映画史にその名を刻む選りすぐりの怪作、珍作、迷作、凡作、奇作を集めた「奇想天外映画祭」。
昨年、開催され大好評を博した本映画祭が2020年も開催されることが決定いたしました。

「奇想天外映画祭 vol.2 Bizarre Film Festival~Freak and Geek アンダーグラウンドコレクション 2020」と題して 8 月 29 日(土)~9 月 18 日(金)で新宿 K’s cinemamにて開催されます。

今回の映画祭推薦人は映画評論家の滝本誠さん。
滝本さんがピックアップした4作品のコメントも併せてご紹介致します。

今回の上映の目玉となるのは、<日本初公開>となる『ウィッカーマン final cut』(2013)。
スコットランドに古くから伝わる原始的宗教が生き残る島に、行方不明の少女捜索のため上陸したハウィー警部は捜査に取り掛かるが、島はクリストファー・リー演じるサマーアイル卿が統治するケルト神話に支配された禁断の地だった...。その過激すぎる反キリスト教の内容が故に、1973 年公開時は、まったく正当な評価を受けずにいた本作だが、2013 年に、ロビン・ハーディ監督が未使用のフーテージも使用し再編集して完成させたのが、公開バージョンより6分長い『ウィッカーマン final cut』。今年、日本で公開され話題を呼んだ『ミッドサマー』(2019)も元ネタに参照している映画のひとつに挙げられている大注目のカルト作だ。

そして、『死刑台のエレベーター』、『地下鉄のザジ』ほかで知られるフランスの巨匠ルイ・マルが 1975 年にとったいわくつきの作品が『ブラック・ムーン』(1975)。近未来の非現実的世界を『不思議の国のアリス』のように彷徨う少女の姿を、ほとんど台詞のないまま描く異色作。

その他の作品は、アメリカで 300 人以上を殺害したと伝わる連続殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカスの生き様をドキュメンタリータッチで描いた『ヘンリー』(1986)。
『デス・レース2000年』で知られる異色の監督 ポール・バーテルの処女作『プライベート・パーツ』(1977)。
幻想に満ちたアルメンドロスの魔術的映像美と神秘と魔性のメッセージを伝えるピンク・フロイドのテーマ曲が印象的な『ラ・ヴァレ』(1972)。
妻と他の男との戯れを覗き見る老紳士とそれに抵抗する妻。原作者であるクロソフスキー自身と妻が演じるという究極のスキャンダラスに満ちたプライヴェート・フィルム『ロベルトは今夜』(1977)。
ロシア・アヴァンギャルド最後の一人“異端の作家”ダニール・ハルムスの摩訶不思議な2日間を描いた異色作『ハルムスの幻想』(1988)。
映画史にその名を深く刻んだ怪作『フリークス』をはじめ、サイレント期からトーキー時代にかけて多数の恐怖映画で知られる巨匠トッド・ブラウニング。生誕 140 年記念を記念して、愛する女のために自らの腕を切り落とす男をロン・チェイニーが演じたサイレント時代の傑作『知られぬ人』ほか5作品を上映する「トッド・ ブラウニング傑作選」
最後は、あまりに性的・暴力的な内容から、公開当時はメディアや評論家から酷評を浴びた『血を吸うカメラ』(1960)の計 13 本となる。

いずれの作品も何らかの理由から過去に封印され、現在観ることが難しい問題作ばかり。この機会に、是非とも劇場でご覧ください。

※赤字にて記載しているのは滝本誠さん(映画評論家)からの推薦コメント!

『ウィッカーマン final cut』

Make You(一人だけ例外) Happy 精神に満ち満ちたカルト中カルト

2013 年/イギリス映画/94 分 ※日本初公開
監督:ロビン・ハーディ
脚本:アンソニー・シェーファー/音楽:ポール・ジョヴ ァンニ
出演:エドワード・ウッドワード、クリストファー・リー、ブリット・エクランド

画像: © canal+

© canal+

行方不明の少女捜索のためスコットランドの孤島に上陸したハウィー警部は捜査に取り掛かるのだが、島はサマーアイル卿(C・リー)が統治するケルト神話に支配された禁断の地だった。『ウィッカーマン finalcut』は『ウィッカーマン』(1973)の製作40 周年記念作品としてロビン・ハーディ監督が未使用のフーテージも使用し再編集して完成させた。88 分公開バージョンより6分長い。

