1985年、バブル景気を迎えようとする日本に、世の中の矛盾が集まったかのような地域があった。大阪西成区。出自、偏見、校内暴力、すさんだ家庭……過酷な環境のなかでよりよい明日を夢見て、悩み、苦しみ、しかしたくましく自分たちの生き方を模索するたくさんの子どもたちがそこにはいた。彼らと向き合い、正面からぶつかった実在の教師、蒲益男(かば・ますお)の生き方を描いた感動の物語。
プロデューサー・監督・脚本の三役を務めるのはロックバンド・騒音寺のPVを手がけるなど映像ディレクターとして活躍後、『秋桜残香』(2005)『傘の下』(2012)を監督した川本貴弘。2010年に58歳で亡くなった蒲先生のことを知るや2014年から2年半にわたり取材。教師と生徒が何度もぶつかっては理解し合った姿を知るにつれ、現代を生きる人たちへの道しるべになるものが作れると確信。2017年にパイロット版をつくり映画製作への理解を訴え続けた結果、2万人を超える人々から完成を望む声が寄せられた。企画から7年、ついに映画は完成、ここに劇場公開が実現した。
教師と生徒である前に人と人として向き合い、互いに尊敬と信頼と理解を持つことの大切さ。ソーシャルディスタンスが叫ばれる未曽有の混乱の今、真の人間同士のつながりとは何か、これからの時代を生きるヒントがこの映画にはある。
実在した蒲先生を演じるのは、自身も大阪出身である山中アラタ。ヒロインの新米教員・加藤先生を映画初主演となる折目真穂。もうひとりのヒロイン・由貴にNMB48を卒業後、女優として再始動する近藤里奈が映画初出演。同僚教師役には木村知貴、牛丸亮、高見こころ、石川雄也ら実力派が脇を固める。さらには関西の演劇界から皷美佳、浅雛拓、山本香織らが加わり、映画にリアリティを与えている。
川本貴弘監督コメント)
2014年に企画が立ち上がったこの映画「かば」、劇場公開に至るまで紆余曲折があった、映画監督として 表現の自由とリアリティーを追及するため、自主制作に拘った、36年前の 大阪 西成 差別 情 人と街、追及したリアリズムを感じて頂きたい
キャスト・コメント)
山中アラタ(蒲先生)
令和の現代では考えられないことが“ただの日常”であった1985年。実際に“かば”という先生がいた、とある中学校での出来事を通して、“人と人との向き合い方”や、幅広い年代の方がそれぞれの視点で驚いたり、懐かしく感じてもらえたらとても嬉しいです。
木村知貴(岡本先生)
物理的に人との距離感を求められるご時世ですが、心の距離感は時代が変われど大切にしたいと思わせてくれる映画です。小細工無しの浪花節映画をどうぞお楽しみ下さい。
折目真穂(加藤先生)
いろんなことが変わりゆく日々の中で”人と人とが向き合う大切さ”だけは忘れてはいけないと、そう強く感じています。過去、現在、未来。いつの時代にも届けたいメッセージが「かば」にはあります。ふと、前を向く、その背中を押せますように。
さくら若菜(裕子役)
自分ではどうしようもない環境で生きる子どもたちと体当たりで向き合う教師たちの物語。内容のすべてが知らなかったこと。たくさん驚いてたくさん考えました。
大人の方だけでなく、同年代の中高校生にもこの内容を伝えたいと思い裕子役を演じました。この映画から今とどんな違いがあるのかを感じてもらいたいです。
近藤里奈(由貴役)
かばでは同い年の女の子の役を演じさせて頂いたので自分が由貴だったらどう言う気持ちになってどんな表現をするか考えながら演じさせて頂きました
見て絶対後悔しない作品になってます。
中山千夏(餃子屋の店長)
「うち、カバの学校の近く、東大阪は布施で育ったし、釜ヶ崎が舞台の劇『がめつい奴』が子役のデビューやったし、やっぱり同じ地域の子『じゃりン子チエ』の声は私やし、で、パギやん一家とは友だちやし・・・うん、『カバ』は応援せなあかんのや!」
日本映画を代表する監督たちからの絶賛のコメント到着
◎阪本順治監督
思春期の頃、この映画に登場するこどもたちと同じ境遇の級友たちがいた。
あるとき、私の言動がもとで、級友たちに弾劾され、私はレイシストなんだと気づかされた。この作品を観たときに、その記憶が蘇り、背筋がぞっとした。いまも残る風景。こどもたちは、こどもたちだけで、気づいていく。周りのおとなたちは、こどもたちが気づいたことにすら気づかない。が、この“かば”せんせいたちは、そんなこどもたちの気づきの場に立ち会いたい、かかわりたいと想う。そして、いつのまにか、こどもたちに心動かされる。テーマはそこへと収斂していき、おとなたちの願望でこどもたちをえがく一方的な教育映画とは一線を画す。『かば』は、社会的でありながら、笑えて、涙して、捻れや断絶に打ち克っていくその道行きが絶妙で、とても映像的で、美しい。みんな、観ないと!
