東京国際映画祭で8日、舩橋淳監督の最新作「ある職場」の上映が行われた。
同監督と主演俳優の平井早紀、伊藤恵、満園雄太、藤村修アルーノルが、上映前の舞台挨拶と上映後のQ&Aに登壇した。

実在するセクシャルハラスメント事件を後日談としてフィクション化したというこの作品。
きわどい社会問題だからこそ製作の道のりは平坦でなく、撮影場所が見つからず、予算集めも困難を極めたという。

壇上で監督・俳優陣からクラウドファンディングのサポーターへ感謝が伝えられた後、舩橋監督が映画の成立の経緯を語った。

「現実の日本社会にあちこち見られるハラスメントについての意見、とくに本音の部分をそれぞれの人物に代弁させるような映画を作りたかった。職場でハラスメントが起きたら、当事者だけでなく周りの人間も傷つき、大きく揺らぐ。自分だったらいったいどうするのか、当てはめて見てほしい」

舩橋淳監督

台本のない即興劇で撮影されたという本作。俳優たちがセクハラについての考えと思いをぶつけ合い、ひたすら長回しで撮影された「ディベート映画(舩橋監督)」だった。

職場でハラスメントを受けるヒロイン大庭早紀を演じた平井は、この特徴的な撮影法について「あえて監督の前では言いにくいことを言いますけど、カットがかからず、いつ終わるかわからない。最大2時間も長回しだったんです!」と、暗に監督へ面当て。

平井早紀

シニカルなヒール小津雄太を演じた満園は、「台本があるようでなかったのでテンションの揚げ方もハンパないし、すごい緊張感でできましたけど、長回しはとてもとてもとても大変でした!監督自身がカメラを回したのでホントお疲れ様です」

満園雄太

孤立する早紀の唯一の味方・木下恵を演じる伊藤は、「自分の言葉で考えて話さなければいけないので、役になりきるという意味で非常に勉強になった手法でした」

伊藤恵

最後に、舩橋監督は映画業界のハラスメント問題にも言及した。
「僕たち足元の映画業界自体も、立場を利用したセクハラ、パワハラが横行している。UPLINK訴訟は氷山の一角です。自分もパワハラを受けたことがある。自分も参加している活動SAVE the CINEMAで、業界の体質を変えてゆくために声を上げてゆきたい」と、コロナ禍で映画館を守るため映画人たちが続けてきた運動に触れて、締めくくった。

画像: 最大2時間の長回し!終わらないセクハラのディベート
舩橋淳監督 最新作『ある職場』 東京国際映画祭レポート

東京国際映画祭ではコロナ禍における安全対策を十分に配慮して上映が開催された。
シャッター時のみマスクを外しての記念撮影

「ある職場」 135分カラー&モノクロ/2020年日本

オフィシャルHP: http://atsushifunahashi.com/

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