19世紀を代表する哲学者、経済学者カール・マルクスの末娘エリノア・マルクスの激動の半生を描いた『ミス・マルクス』(原題:MISS MARX)がシアター・イメージフォーラム、新宿シネマカリテほかにて全国公開中です!
コロナ禍をきっかけに、社会の仕組みを見直す必要があるのではないかと考える若者たちが増え、白井聡氏の「武器としての「資本論」」(東洋経済新報社)、斎藤幸平氏の「人新世の「資本論」」(集英社)が相次いでベストセラーとなるなどカール・マルクスの「資本論」ブームが今、起こっている。(斎藤氏は本作に「女性の権利改善のために闘い続けながらも、失望のなかで生涯を閉じたカール・マルクスの娘。社会運動の大義のもとで生まれる搾取や抑圧は今も繰り返されている。21世紀のエリノアを生まないために、私たちは歴史から学ばなければならない。」とコメントを寄稿している。)
そんなカール•マルクスは有名だが、その業績を支え、後世に伝えるべく尽力したマルクス家伝説の三姉妹の末娘エリノア・マルクスの名を知る人は少ないだろう。彼女は、社会主義とフェミニズムを結びつけた草分けのひとりであり、時代を先駆けた女性活動家であった。
6人兄弟の末っ子として生まれたエリノアは、勝ち気で聡明、早くから政治と文学に関心を示した。父親譲りの政治活動家で、16歳で父の秘書となってからは、カールとともに社会主義者の会合に参加するようになり、劣悪な条件のもとで働く労働者たちの環境改善に励むとともに、男女平等を唱え、「女性はもはや男性の奴隷ではない」と訴えたが、彼女の功績はつねに父親の偉業の陰に隠れがちだった。また、父カールの遺作、そして「資本論」の英語版の刊行を手掛け、幼い頃からシェイクスピアを始めとする文学や演劇への関心が深く、フローベールの「ボヴァリー夫人」やイプセンの戯曲「海の夫人」や「民衆の敵」などを最初に英訳し、「人形の家」のノラ役を始め、その戯曲を俳優として演じるなど、多才な才能の持ち主であった。
そんな彼女が、社会主義者で戯曲家としても知られたエドワード•エイヴリングに出会ったことで、運命は大きく変わる。知的で社交に長けたエイヴリングに魅せられたエリノアは、彼が既婚者と知った上で、「結婚は時代遅れの制度」と公言し、結婚をしないままエイヴリングとの同棲生活を始める。だが、エイヴリングは大の浪費家で、名うてのプレイボーイでもあった。エリノアの財産を使い尽くし、マルクス家の親族や友人を頼って借金をする一方、女遊びが絶えず、晩年までエリノアを深く苦しめることになる。
フェミニストであったエリノアが、なぜエイヴリングのようなダメ男に生涯尽くしたのか?エイヴリングへの愛と政治的信念の狭間で徐々に引き裂かれていった彼女の生涯は、矛盾と悲劇に満ちていた。本作『ミス・マルクス』は、そんな彼女の功績をあらためて見つめ直すとともに、#MeTooムーブメントに揺れる現代の女性たちに、大きな問いかけをもたらすだろう。
合わせて解禁された本編映像では、エリノアがドイツ社会主義労働党に任命された党を代表するアメリカ旅行へ、恋人のエイヴリングを誘ったところ、エイヴリングが熱いキスで応えるシーンで幕をあける。アメリカのパンクロックバンド「ダウンタウン・ボーイズ」の楽曲とともにエリノアたちのアメリカ旅行の様子が映し出され、当時の労働者たちの劣悪な労働環境の様子を伝えるアーカイブ写真や映像が随所に挟み込まれる。エリノアは、「労働者の疑問はアメリカでも同じでした。その本質は変わりません。なぜ実際の生産者が得られる富が最も少なく、生産者ではない者が最も富を得るのか。」と市民に演説をするが、一方、エドワードは、豪勢なレストランにエリノアを誘い、ホテルの部屋を花をいっぱいにして彼女を驚かせるのだった…。
『ミス・マルクス』本編映像
本作『ミス・マルクス』は、9月4日(土)よりシアター・イメージフォーラム、新宿シネマカリテほか全国順次公開中!
監督・脚本:スザンナ・ニッキャレッリ
出演:ロモーラ・ガライ、パトリック・ケネディ、ジョン・
ゴードン・シンクレア、フェリシティ・モンタギュー、
フィリップ・グレーニング
2020年/イタリア=ベルギー/英語・ドイツ語/107分/カラー/ビスタ/5.1ch 原題:Miss Marx 字幕:大西公子
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館、ベルギー大使館
配給:ミモザフィルムズ
©2020 Vivo film/Tarantula