第34回東京国際映画祭開催まで残すところあと約1カ月!本日、東京ミッドタウン日比谷BASE Q HALLにて各部門の上映作品ラインナップ発表・審査委員・各イベントの魅力・見所を発表する記者会見が開催されました。
今年からは六本木地区から日比谷・有楽町・銀座エリアへの移転や17年ぶりとなるプログラミング・ディレクター(市山尚三氏)の変更、部門の改編などもあり、東京国際映画祭が新たに生まれ変わる年になります。
以下報告
イベント冒頭、司会より、本年度の映画祭におけるコロナ対策の検査体制の説明や会場移転・TIFF&TIFFCOMの連携などに関する紹介。さらに、本年度のビジュアルを手掛けてくれたコシノジュンコさんからのビデオコメントや、King Gnu の常田大希率いるmillennium parade による「Bon Dance」がフェスティバルソングに選ばれたこと、映画祭のSDGsへの取り組みを紹介しました。
その後、安藤裕康チェアマンより開催の挨拶と本年度の映画祭のビジョンに関する発表がありました。
113の国と地域、1,533本もの応募の中から15作品がコンペティション部門に選ばれ、日本からも松居大悟(まついだいご)監督による『ちょっと思い出しただけ』と野原位(のはらただし)監督による『三度目の、正直』の2作品が選出されました。
本日はゲストとして、第34回東京国際映画祭のフェスティバル・アンバサダーを務める、女優の橋本愛(はしもとあい)さんからフェスティバル・アンバサダーとして選ばれた時の想いや意気込みを語っていただきました。さらに本年度より新設された「Nippon Cinema Now」部門において特集する吉田恵輔(よしだけいすけ)監督、提携企画「東京フィルメックス」のプログラミング・ディレクター神谷直希(かみやなおき)さん、映像コンテンツマーケットTIFFCOMの松本浩(まつもとひろし)さんが登壇しました。また、昨年に続き、アジアを含む世界各国・地域を代表する映画人と第一線で活躍する日本の映画人によるトークシリーズ「アジア交流ラウンジ」の企画検討会議メンバーである是枝裕和(これえだひろかず)監督からのビデオコメントが上映されました。
コンペティション部門の審査委員長は、世界的に活躍する女優・イザベル・ユペールさん。一昨年のチャン・ツィイーに続き、女性の審査員長を務めることになります。審査員としては、国際映画批評家連盟より刊行されている『Undercurrent』の編集長、Boston Phoenix紙の映画評論家を務め、数多くの雑誌、ジャーナル、新聞に寄稿している映画評論家・プログラマー、クリス・フジワラさん。Focus Films(香港)、Variety(アメリカ)、Irresistible Films(香港/日本)での経験を経て、BerlinaleやCinemAsia Film Festivalなどの映画祭でも活躍している映画プロデューサー・キュレーター、ローナ・ティーさん。日本の映画音楽作曲家、世武裕子(せぶひろこ)さん。そして、映画監督の青山真治(あおやましんじ)監督。 以上、5名が審査員です。
※他、各部門の審査委員の詳細は映画祭公式サイトに掲載されています。
コンペティション作品
「コンペティション部門」応募作品数()内は昨年数:1,533本(1,356本)国と地域数:113(107)・女性監督の作品は男女共同監督作品の4本を含めて29本(約31.87%)(昨年は男女共同監督作品の6本を含めて23本(約16.67%))
※プレミア表記は下記の通りWP=ワールド・プレミアAP=アジアン・プレミアJP=ジャパン・プレミア
『アリサカ』WP フィリピン
監督:ミカイル・レッド
『カリフォルニー』AP イタリア
監督:アレッサンドロ・カッシゴリ、ケイシー・カウフマン
『クレーン・ランタン』WP アゼルバイジャン
監督:ヒラル・バイダロフ
『ザ・ドーター』AP スペイン
監督:マヌエル・マルティン・クエンカ
『その日の夜明け』WP スリランカ
監督:アソカ・ハンダガマ
『四つの壁』WP トルコ
監督:バフマン・ゴバディ
『オマージュ』WP 韓国
監督:シン・スウォン
『ちょっと思い出しただけ』WP 日本
監督:松居大悟
市民』AP ベルギー/ルーマニア/メキシコ
監督:テオドラ・アナ・ミハイ
『一人と四人』WP 中国
監督:ジグメ・ティンレー
『もうひとりのトム』AP メキシコ/アメリカ
