ミホ・ミュージアムは、パリ・ルーブル美術館のピラミッドでも知られる建築家 I.M.ペイ氏が中国詩に描かれた桃の花に導かれ洞窟を抜けた先に現れる楽園「桃源郷」をイメージして設計された施設。2017年、この場所でモデルたちが闊歩し開催されたファッションショーも記憶に新しい。
今回はミネアポリス美術館から日本絵画の名品が里帰り。
ミネアポリス美術館と室町から近代にわたる日本絵画の名品が桃源郷に里帰り。
アメリカ中西部ミネソタ州最大の都市ミネアポリスにあるミネアポリス美術館 (通称 Mia〈ミア〉)は、1883年に実業家ら 25 人の ミネアポリス市民が「芸術を生活の中に取り入れること」を目的として設立した美術協会を前身として1915 年に開館。Miaのコレクションは、古代から現代にわたる世界中の美術品約 9 万点を数えます。この展覧会は、Miaの日本美術コレクション9,500 点の中から、キュレーターのアンドレアス・マークス 氏(ミネアポリス美術館、メアリー・グリッグス・バーク日本・韓国美術学芸部長・ クラーク日本美術センター館長)が独特の美意識で選りすぐった、初の里帰り作品を含む 92 件が、滋賀県は甲賀市信楽町にある美術館「ミホ・ミュージアム」で公開されています。
東京、福島から巡回してきたこの特別展はMiaからスタッフの来日はなく、すべて美術館スタッフとリモートで準備された、まさにコロナ禍においての大規模な海外所蔵名品の展覧会といえます。
水墨画・やまと絵・琳派・狩野派・文人画(南画)・奇想派・浮世絵・近代絵画と江戸絵画を中心に日本絵画史の主要ジャンルを8つの章で構成し中世から近代にわたる日本絵画の変遷を辿る構成となっています。ここからは各章について出展作品の一部の作品とともに紹介していきましょう。まず迎え入れてくれるのは水墨画の名品。
第1章: 水墨画
水墨画は濃淡の調節が容易な墨という素材を用いて、対象の立体感や遠近感、微妙な光や空気感を表現することを特徴とします。その始まりは中国・唐時代(618~907)に遡り、日本には奈良時代から部分的ながら様々な経路を通じて伝えられました。この章では戦国期・16 世紀に活躍した絵師を中心に、水墨画の世界が紹介されています。
第2章:やまと絵 ―景物画と物語絵―
平安時代、「唐(漢)」に対する「やまと(和)」の自覚を背景に、日本の風俗や事物を主題とする「やまと絵」が誕生しました。発生当初のやまと絵とは、中国的な主題の唐絵に対し、日本的な主題の絵画を指す言葉でしたが、次第に日本独自の絵画様式へと発展します。この章では移ろう四季や物語を表したやまと絵の世界が展観されています。
第3章: 琳派
琳派は 17 世紀初頭に活躍した俵屋宗達(生没年不詳)を始まりとします。王朝文化復興の気運が高まる時代、京の絵屋「俵屋」を主宰し、本阿弥光悦(1558~1637)の書のための料紙装飾などを手掛けた宗達は、やまと絵や水墨画からモチーフを意匠化し、たらし込みの技法などを駆使した特色ある作風を生み出します。その作風は光悦・宗達の作品に憧れた尾形光琳(1658~1716)に受け継がれ、さらには光琳に私淑した酒井抱一(1761~1828)へと続いていきます。抱一は江戸ならではの軽快さ、俳諧的 な機知を加えた独自の作風を確立し、その弟子たちによって江戸琳派が形成されました。 ここでは宗達や抱一、抱一の高弟、鈴木其一(1796~1858)を中心に琳派の作品が展観。
第4章: 狩野派の時代
狩野正信(1434~1530)に始まる狩野派は、血縁で繋がる「狩野家」を中心とした専門の絵師集団です。室町時代以降、時の権力者の庇護を受け、狩野元信(1477?~1559)と狩野永徳 (1543~90)の代におおいに発展しました。 江戸時代、政治の中心が江戸になると狩野派も本拠地を京から江戸へ移します。永徳の孫・ 狩野探幽(1602~74)は、江戸幕府の御用絵師となり、余白を活かした瀟洒淡麗なスタイルで狩野派に革新をもたらしました。江戸時代を通じて幕府や各藩の御用をつとめた狩野派は、まさに画壇を制する画派となったのです。 一方、永徳の門人で、その画風を継いだ狩野山楽(1559~1635)と山楽の養子・狩野山雪(1590 ~1651)の一統は、京に留まり、探幽とは異なる個性的な作品を描きました。 ここでは探幽ら江戸狩野と山雪・山楽ら京狩野の作品を通し狩野派の軌跡を見ることができます。山雪の「群仙図 襖(旧・天祥院客殿襖絵)」は、ミネアポリス美術館の日本絵画を代表する作品のひとつでもあります。
近江出身の滋賀ゆかりの画家、狩野山楽が描いたと言われる初の里帰り作品。
四季を通した耕作の様子が描かれた襖絵「四季耕作図襖(旧・大覚寺正寝殿襖絵)」は、細かな描写の中にも大らかな生活の様子が伝わって来る。並ぶ襖は圧巻の迫力である。
第5章: 画壇の革新者たち
江戸時代後期、文人画(南画)や写生画など、既存の流派や様式にとらわれない画風が存在感を示し、多様な作品が生まれます。なかでも近年高い人気を誇る伊藤若冲(1716~1800)や曾我蕭白(1730~81)に代表される「奇想」の絵師は、極端にデフォルメした構図の水墨画や細密な濃彩画によって独自の境地を開きました。多彩な江戸絵画を生み出す契機となった長崎派の作品も紹介されています。
