『宮本から君へ』、『MOTHER マザー』など話題作を世に送り出すスターサンズと、日本アカデミー賞6賞を受賞した『新聞記者』のスタッフが再集結,「ヤクザ」というテーマを題材に日本映画界、さらには現代社会 に一石を投じる映画『ヤクザと家族 The Family』が全国の劇場で公開中です。
観る人の心を揺さぶり続け、公開後3週間たった今でも、何度も本作を観て下さる方々が後を絶たず、SNS上で“感動し た“”心に刺さった”など多くの反響が寄せられ、Yahooレビュー4.46点など複数の評価サイトで驚異の高評価を得ています。
この度、本作の話題がさらに盛り上がる中、この作品の創り手たちに、作品のエピソードや想いを、改めて語っていただく、 大ヒット公開記念オンライントークイベントを開催。
スペシャルゲストには、藤井道人監督と佐藤順子プロデューサーのお二人をお招きし、聞き手としてフリーアナウンサーの笠井信輔氏、そして映画評論家の松崎健夫氏が登場。本作の見どころや制作 秘話から、視聴者からの質問や“ネタバレトークタイム”をを監督&制作プロデューサーだからこそ答えられるここでしか語れないマル秘トークを展開。衝撃作『ヤクザと家族 The Family』を10倍噛み締めることができること間違いなしのトークが繰り広げられました!
【スペシャル特番 開催概要】
■配信日時:2月11日(木・祝)
■配信サイト:「共感シアター」
(https://bals.space/theater/171)
■ゲスト:藤井道人監督、佐藤順子プロデューサー
■聞き手:笠井信輔(フリーアナウンサー)、松崎健夫(映画評論家)
実はリベンジマッチだった!!制作撮影に至るまでの秘話を語る!!
「令和版のゴッドファーザーだと思いましたし、“ヤクザ”をここまで切なく描いたのはスゴじゃないかと心震えました」と感想を述べる笠井氏と、アシスタントの瀬田も「久しぶりに観終わって椅子からぱっと立ち上がれない衝撃を覚えました。」とMC2人の絶賛のコメントで始まったスペシャル特番。
メガホンを取った藤井道人監督、本作の制作を担ったスターサンズの佐藤順子プロデューサー、そして映画評論家の松崎健夫氏を迎え、制作時の話から、貴重なネタバレトークが展開されました。
MCより公開後の手ごたえはと聞かれた藤井監督は、「中学や高校の同級生、さらには離れた仲間が感想を送ってくれたのが初めてだったので嬉しいです」、佐藤プロデューサーは「監督と同じなんですが、実は昔シネカノンの支配人をやっていまして、劇場の知り合いの方々より感想を頂くことが多く、スクリーンで観てよかったよと頂けて嬉しいです。」とそれぞれの手応えを回答。それを受けて、松崎氏は、「最初に見た時はすごいものを見たっていう思いでした。藤井監督のこれまでの作品は、疑似家族というものを描いてた作品はあり、今の社会の中で多様性というものを認めていこうっていうことを作品の中で反映させてきた監督だった。今回は血縁のことも描いていて、しかもどっちがいいと言うのではなくって、どちらのよさも描いていて、 それが対比になった演出をされていて僕はそこに唸りました。今見るべき映画だと思います。」と絶賛。
なぜヤクザというものをテーマにしたのかっていうところを聞きたいということで、トーク序盤は本作の制作についての話で盛り上がりを見せる。
制作の経緯についてMCから質問されると、「『新聞記者』の撮影が終わって2週間ぐらいして、河村プロデューサーから宮益坂のパン屋に呼び出されて、『次何やる?』って聞かれて、いやまだ(『新聞記者』の)編集中なんだけれどもと思ったんですが、『新聞記者』を撮影して思ったことを、河村さんに自分がやりたいものをやりたいんですけど伝えました。河村さんは、あの事件をやろうオリジナルをやろうと一方的に喋る人なんですけれども、その時に僕の話をちゃんと聞いてくれて、じゃあどういうのがやりたいって言った時に出てきたトピックがヤクザだったんですね。
