広島市長、広島・八丁座支配人、米ナッシュビル映画祭2020 ローレン・ポンテ審査委員長、J.R.ヘッフェルフィンガー監督ほかコメント全文

広島市長 松井一實

核兵器のない平和な世界の実現のため、私たちは被爆者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という切なる願いを世界の人々に広げるとともに、次の世代にも確実に受け継いでいかなくてはなりません。

原爆による悲惨な体験をしながらも生きることを諦めなかった美甘進示氏が娘の章子氏に託した思いは、この映画の中で見事に表現され、「許す心」と「助け合い」の大切さが人類への根源的なメッセージとして強く訴え掛けてきます。私たち一人ひとりがそれを深く胸に刻み、日常生活の中で平和について考え行動することで、人間の暴力性を象徴する核兵器は要らないという声が市民社会の総意となり、核のない世界に向けての歩みが確実なものになると確信しています。

一人でも多くの人が、この映画を通じて、平和の尊さ、ありがたさを実感し、そしてそれを持続していくために何ができるのか考え、行動していただくことを期待しています。


広島・八丁座支配人 蔵本健太郎

昨年の公開直前まで、じつは名前も知らない映画でした。しかし、映画を観させていただき、中編映画ではありますが、美甘さんの「伝えなければ」という使命感に圧倒され、急遽上映を決定しました。 昨夏、被爆75周年の節目の8月に、絶対に広島で公開しなければいけない、世界に先駆けての公開でした。

ほとんど宣伝もできず、急な上映にもかかわらず、たくさんのお客様がおこしくださいました。原爆の体験を伝えるだけではなく、本当に伝えたいテーマが「許しの心」というところが、すごいと思います。

ドキュメンタリーですが、再現ドラマ中心なので、とてもわかりやすいし、ダイレクトに生のメッセージが伝わってきます。映画としてのクオリティの高さにも驚きました。世界中の人たちに、今こそ観ていただきたい、観るべき映画です。


米ナッシュビル映画祭 審査委員長 ローレン・ポント

美甘進示さんとその父福一さんの物語は、取り憑かれるほどに驚愕と注目に値する。主演の田中壮太郎の回想モノローグ場面は脳裏に焼き付く。彼の感情こもった素晴らしい演技は映画のテーマである美甘進示さんと映画制作チームの心を画面に映し出している。

懐中時計にまつわるエピソードはそれだけで一つの物語であり、映画の中でそのエピソードが暴かれるにつれて非常に衝撃を受けた。それは、私が全く知らなかった歴史の重要な一部であり、この映画がなければ一生知ることはなかったであろう。多くの映画鑑賞者が同じように感じるはずである。この映画を制作し私たちに大切な史実を教えてくれて本当にありがとう。とても重要なことだ。心から感謝している。

この映画の要素の中で私が最も啓発されたのは、美甘進示さんの心だ。彼が経験した苦悩を考えると、その安らかな気持ちに至るのがどれだけ困難だったか想像を絶する。だからこそ、この映画を観た人は非常に深遠なメッセージを受け止めるだろう。

この映画のメッセージは真に普遍で万人に通じるものである。ナッシュビル映画祭の観客は、この映画からたくさんのことを学ぶであろう。また、映画を観なければ知る術のなかった大切な史実を知ることができるのだ。


美甘章子 エグゼクティブプロデューサー・原作著者

皆様のご声援やお力をお借りしてこの夏日本全国劇場公開決定となり、大変光栄です。製作チームを代表して心よりお礼申し上げます。超高画質カメラで撮ったこの映画を是非皆さんに劇場で鑑賞していただきたいという私の願いを叶えるために、広島八丁座様、新宿K's cinema様には世界の先頭を切っていただき格別な感謝の気持ちです。

父進示と祖父福一の思い、広島の多くの被爆者の思いを心深く受け止め、広島ロケ・スタジオ撮影のスタッフ、様々な形で応援してくださる多くの方々に深くお礼を申し上げるとともに、日本中の皆さんに劇場で鑑賞していただくのを心から楽しみにしています。