監督:ロドリゴ・プラ、ラウラ・サントゥージョ
『復讐』WP フィリピン
監督:ブリランテ・メンドーサ
『ある詩人』WP カザフスタン
監督:ダルジャン・オミルバエフ
『三度目の、正直』WP 日本
監督:野原位
『ヴェラは海の夢を見る』AP コソボ/北マケドニア/アルバニア
監督:カルトリナ・クラスニチ
<第 34 回東京国際映画祭 ラインナップ発表記者会見 概要>
■日時:9 月 28 日(火)15:30~
■会場:BASE Q HALL (東京都千代田区有楽町 1 丁目 1-2 東京ミッドタウン日比谷 6F)
■司会:荘口彰久(フリーアナウンサー)
■出席者:
安藤裕康(第 34 回東京国際映画祭チェアマン) 松本 浩(TIFFCOM 事務局長) 市山尚三(プログラミング・ディレクター) 石坂健治(シニア・プログラマー)
藤津亮太(「ジャパニーズ・アニメーション」部門プログラミング・アドバイザー)
■ゲスト:
橋本愛(フェスティバル・アンバサダー) 吉田恵輔監督(「Nippon Cinema Now」部門特集監督) 神谷直希(「東京フィルメックス」プログラム・ディレクター)
オープニング作品のクリント・イーストウッド監督50周年記念作品『クライ・マッチョ』と、クロージング作品である大ヒットミュージカルの映画化作品『ディア・エヴァン・ハンセン』の予告編が上映された後、本年度よりプログラミング・ディレクターに就任した市山尚三氏より、部門改編の説明と、「コンペティション部門」「ガラ部門」に選出された作品の紹介。石坂健治シニア・プログラマーより「アジアの未来」部門の作品の紹介。さらに、藤津亮太プログラミング・アドバイザーより「ジャパニーズ・アニメーション」部門の紹介が、そして司会より新人を対象にした短編コンテスト「Amazon Prime Videoテイクワン賞」など、その他部門の紹介が行われ、質疑応答も行われた。
以下コメント
【東京国際映画祭チェアマン安藤裕康コメント】
今年こそリアルで対面の交流を大々的に実現したかったが、まだまだ余談を許さない状況。コロナを乗り越え、ポストコロナの映画の新しい未来を模索し、来年の布石になる様に努めたい。17年ぶりに六本木から日比谷・有楽町・銀座地区という伝統ある映画の街に会場が移転し、より広いお客さんに親しんでもらいたい。また、17年ぶりにプログラム・ディレクターも交代となり、部門の改編も含め、充実した様々な作品が集まったと思う。「国際映画祭」という名にふさわしい映画祭にしたい。
【第34回東京国際映画祭フェスティバル・アンバサダー橋本愛さんコメント】
アンバサダーを務めさせていただきます、橋本愛です。これまでも、プライべートでも作品を観に行かせてもらって人生を救われたり、出演させていただいた作品でレッドカーペットを歩かせていただいたり、舞台挨拶をさせていただいたりと、東京国際映画祭とはご縁があったのですが、今回は新たなご縁があってすごく嬉しいです。映画というものが日本という島国において、より地中深く根を張って、皆さんの生活にはびこって、根付いてほしいなと願っています。
【是枝裕和 監督コメント】
映画祭というものは、人が集うことで成立するものです。このコロナ禍でいろんな人が色んな場所から隔てられて、集えなくなった時に、隔たりを超えて、映画というものが、映画祭というものが成り立つのかというものを考えるいい機会になればいいなと思い、今年は“越境”というテーマを掲げました。自分たちが目指す、あるべき東京国際映画祭という形というものを、具体的に映画ファンの皆さんに提示できる様に、その助けに少しでもなれればいいなと思っています。
【審査委員長イザベル・ユペールコメント】
第34回東京国際映画祭のコンペティション国際審査委員の委員長に選ばれたことを光栄に思います。東京国際映画祭は世界で最も重要な映画祭の一つであると、私は大いに尊敬してきました。素晴らしい文化と堂々たる映画史を誇る国、日本に再び迎え入れてもらえる喜びを感じています。これまで世界各地の映画祭で審査委員長を務めてきましたが、様々なバックグラウンドを持ちながら映画への愛でつながった才能ある仲間たちと自分の視点を共有する経験はいつも刺激的です。今回の映画祭の成功をお祈りするとともに、他の審査員の皆さんと一緒に劇場で今年の入選作を拝見することを楽しみにしています。本当に何と幸運なことでしょう。