自分自身も2012年に『けむりの街のより善き未来の』というヤクザのドキュメンタリーを撮る青年の長編映画を撮っていまして、僕自身が東京の中野というところで育ち、それに近い青少年時代を送っていて、この人たちは条例が出てどこに行ってしまうんだろうかとかとすごく興味があって。それで河村さんと話した時に、いいねヤクザ映画やろうととなって。僕自身『仁義なき戦い』や『孤狼の血』は大好きなんですけれども、同じものをつくりたくはない、自分たちしか撮れないヤクザ映画にチャレンジさせてくれるのであれば、オリジナルでやらせてくれるのであればトライしたいですとこの企画はスタートして、河村さんと取材の旅に出かけました。」と本作を企画となるまでの経緯を教えてくれた。
スターサンズの社長であり、業界の風雲児的なプロデューサーの河村氏と藤井監督が次に撮る作品のテーマは“ヤクザ”だ と聞いて佐藤さんはどうだったのかというMCの問いに、「ヤクザ映画はやりたいねって実は社内で話してはいたんです。河村が藤井監督と話して、まさに『藤井監督でやりたい』って言うんですよ。まさに監督も仰っていたんですが、藤井さん達と一緒にやるのであれば、どういったヤクザ映画にアプローチができるかってというところからスタートしています。」ときっかけを語る。
ヤクザ映画っていうと時代の流れからいうとそこにお客さんが沢山いるってわけじゃないですよねという話題に、松崎氏は 「1970年代が多かったとすると、激減しているジャンルだと言ってもいいと思うんですよ。この映画のすごいと思うところは昨今原作物が多いいじゃないですか?しかもこのジャンルでオリジナル作品をやるっていうのが映画業界の中ですごいと思うことを成し遂げたことなんですよ。」 と語る。
更にMCから「『けむりの街の、より善き未来は』はまさにこの映画のタイ トルにしても全然問題ない。あの無名のキャストで撮ったレイトショー作品では物足りなく、ある程度のバジェットで完璧な作品に創りたいということがあったのでは?」という問いに、「100%それです。リベンジマッチのような感じですね」と答え、MCがこの作品観て『ヤクザと家族』もみるといいですねという反応に、「80万で足骨折したまま撮ったんです。撮休の時に雪で転んじゃって。撮影中ずっと車いすでした」と衝撃の事実までも披露し、出演陣の笑いを誘っていた。
“これは、明日の自分の姿”
ヤクザにとどまらない今の世の不寛容に対する問題意識
さらに松崎氏は、「初期の作品はその作家を表してるって言うじゃないですか 。そのテーマから発したものが後の作品観た時に、線で観た時に過去のフィルモグラフィーの中から藤井監督の特徴みたいなものを突出して点で見ていったら同じようなことが描かれていて それが作家性なるものになるんだと思う。この初期の作品っていうものが、点から線になって、今回の 『ヤクザと家族』に繋がったんだと思いました。」と映画をより面白く観るポイントも解説。
藤井監督作品のみるポイントを伝えつ つも、原作ではなくオリジナル作品へこだわるのかというところに質問がとぶ。それに対して監督は、「河村さんと映画を創っていく中でオリジナルの面白さを教えてくれたのが河村さんで、原作でしか企画が通らなければ原作でやるしかないのかなと一 時期思っていたが、(河村さんが)頑なにオリジナルにこだわるんですよ。毎週毎週新聞記事を送ってきてはこういう事があって語ろうというスタンスなおじいちゃんなんですよ。」と笑いを誘いながらも、「創っては壊しを平気でやる人なので、そういう意味で河村さんとやるにはオリジナルが一番おもしろいと思いますし、順子さんが一番大変だと思いますが、オリジナル以外でやるという選択はなかったです。」と率直な思いを語った。
『新聞記者』の話を例に挙げ、日本だけではなく世界的に不寛容さを描く作品が多くなっていると指摘する松崎氏は、「『ワンダー君が太陽』という、 いじめられている子のことを描いてる作品がありまして、いじめっ子がいなくなって何となく解決したっていう風な描き方をされているんですが、当時全米の親たちが、推薦図書にしようとした時に、“#いじめっこを追い出せ” という運動が起こったんです。それを見た小説の原作者が、ちょっと違うんじゃないかと言って『ワンダー』の続編を小説にしたんです。これ日本でも発売されているんですけれども、誰が主人公かと言ったら、いじめられた子が主人公ではなく、主人公をいじめた子が主人公になっているんです。つまりいじめっこを追い出したらそれで物事が解決するんではなくて、また別の不寛容さが生まれるんではないかということを言いたいから、小説を書いたんだと思うんですよ。