高校生の時に8mmで映画を撮り始め、実験映画からAVの世界へー。その後プロレス、格闘技と出会い、ついには、アントニオ猪木氏が平壌で19万人の大観衆を集めて行った平和の祭典の一部始終を綴った名作ドキュメンタリー「猪木道」を世に放った小路谷秀樹監督の驚異の一般映画デビュー作『虚空門GATE』。
どうせ胡散臭い映画だろうと思いながらあなたは観始める。
中盤からの展開は予想をはるかに超えていた。唖然とする。
何が真実なのか。何が虚偽なのか。その境界はどこか。
なんだなんだとつぶやく。そして終盤で心地よく宙づりになる。
これは僕の体験。是非観てほしい。
―――森達也(映画監督/作家)
フェイクか?真実か? このUFOを巡るドキュメンタリーは、森達也監督が、「中盤からの展開は予想をはるかに超えていた。唖然とする。」とコメントするなど、予想外の展開に観るものを“異界への旅”へと導いていきます。
この度、代官山シアターギルド にて、10月8日(金)より10日(日)のリバイバル上映が決定しました。
「シネフィル」では、東京でのリバイバル上映が決まった『虚空門GATE』の小路谷秀樹(こうじたにひでき)監督に、いくつかの質問を投げかけました。
『虚空門GATE』小路谷秀樹(こうじたにひでき)監督への質問
小路谷監督。まずは自己紹介をお願いいたします。
本作の劇場初公開は2019年11月9日で、これが僕の一般映画デビュー作であるわけですが、公開時僕は60歳です。高校2年で8㎜映画を創って以来、その後AV、成人映画、プロレスビデオを作りながらも「(一般)映画」を世に出したい熱情は消えずに燻っていました。何度かチャンスはありましたが、押し切れませんでした。しかしこの度産み出せたことで、今までの道程が本作誕生の為だったと得心しております。
『虚空門GATE』は、UFOを巡ってのドキュメンタリー作品ですが、この作品は、どのようなきっかけで作られたのでしょうか?
2012年の暮れにユーチューブにアップされていた「月面異星人遺体映像」、通称「モナリザ映像」を観たことがきっかけです。僕はそれまでも世界中のUFO・異星人動画を見ていたのですが、「モナリザ映像」は同じシーンが2バージョンある、バックストーリーがある、フェイク臭が際立つものとリアル感が払拭できない遺体映像が混在している、制作者が未だ名乗り出ない等、他の映像と比べて特別違和感があり、もしかしたら本物ではないかという想いと仮にフェイクだとしてもここまでの凝り方をする意図は何なのだろうと考えているうちに、「モナリザ映像」はすっかり脳裏に焼き付いてしまいました。
映画は、途中から思わぬ方向に行きますが、最初はこういう結末になることを予期して作られたわけではないですよね。
全く予想していませんでした。
2013年の3月から撮影を開始したのですが2015年暮れ近くに「このままじゃあ映画にはならないなあ」と思い始めていました。ただ本作においてはモキュメンタリーの手法は使ってはいけない、それをやったら台無しになると思い、極力、何も考えない、何もしない事を基本姿勢にしました。自分の恣意性が現象、作品世界を歪めてしまうことを懼れたからです。
最後まで読めない展開でしたが、ラストシーンだけは本作のような形にならない限り完成も公開も出来ないと、終盤近くになって強く想いました。
監督(演出)をするにあたって、特に気を使っていらっしゃることはありますか?また、苦労なさっていることを教えてください。
カメラを向けることそのものが演出になると思っていますが、それを撮る方も撮られる方も意識するがあまり、生の心性が発露しない枷になってしまう場合もありますし、あえてカメラを際立つように置くことで、意味性が集束する場合もあります。その勘所を絶えず直感していると、物語を紡ぐ主体は撮る側、撮られる側だけではなく、時のタイミング、場、つまり時空にもあると気づき、全ての撮影が終わったと自覚した直後に共に創った一体感を得るに至りました。苦労話は多々ありますが、省きます(笑)
今まで、影響を受けた映画、監督、他のジャンルのものでもいいですが教えてください。
黒澤明監督作品「羅生門」「どん底」、石井聰互監督「狂い咲きサンダーロード」、フェデリコ・フェリーニ監督作品「道」、「サテリコン」、マーチン・スコセッシ監督作品「タクシードライバー」、アンドレイ・タルコフスキー監督作品「惑星ソラリス」と悉く20代で観た映画です。
他ジャンルでは寺山修司演劇作法、アントニオ猪木名勝負の数々、矢追純一のUFO特番「第三の選択」、絵画ではサルバドール・ダリに影響を受けています。10代の影響は大きいです。それと、幼なじみが集めた自販機エロ本もありますね〜。
今後の予定は?撮ってみたい題材。次回作の予定などはありますでしょうか?
「UFOは『霊界』を飛ぶのかもしれない」
本作が僕に提起した謎かけです。謎かけは物語を紡ぎます。
最後に、今回の劇場公開で、見られる方へのメッセージをお願いします。
UFOを撮ろうという意図などなく撮り始めた本作ですが、僕自身が事象が紡ぐ展開に巻き込まれ、何が何でも撮らねばならない状況に嵌っていきました。まさに本作自体が周囲を渦巻き異界へ誘う一個の生命体と言えます。ぜひご高覧頂き異界への旅、虚空門体験をご堪能ください。
上映期間中に上映後下記ゲストによるトークショーを予定しております
10月8日 三上丈晴さん(月刊ムー編集長) × 小路谷秀樹監督
10月9日 柳下毅一郎さん(映画評論家)× 小路谷秀樹監督
10月10日 小路谷秀樹監督
チケット予約は下記より
https://theaterguild.co/movie/detail/koukumon-gate/
小路谷秀樹監督プロフィール
1959年生まれ。高校2年時に自主制作した8㎜映画「ありふれた憂悶」がNHKの番組「若い広場」で放送される。1981年、イメージフォーラム5期生となり実験映画を学ぶ傍ら同期の仲間らとAVメーカー「宇宙企画」でアダルト作品を創る。82年、宇宙企画の専属ディレクターとなり数多のアダルト作品を創出。ドキュメンタリーとイメージ映像を取り入れた画期的作風は映像界全体に広く影響を与え、成人映画における描写を大きく変える。代表作は「美智子の恥じらいノート」「インモラルエクスタシー」「天なる龍と地なる亀」「性(35mm)」。
1991年、アントニオ猪木氏と出会いプロレスビデオ「闘魂Vスペシャル」を監督、プロデュースする。試合のみならず、戦いの前後における選手の人間像を炙る手法はプロレス、格闘技映像、テレビ放送にも影響を与え「型」となる。代表作はアントニオ猪木氏が平壌で19万人の大観衆を集めて行った平和の祭典の一部始終を綴ったドキュメンタリー「猪木道」。
2012年の暮れ、ユーチューブにアップされていた「月面異星人遺体映像」に衝撃を受けた小路谷は翌年、本作「虚空門GATE」の制作に踏み切る。2019年、完成・公開。
映画「虚空門GATE」予告
2019年/日本/カラー/123分/ドキュメンタリー
監督・撮影・編集:小路谷秀樹
プロデューサー:小路谷秀樹、小路谷恵美
音楽:HumanCube こおろぎ
出演:庄司哲郎、林泰子、竹本良、巨椋修、大森敏範、宇宙大使くん
企画・制作:ブライドワークス、MONALISA FILMS
配給:ブライドワークス