◎原一男監督
腐敗してクソまみれの世の中で押し潰されそうになりながらも奮闘して生きている、実在のかば先生たちや中学生たちに対して、作り手の優しく、かつ慈愛に満ちた眼差しに触れて、私は幾度も涙を流してしまった。孫のような世代の作り手に対して失望感を抱いていた私だったが、この作品を観てもう一度、彼らに希望を託してみようと思い直すことができた。この優しさこそが、狂ったニッポンを立て直す必須の条件だからだ。
◎瀬々敬久監督
笑った。そしてパワフル。全員が主役の映画だ。西成区と大正区、木津川を挟んで在日や沖縄の人が多い土地。丹念に描かれた風景と生活が全員を主役に押し上げる。かといって常に中心にいるわけでもない。他者を前にして脇にも回る。現実がそうなのだ。主役中心の世界なんてない。この映画のように、人は人を支えて生きている。
◎井筒和幸監督
初めて大阪を、大人やこどもを丸裸にした映画か。
映画「かば 」公式予告
STORY)阪神タイガースのリーグ制覇に沸く1985年の夏、被差別部落が隣接する西成区北部の中学校。人々の差別と偏見、貧困など多くの問題を抱えた環境の中で、生徒たちは荒んだ学校生活を送っている。蒲先生(43歳/山中アラタ)ら教師たちは手を焼いていた。ある日、臨時教員として加藤 愛先生(23歳/折目真穂)が赴任してくるが、初日から生徒に受け入れてもらえず自信を喪失。先輩教師の蒲先生は「今、子どもらは加藤先生を試しとるんや、ただ教師と生徒の関係ではアカンねん」と、得意の野球で生徒と向き合うことを勧める。案の定、反発する野球部員は勝負に勝てばコーチとして認めると豪語するもあっさり敗北。そのうち加藤先生はチャーコという愛称で呼ばれるようになる。登校拒否になった転校生。家庭を顧みない母親、酒浸りで在日朝鮮人の父と暮らす女生徒。出身地を恋人に告白することができない卒業生。服役中の父親に代わって家庭を支える野球部主将。 蒲先生ら教師たちは、それぞれの事情を抱えた生徒たちと正面から向き合い、時には生徒の家庭へ強引に入り込んでまで、彼らの生き方を模索する。
山中 アラタ / 折目 真穂 / 近藤 里奈 / 木村 知貴/さくら 若菜
高見 こころ / 石川 雄也 / 牛丸 亮 /安永 稔 /八尾満/松山 歩夢/冨士田 伸明
大橋 逸生/八松 海志 / 速瀬 愛 / 島田 愛梨珠 /辻 笙/辻 音色/ 趙 博/皷 美佳
山本 香織 /竹田哲朗/浅雛 拓/髙橋瑞佳 /白善哲/徳城 慶太/川上祐/西山宗佑
島津 健太郎/中山 千夏 / 四方堂 亘
製作総指揮 / 川本 貴弘
エグゼクティブ・プロデューサー / 村上 裕章 古川 正博
制作担当 / 石井 克典 制作主任・助監督 / 小田 芳揮
制作進行・助監督・絵コンテ / 谷口 翔大 録音・整音 / 長尾 優
美術・装飾 / 萩原 英伸(レフティーデザイン)ヘアメイク / 角出 拡之 藤田 広樹
スクリプター /星名 美夜 制作進行 / 坂口 仁志 小杉 衛蔵 三宅 由莉
撮影助手 /前濵 福一 東井 剛生 前田 智広 スチール撮影:とくいさとし 大同香代子
録音助手 /太田 有咲 鰐部 晶太 金森 翔 編集 / 田中 健詞
音楽 /Lantan(SIGN SOUND LLC)『 主題歌 / 「Long Line」:騒音寺
エンディングテーマ / 「手紙」:あずみけいこ 』
原作・脚本・監督 / 川本 貴弘
製作 /(C)映画「かば」制作委員会
2021年/2時間15分/DCP