函館・佐藤泰志原作の映画、東出昌大主演、斎藤久志監督『草の響き』がいよいよ来週末 10 月 8 日(金)より新宿武蔵野館・ヒューマントラストシネマ有楽町/渋谷ほか全国順次公開となります!
『海炭市叙景』『きみの鳥はうたえる』に続く、佐藤泰志の小説、五度目の映画化。
心に失調をきたし、妻とふたりで故郷函館へ戻ってきた和雄。病院の精神科を訪れた彼 は、医師に勧められるまま、治療のため街を走り始める。雨の日も、真夏の日も、ひたす ら同じ道を走り、記録をつける。そのくりかえしのなかで、和雄の心はやがて平穏を見出し ていく。そんななか、彼は路上で出会った若者たちとふしぎな交流を持ち始めるが—。 心を病み、ランニングに没頭する和雄役を演じたのは、『寝ても覚めても』(18)以来三 年ぶりの主演作となる東出昌大。常に危うい雰囲気を漂わせながら、走ることで徐々に 再生していく男の変化を細やかな身体表現で体現した。慣れない土地で不安に苛まれ ながらも夫を理解しようと努める妻・純子役は、『先生、私の隣に座っていただけません か?』(21)、「君は永遠にそいつらより若い」(21)、『マイ・ダディ』(21)など出演 作が続く、いま注目の奈緒。ふたりの俳優の繊細な演技によって、原作にはなかった夫婦の崩壊と再スタートというテーマが立ち上がっ た。監督は『空の瞳とカタツムリ』(18)、『なにもこわいことはない』(13)の斎藤久志。 佐藤泰志の魂を現代によみがえらせ、今の生きる人々に静かに問いかえる珠玉の名品がここに誕生した。
以下、コメントをご紹介致します。(敬称略/順不同)
瀬々敬久- 映画監督
斉藤久志 VS 東出昌大。斉藤さんは今回も容赦がない。観る人にこびない。演者にもへつらわない。孤立無援を良しとし、純粋に映画に向か おうとする。一方、東出くんは小器用にこなさない。彼が望むのはいつも正直であること。窮屈そうにしてでも、背中を丸めてでも生きることを選ぶ。
繊細と漢気がぶつかりあいながら、二人に共通するのはそういう生き方だ。そういえば、それが佐藤泰志の世界だ。
四方田犬彦- 映画・文学研究
石もて追われてきたのではない。生き延びるためにここに留まり、走っているのだ。走っている者に憐憫の言葉はいらない。ただいっしょに走るだけ。
次々と後方に退いていく函館の風景。草むらよ、海よ。きみはただその中で、並んで走っているだけでいいんだ。
カツセマサヒコ– ライター・小説家
逃げるようにひた走る主人公の姿が何かを追いかけ、追い抜いているようにすら見えた。
ひとの弱さや脆さを描いていながら、時折覗く確かな力強さや温もりこそ光って見えた。
佐々木敦 – 思考家
走る彼らを、映画はしかし同じ速度ではなく、どこか超然とした距離感で見守り続ける。 だが思いがけない結末が近づくにつれて、カメラは彼と彼女にフォーカスし、その顔を、その表情をつぶさに捉える。
そこに何が映っているか、それが本作の核心だ。
荒木啓子– PFF ディレクター
不意に訪れる絶望。その処し方をわたしたちは知らない。
誰も悪くない。ぜんぜん悪くない。
純子に、和雄に、そう伝えたい。
斉藤久志が巨匠の風格をみせ、奈緒と東出が愛犬ニコとともに函館を生きる。震えた。
MIYAMU– 失恋バー オーナー
観た後で気付きました。
誰かを浮かべて
幸せでいてほしいと
願うことのできる人生は
幸せなことだと。
函館の風は冷んやりと吹くけれども
誰にも等しく優しいんですね。
私も函館の風を浴びて走り出したい!