このことはすごく重要なことで、同じように『ヤクザと家族』の中でも、追い出す、いなくなるって言うことだけを主軸にして、自分たちの目の前からいなくなるということだけで全てが解決するか?ということまで描いてると思うんです」と言及しつつ、藤井監督はどう考えているのかとストレートに聞くと、「今まで接したことがない人々だったんですが、取材していく中でぼく自身個人的に感じたんですが、これは明日の自分の姿だなと思った」と吐露。「何かしらのきっかけでそうなってしまった人たちを追い出す、排除する、ルールは必要だとは解るんですが、もし自分がそっち側になってしまった時にどうやって生きていくのだろうか」と取材時に感じたことを素直に口にした監督の言葉を受けて松崎氏は、「見てる人が自分だとどうなるんだろうかと思い始める所が重要。ヤクザということではなくて、社会保障みたいなことに置き換えた時に、自分がそこから漏れた時に社会に戻れないんじゃないかということにも置き換えが可能な話で、セカンドチャンスをどう考えるかということが重要。監督はそれを意図しているなと思いました」と藤井×スターサンズ作品らしい娯楽作品でありながら現代社会に対する強烈なメッセージを内包した映画であることを解説。
気になるキャスティングの話から、
スターサンズならでは!?の制作現場秘話に驚愕
そして気になるキャスティングの話に移り、主人公・山本を演じた綾野剛に対し、松崎氏は「19歳から39歳までの20年間 を1人で演じているんですよ。年を取っていると感じられる演技をやるって言うのが凄い。綾野さんならできると踏んでオファーしているとしか思えない」とストレートに質問を監督に問うと、「人我々(スタッフ)が。 河村プロデューサーと主人公を誰がという話している時に、やっぱり30歳中盤の方がいいなという話になり、綾野剛さんは?という話になって、もし出てくれるのであれば嬉しいですよねというところから、脚本が出来てない段階でオファーしたのにも関わらず、『すごく興味があります』と仰って下さったので」と答えた。
MCより『日本で一番悪い男』での綾野の演技を受けてオファーしたのかという質問に対し、「もともと3章の構成ではなかったので、そういうことを全く考えてなかった」という答えに、「もともとは第3章の今だけを描こうとしたの?」と聞き手3人はビックリ、さらに監督の「クランクイン2か月前までは。」 という爆弾発言に驚愕を隠せないでいる聞き手たちを横目に、佐藤プロデューサーは何故かニッコリ。「誰がうっちゃったの?」というMCからのツッコミ に、「ぼくなんです」とごめんなさいポーズをするも、「もともと脚本家の人がいて僕自身は『宇宙で一番明るい屋根』の撮影をしていて、クランクアップした翌日に、本打ち(脚本打合せ)と予定が入っていて、脚本できたんだ、まだ読んでないけどと思って打合せ場所に行ったら、河村さんが手ぶらでやってきて、『お前が書くんだよ』って言ってきて、2ヶ月後だよ、クランクイン。おいおいどうすんの?って思いましたが、自分の中ではこういう風にしたいなっていうイメージがあって、3代にわたる20年の話にしたいと伝えたら、一回書いて欲しいって言われて、すぐにロケ地の沼津に飛んで書き始めて、それを綾野さんに渡しました 。」と怒涛の脚本制作を暴露。
聞き手3人はあっけにとられた表情をしつつ、笠井氏は「スターサンズの映画作りは、、、無茶」と佐藤プロデューサーに率直な思いを伝えると、「はい。エグいんですよ。」とサラリと回答。
それに加え、 綾野自身19歳から39歳までを演じることがギリギリで決まった衝撃の事実も発覚し、さらに驚きを隠せないでいた。
さらに継承されるというのもこの作品でのポイントというところで、若手でいうと磯村勇斗がいて、彼が憧れる人に綾野剛がいる、そのトップには、そもそも1970年代には若手の暴れん坊役をやっていた舘ひろしが本作には出演。舘をキャスティングした経緯の話がふられると、「舘さんの若い頃のお芝居は見てなくて、僕は映画の 『免許がない』の舘さんが好きで、組長どうするっていう話になった時に舘ひろしさんがいいですって言ったら、順子さんに『あんた何言ってんの?スターサンズの映画に舘ひろしが出るわけないじゃん』って言われて」と突っ込まれた経緯を暴露。