第6章: 日本の文人画〈南画〉
日本の文人画(南画)は、江戸時代中期以降、長崎を通じてもたらされた中国の文人という概念や、明・清代の中国絵画に憧れた人々によって描かれた絵画です。この章では高芙蓉(1724~84)、池玉瀾(1727~84)、蕪村、谷文晁(1763~1841)、浦上春琴(1779~1846)などの作品を紹介し、日本で独自に発展した文人画(南画)が展観。
第7章: 浮世絵
江戸時代、大都市に発展した江戸において独自に花開いた新しい芸術が、美人画・役者絵などに代表される浮世絵版画です。ここではミネアポリス美術館が誇る2.500点の浮世絵コレクションから、見応えのある選りすぐりの名品が紹介されています。
第8章: 幕末から近代へ
明治になると西洋から「美術」という概念や新しい材料・技法がもたらされ、日本の絵画は大きく転換しました。伝統の技法や画派を継承する「日本画」と油彩画や水彩画など西洋の技法を用いる「洋画」という新しいカテゴリーが誕生し、浮世絵を母体にした新版画、創作版画 も含め、日本の近代美術は多様な展開をみせていきます。この章では西洋文化の流入により、伝統に根ざしながらも多様化した幕末から近代の日本絵画が展観。
レセプション棟からアプローチロードを抜けると美術館棟が見えて来る。
信楽の山々はこれから紅葉。落葉の時へと移ります。季節の流れとともに、奥深い自然の中で、遠路はるばる里帰りした名画の呼吸を、たっぷり感じてみたい展覧会。
オンラインによる事前予約が必要
事前に、ホームページから日時指定券付入館チケットの購入をお願いいたします。
お支払い方法は、クレジットカードまたは d 払いとなります。
※ 予約受付は、来館される日の前週の火曜日午前 10 時からとなります。
※ 無料入館(当館友の会会員様、中学生以下のお子様、招待券、障がい者手帳をお持ちの 方等)の場合は、特定日以外は事前予約が不要です。HPをご確認ください。
レセプション棟 ⇔ 美術館棟の電気自動車(EV)の運行: お体の不自由な方、お年を召した方を優先とし乗車人数を制限して運行。可能な方は歩いてご移動くださるようお願いします。
マスクの着用:来館時にはマスクを着用してくださるようお願いいたします。
レストラン「PeachValley」(レセプション棟)、喫茶「Pine View」(美術館棟地下 1 階) は、業務内容を縮小して営業。その他お願い事項等、ホームページをご確認の上ご来館ください。MIHO MUSEUM公式サイト https://www.miho.jp
展覧会概要
展覧会名:秋季特別展「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」
開催期間: 2021年(令和 3)年 9 月 18 日(土)~12 月 12 日(日)
会 場: MIHO MUSEUM 〒529-1814滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300 TEL.0748-82-3411
入 館 料: 一般 1300 円、高・大生 1000 円、中学生以下 無料
※MIHO MUSEUM公式サイトより、オンラインによる事前予約をお願いいたします。
事前予約に統一するため、各種提携割引の適用ができません。
開館時間: 午前 10 時~午後 4 時 【入館は午後 3 時まで】
休 館 日:月曜日
交 通: 石山駅からの路線バスは、道路(県道 16 号線)の復旧工事のため当面の間運休。
お車で新名神「信楽 IC」より約 15 分
秋季特別展「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」展
@MIHO MUSEUM シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項をご記入の上、「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」」展
@MIHO MUSEUM シネフィルチケットプレゼント係宛でメールにてご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送りいたします。
この招待券は非売品です。転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
*応募締め切りは2021年10月30日 土曜日 24:00
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)建物名、部屋番号の明記がない場合、郵便が差し戻されることが多い為、当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい(複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。