刑台へと向かっていく。実際の裁判の記録を もとに脚本化、“人間”ジャンヌ・ダルクを映し出した無声映画の金字塔的作品。
「怒りの日」
監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー
原作:ハンス・ヴィアス=イェンセン
撮影:カール・アンデルジョン 時代考証:カイ・ウルダル
出演:リスベト・モーヴィン、トーキル・ローセ、
1943年/デンマーク/モノクロ/スタンダード/デンマーク語/モノラル/94分
<1974年ヴェネチア国際映画祭 審査員特別表彰>
<STORY>
中世ノルウェーの村で牧師アプサロンと若き後妻アンネの夫婦は平穏に暮らしていた。しか し、前妻との一人息子マーチンが帰郷するとアンネと親密な関係に。そんな折アプサロンが 急死し、アンネが魔女として死に至らしめたと告発を受けてしまう...。陰影を巧みに使った モノクロームの映像美で、魔女狩りが横行する時代の複雑に絡み合う関係性を映した衝撃作。
「奇跡」
監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー
原作:カイ・ムンク
撮影:ヘニング・ベンツセン
出演:ヘンリック・マルベア、エーミール・ハス・クリステンセン
1954年/デンマーク/モノクロ/スタンダード/デンマーク語/モノラル/126分
<1955年ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞|1956年ゴールデングローブ賞 最優秀外国語映画賞>
<STORY>
ユトランド半島に農場を営むボーオン一家が暮らしていた。長男の妻で妊婦であるインガー はお産が上手くいかず帰らぬ人に。家族が悲嘆に暮れる中、自らをキリストだと信じ精神的 に不安定な次男ヨハンネスが失踪、しかし突如正気を取り戻しインガーの葬儀に現れる。カ イ・ムンクの戯曲「御言葉」を原作に、演劇的目線で家族の葛藤と信仰の真髄を問う傑作。
「ゲアトルーズ」
監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー
原作:ヤルマール・セーデルベルイ
舞台美術:カイ・ラーシュ
衣装:ベーリット・ニュキェア
出演:ニーナ・ペンス・ロゼ、ベンツ・ローテ
1964年/デンマーク/モノクロ/ヴィスタ/デンマーク語/モノラル/118分
<1965年ヴェネチア国際映画祭 国際映画批評家連盟賞>
<STORY>
弁護士の妻であるゲアトルーズは夫との結婚生活に不満を抱き、若き作曲家エアランとも恋愛関係にある。ある日、彼女の元恋人であり 著名な詩人ガブリエルが帰国し祝賀会が催され、ゲアトルーズはエアランの伴奏で歌唱するが卒倒してしまう。愛を探し求め続けたゲア トルーズの姿を完璧な様式美の画面におさめ会話劇に徹したドライヤー遺作にして集大成的作品。