スターサンズはインディペンデント魂なのねというMCのツッコミに佐藤は、「監督に言われて悔しかったのと、私自身が『西部警察』の時代の世代で昔ポスターとか持ってたので、 何言ってんだって感じだったんです。舘さんに出演してもらいたくて、何度か気合い入れてお話をさせて頂いて、先方から監督の気合受け取ったからご本人に脚本読んでもらおうということになって、翌日に返事貰えたんですよ。ビックリしたと。舘さんが脚本読んで、出たいと。直ぐに監督に会いたいと仰って下さってお会いしました。」と舘の出演経緯を語ってくれた。
更に現場では舘ひろし伝説が語られたと聞いたのですがという問いに、「(舘さんと)とご一緒すると聞いた時に、舘さんを始めてお迎えするということで色々リサーチしたんですよ、実は。現場にはバスローブでいらっしゃる、大きなコンテナでいらっしゃるとか色々噂を聞きまして。でも現場では、昔はこうだったんだよとか色々なお話をして下さって、スタッフも楽しかったと思います」と、ある意味映画制作という点でも受け継がれる撮影現場だったようだ。
トークが盛り上がりすぎて5分間になってしまったネタバレトークコーナーに突入。本作の始まりと終わりにまつわる話から、 実は監督がとあるキャストが演じた役柄の目線だったり、更には観ている人には中々気づかないポイントまで、まだ観てない人にとっては本当にネタバレになってしまうトークが炸裂。
さらには、ネタバレトーク後には視聴者からの質問に答える時間もあり、時間をオーバーしても、ロケ地やMV、そしてとあるキャストの話にまで及び、爆笑の撮影秘話が飛び出してた。最後には、 主題歌「FAMILIA」の蔵出しのメイキング映像が特別に公開、綾野演じる山本が背中に入れていた刺青に興奮する常田や、 最後の最後に常田の代名詞でもある拡声器ネタの映像も披露された。映画を観た人も観てない人も、このスペシャル特番を見て、ネタバレトークで上がったマル秘ポイントを是非劇場でチェックして欲しい。
【ストーリー】
ただ、愛した。矛盾と不条理のこの世界で、全てを懸けて――。
1999年、父親を覚せい剤で失い、その日暮しの生活を送っている時に、柴咲組組長の危機を救った男・山本賢治(綾野剛)。自暴自棄になっていた自分に手を差し伸べてくれた柴崎博(舘ひろし)に心の救いを得て、二人は父子の契りを結ぶ。
2005年、短気な面もあるが一本気さのある山本は、ヤクザの世界で男をあげていく。激化する因縁 の相手・侠葉会との争い、自分と同じような境遇で育った女性との出会い、大切な家族である仲間を 失ってしまうなど、人生を大きく揺り動かす激動の瞬間に愚直なまでに向き合って生きる山本、そして 彼は自分の【家族・ファミリー】を守るために、ある決断をするー。
2019年、14年もの年月を犠牲にした山本が出所後目の当たりにしたのは、暴対法の影響でかつて の隆盛の影もなく、存続していくのもギリギリな状態に一変していた柴咲組の姿。時代の流れによる大きな変化に戸惑いながらも、愛する家族との生活を望み、新たな人生を歩もうとする山本に、状況を根底から揺るがす事件がー。
綾野剛
尾野真千子 北村有起哉 市原隼人 磯村勇斗
菅田俊 康すおん 二ノ宮隆太郎 駿河太郎 小宮山莉渚/
岩松了 豊原功補/寺島しのぶ
舘ひろし
監督・脚本:藤井道人
音楽:岩代太郎
主題歌:「FAMILIA」millennium parade(ソニー・ミュージックレーベルズ)
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
プロデューサー:佐藤順子 角田道明 岡本圭三
撮影:今村圭佑 照明:平山達弥 録音:根本飛鳥 キャスティング:おおずさわこ 美術:部谷京子 衣装:宮本まさ江 ヘアメイク:橋本申二 助監督:逢坂元 制作担当:大川哲史 題字:赤松陽構造 スチール:八木咲 編集:古川達馬
配給:スターサンズ/KADOKAWA
製作:『ヤクザと家族The Family』製作委員会
©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
2020年/日本/136分/5.1ch/アメリカンビスタ/カラー/デジタル