【橋本愛さん Q&A】
Q. 橋本さんにとって、東京国際映画祭とはどんな映画祭でしたか?
A. この時期、空いている日があるときには映画祭のHPでプログラムを検索して、今この映画をやっているんだと調べてよく観客としても映画祭には通っていました。自分の人生が救われた経験もあります。映画祭で観た『エンドレンス・ポエトリー』という作品の中に、「愛されなかったから、愛を知ったんだ」という印象的なセリフがあるのですが、得られなかったものがあるからこそ、自分が何を得たかったのかということが分かると気付けて。だから、この人とうまくいかないなぁというのは、その人のことを大切に思っているからなんだと感謝の気持ちが生まれました。
Q.東京国際映画祭に望むことがありましたら教えてください?
A.これまでも、十分楽しませていただいているのですが、映画という文化が、日本という島国の地中深くに根を張って、皆さんの一人ひとりの生活の中に映画がはびこってほしいと願っています。現状に満足せずに、どうしたらいいのかということを考えていけるようにと願っています。
Q. 今年の東京国際映画祭で観たい作品はございますか?
A.オープニング作品にもなっている、クリント・イーストウッド監督の『クライ・マッチョ』ですかね。あと、私はダンスや舞踊など身体芸術が好きなので、田中泯さんの作品が楽しみです。
Q. コロナ禍における文化芸術の意義とは?
A. 自分自身が文化芸術に生かれてきたのですが、芸術は心を救ってくれて支えになってくれるものだと思います。芸術というのは心を救ってくれるものだと思っていて、心を救う一端を担っていると思っているので、文化芸術は早急に必要なものではないと言われると悲しい気持ちになってしまいます。映画に触れて少しでも癒やされて欲しいなとおもいますし、私も作り手として、一つ一つの作品を大事に丁寧に作っているので、一人でも多くの人に作品が届いて、そういった考えが根付いていってくれたら嬉しいなと思います。
【吉田恵輔監督 Q&A】 ※吉田監督の「よし」は土となります
Q. 今回の、特集が決まった時に、「嬉しくてお漏らししてます」とコメントを寄せていらっしゃいますが。
A. 自分はあんまり選ばれるタイプの監督じゃないんですよ。ベスト10とかにも。なんか、僕でいいんですかって思ってお漏らししました。東京国際映画祭というとスーツを着ているカタイ人たちが多いので、委縮して2度目のお漏らしをしています。
Q. 吉田監督が作品作りにおいて、大切にしていることなどありますか?
A. 基本的には、みんなが持っている感情の変化を大事にしています。人にあまり見られたくない、嫉妬や自己顕示欲だったり、恥部の様な部分を描いてますね。自分自身の心をさらけ出して、こんな自分でも変われる可能性もあるぜっていうことを、映画ではいつも描いてます。
Q. 吉田監督にとって映画とはどんな存在でしょうか?
A. 幼稚園になるころには、映画監督になるって言っていたんです。大好きなジャッキー・チェンに会いたいと親にいったら、映画監督になれば会えるよと親に言われて。映画には僕も何度も救われましたが、色々あって、時々映画っていやだなっていう気分にもなることがあるんです。そんな時に、これだっていう1本に出合うことがあって、また映画好きに戻って。自分もそんな映画好きに戻れるような作品を撮りたいなとおもいます。
Q. コロナ禍における文化芸術の意義とは?
A. コロナだなんだなんてこれからも続くでしょう。なので国だったり周りがなんだかんだ言ったとしても、作り手の想いはそんなやわじゃない。映画を作りたいという情熱はなくならないと信じています。
【東京国際映画祭チェアマン 安藤裕康 Q&A】
Q. コロナ禍における文化芸術の意義とは?
A. 感染対策も大事、経済を回していくのも大切、けれども文化芸術も同じくらい重要だと感じている。文化芸術は我々の心の問題なので、どう人生を感じるのかということを文化芸術から学んでいけると思っている。文化芸術を国民全体で大切にしていくということが大切だとおもっていて、だからこの不確定要素の多い中で東京国際映画祭を開催することを決めました。
【東京国際映画祭プログラミング・ディレクター 市山尚三 Q&A】
Q. コロナ禍における文化芸術の意義とは?
A.文化芸術に癒やされることもあるとおもう。こんな状況になったからこそ、文化の大切さも改めて認識されるようになったのでは ないかとおもいます。
<第34回東京国際映画祭開催概要>
■開催期間:2021年10月30日(土)~11月8日(月)
■会場:日比谷・有楽町・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net