2020年、日米の仲間たちの支援や世界各地の友人達の励ましを受けながら、家族総出で手弁当で映画化した作品です。

被爆者の父の想いを娘である私が受け継ぎ、本作の撮影や書籍の編集などでも参加してくれた被爆3世である息子のアンドリューや娘の聖羅、またその子孫の世代にも伝えていきたい。戦争、原爆の悲惨さと逆境を乗り越えて生きていく人間の強さを、世界中の若い世代に知って欲しいと思い、本作を作りました。私は被爆2世の日本人であり、現在カリフォルニア州サンディエゴを拠点に臨床心理医として生活しています。アメリカで原爆をメインのテーマにした映画を制作するのは非常に困難であるからこそ、30代のアメリカ人制作チームを編成して挑戦しました。多くの外国人は、「原爆投下があったから戦争が終わった」と信じています。我々日本人でさえ、そう思っている人も多いでしょう。この映画を世界に発信することによって、ご覧になった方がそういった認識をもう一度みつめ直すきっかけになれば良いと思います。

ニューヨークの映画制作スタッフは全員が30代で、制作中に原爆投下の意義に関してそれまで学校などで習っていたことをもう一度見つめ直し、『こんなひどいことは、いかなる理由があれ2度とあってはならない』と、この映画が世界へ発信する平和へのメッセージ制作のために全身全霊を込めてくれました。

父は、祖父から受け継いだ許す心があったからこそ戦後75年間も生きぬけたのかもしれません。その許す心によって、個人間から国際関係までの様々なレベルで起こっている葛藤や紛争を乗り越え、文化や信条の異なる人たちが手を取り合い、2度と核戦争で他の人が苦しむことがないようにという父の強い願いのもとに育てられた私は、それを世界に伝えることは自分の使命のように子供の頃から感じていました。父は昨年、2020年10月全米でオンライン初公開となったナッシュビル映画祭開催中に94歳で生涯に幕を下ろしました。


J.R.ヘッフェルフィンガー監督

1945年8月6日の出来事は、多くの場合広角レンズを通して見られており、歴史の教科書 には白黒写真や史実や統計が史上の多くの悲劇の一章としてしか載っていませんが、私は実際の被爆者の経験に心を動かされ、戦争の怖ろしさと何者にも負けない親子間の愛情、逆境を乗り越える人間の魂の力強さと思いやりや赦す心の力を描きました。

本作の制作は、多くの天使に導かれて実現しました。神聖なテーマを題材にしている時には、偶然な出来事や機会、運命の出会いや神からの祝福のような幸運があるのだと私には思えます。映画を作るプロセスというのは、まるで統制と降伏の間を舞っているかのようで、映画製作者はこのような恵みがあるようにと祈るのです。

芸術家としての私の使命は、人間性について隠された真実を明かすこと、声なき人々に声を与え、見過ごされる人たちに光を当てることです。私のクリエイティビティーはこの使命に導かれる、それが私の作品に反映されていることを願っています。


撮影:美甘アンドリュー丈示

僕は、祖父(美甘進示)の物語が世界の多くの人々の心に触れたことに、この上なく感謝しています。祖父が原爆を生きぬいたこと、そして僕たち家族がこの世に存在していることは、原爆炸裂の後そして祖父の一生を通して、祖父が受けた様々な人たちからの親切のおかげだと思っています。祖父は常に自分自身の視点からだけでなく多角的に物事を見ることの重要性を僕に教えてくれました。そして、敵意や暴力がもたらす深い危険性について警告してくれました。祖父の物語がこれからも世界中の多くの人々を啓発していくことを強く願っています。僕たち各々が自分の人生の中で逆境や残虐な不幸に面した時でも。

『8時15分 ヒロシマ 父から娘へ』は7月31日より新宿・K’s cinema 、8月6日より広島・八丁座 ほか全国公開

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