寺井達哉– 歌人・文芸評論
どうやって生きたらいいのか、突然わからなくなることがある。
でも実は、今日まで生きてきたということが、そのまま、明日を生きる理由になるのだ。
函館の光と風、汗と涙が教えてくれた。ありがとう、本当に。
川口敦子−映画批評家
「自分の内側にある沈黙に突き進んでいる」(原作)との快感に貫かれて走る彼と、孤りと孤りであることで対峙する(原作にはいない)妻。
その距離。愛。海が波立つ。
引きの画が生きている映画らしい映画を久々に見た。
宇田川幸洋– 映画評論家
斉藤久志監督と東出昌大の科学反応までの意外なまでのよさ! 走る。東出が走る。映画が静かにはげしく呼吸する、 奈緒が遠く見つめる。映画が静かに、はてしなく呼吸する。
児玉美月– 映画執筆家
故郷である北海道にいた頃、キツネに出会うたび「触れてはいけないよ」と言われた。人もまた、触れてはいけないところがある。わたしたちはいち ばん大切なところだけには触れられないまま、何度も出会い直すのだ。
相田冬二- Bleu et Rose/映画批評家
たいせつなものは、いつも遠くにある。
寄る辺なきたたずまいは、手を握りたくなる震え。
この東出昌大、黙って胸に仕舞っておこう。
この映画、そっと秘密にしておこう。
こころの彼方を護るために。
めぐみあゆ– ミュージシャン・翻訳家
かれらの痛みをわたしは理解しないだろう。
だけどともに在る、どうしようもなく。
息つぎをするように、だれもかれも走る。
走って、このからだだけのものになって、あなたはいったいどこへ帰るのか。
鶴岡慧子−映画監督・脚本家
草の響きは、レールから転がり落ちる恐怖に追いかけられ続け、けれど自分らしい人生を歩めと言われ、寄る辺とする思想や憧れも持てないまま に青春が過ぎてしまった、私たちの世代の悲しみの、小さな小さな叫び。
二井梓緒– ライター
人もまばらな静かな街。乾いた空気でさえも画面から伝わってくる。
そこで風を切る気持ち良さを、私は知っている。 そう、思い出そう。その風を、草の匂いを。
そして、佐藤泰志の長女、また本日 10 月 1 日(金)より先行公開を迎える函館シネマアイリスの館長であり、企画・製作・プロデューサーからもコメントが到着しました。
小暮朝海-佐藤泰志 長女
抗えない何かに必死で抵抗する主人公の姿に、父を想ってただただ涙が出ました。 人が静かに狂っていく様は原作よりもリアルで、今も私の全身に深く染み込んでいます。 彰がスケードボードで坂を下るシーンは清々しく、この瞬間だけは、悪いことは何もないのだと思えました。 生きてさえいれば、ある日突然、霧の晴れたような時が訪れるのかも知れない。 映画の和雄の走る先も、どうか明るく照らされている事を、願ってやみません。
菅原和博-企画・製作・プロデューサー
クレインから出版された「佐藤泰志作品集」をきっかけに函館市民発信映画として作られた『海炭市叙景』。 絶版だった佐藤の作品はこの映画をきっかけに、すべて文庫本として復刊された。 それで終わるはずだったのだが、気づけば本作で5作目の映画化となった。 移り変わる函館の風景と佐藤泰志の魂がスクリーン上で邂逅する。 「病の時代」にひとつの光になることを願って。
「草の響き」本予告編
出演:東出昌大 奈緒 大東駿介 Kaya 林裕太 三根有葵 利重剛 クノ真季子/室井滋
監督:斎藤 久志
原作:佐藤 泰志 「草の響き」(「きみの鳥はうたえる」所収/河出文庫刊)
脚本:加瀬 仁美
撮影:石井 勲 美術:原 田 恭明 照明:大坂 章夫 録音:矢野 正人 音楽:佐藤 洋介 ピアノ:村山☆潤 音楽制作:オフィスオーガスタ 助監督:齊藤 勇起 装 飾:森 公美 衣装:小里 幸子 白石 妙子 ヘアメイク:風間 啓子 編集:岡田 久美 音響効果:伊藤 瑞樹 制作担当:中島 正志 プロデ ューサー:鈴木 ゆたか プロダクション協力:リクリ 協力:函館市 特別協力:佐藤 喜美子 河出書房新社 題字:佐藤 泰志 アソシエイ トプロデューサー:寺尾 修一
製作:有限会社アイリス 企画・製作・プロデュース:菅原 和博 宣伝:ブライトホース・フィルム
配給:コピアポア・フィルム 函館シネマアイリス
URL:www.kusanohibiki.com
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[2021年/116分/ビスタ/カラー/5.1ch]