『ブラック・ムーン』

とてつもなくシュールな変態作にして、いわくつきの乳首映画

1975 年/フランス=イタリア=西ドイツ映画/97 分
監督:ルイ・マル 撮影:スヴェン・ニクヴィスト
出演:キャスリン・ハリソン、ジョー・ダレッサンドロ

画像: © Gaumont

© Gaumont

一人の少女がある館に迷い込む。ラジオが「メッセージを伝え、動物が喋る、が人の声はしない。そのうちそれらが黙示的光景のように見えてくる。映画の冒頭「本作は理屈の通じない世界での作品です」と監督の言葉を伝える。全編「不思議な国のアリス」のヴァリエーションともいうべき、鏡を越えた世界を描いたルイ・マルの奇怪作。

『プライベート・パーツ』

変態、残酷、オカルトで、ジェンダー問題を ゼロ地点まで引き上げた(下げた)アート作品といっておこう

1977 年/アメリカ映画/87 分
監督:ポール・バーテル
出演:エイン・リュイメン、ルシール・ベンソン

画像1: © Premier Pictures

© Premier Pictures

『デス・レース2000年』で知られる異色の監督(俳優も)ポール・バーテルの処女作でその独特の映像感覚には隠れたファンも多い。ある女性が迷い込んだホテルを舞台に展開されるこの作品のプロットはヒッチコックの『サイコ』のような展開を見せるが、作品は”奇想天外”。一色に染まった変態サイコサスペンス怪作。

『ラ・ヴァレ』

ヒッピー・コミューンの自然回帰思考を文明から遠く離れたパプア・ニューギニアを舞台につきつめてみせた問題作

1972 年/フランス映画/100 分
監督:バーべット・シュローダー/撮影:ネストール・アルメンドロス/
音楽:ピンク・フロイド(「雲の影」)
出演:ビュル・オジェ、ジャン=ピエール・カルフォン

画像2: © Premier Pictures

© Premier Pictures

ニューギニア。未知の谷を目指す冒険家の青年一行と出会ったヴィヴィアーヌは彼等の旅に同行することに。やがてその過程で彼女は次第に自分を解き放し生の喜びに目覚めていく。幻想に満ちたアルメンドロスの魔術的映像美と神秘と魔性のメッセージを伝え るピンク・フロイドのテーマ曲が一つの時代の終焉を刻んで、魂を揺さぶる。

『ヘンリー』

1986 年/アメリカ映画/83 分
監督・製作・脚本:ジョン・マクノートン
出演:マイケル・ルーカー、トレーシー・アーノルド

画像: © 1986 MALJACK PRODUCTIONS

© 1986 MALJACK PRODUCTIONS

14 歳の時、虐待を繰り返す母を殺害したヘンリーの内に潜む殺人への衝動は抑えきれなかった。アメリカで 300 人以上を殺害したと伝わる連続殺人鬼ヘンリー・リー・ル ーカスの生き様をドキュメンタリータッチで描いたマクノートンの衝撃デビューシリアル・キラー。

『ロベルトは今夜』

1977 年/フランス映画/100 分
監督:ピエール・ズッカ
原作:ピエール・クロソフスキー「艦隊の掟」
出演:ピエール・クロソフスキー、ドゥニーズ=モラン・サンクレール、バーベット・シュローダー、ダニエル・シュミット

画像: © Sylvie Zucca

© Sylvie Zucca

妻と他の男との戯れを覗き見る老紳士とそれに抵抗する妻。原作者であるクロソフスキー自身と妻が演じるという究極のスキャンダラスに満ちたプライヴェート・フィルム。 バーベット・シュローダーやダニエル・シュミットなどの友人も出演。日本でも小説や評論が翻訳されているクロソフスキーは背徳の作家、哲学者、神学者として名高い。 画家バルチュスは実弟である。

『ハルムスの幻想』

1988 年/ユーゴスラヴィア映画/92 分
監督:スロボタン・D・べシチ
出演:フラノ・ラシチ、ダミヤナ・ルトハル

画像: © Jovan Maekovic

© Jovan Maekovic

1938 年の夏のある日、当局の尋問を受けていたハルムスが久しぶりにアパートに帰ってくる。彼は7年前に反ソヴィエト活動をした芸術家として追放されており、当局にマークされて創作活動もできなかった。突然、埃の溜まった部屋に窓を破って”天使” が参入してきたことから、ハルムスの奇妙な生活が始まる...。ロシア・アヴァン ギャルド最後の一人“異端の作家”ダニール・ハルムスの摩訶不思議な2日間を描いた異色作。

<生誕 140 年記念>トッド・ブラウニング傑作選

1880 年生まれ。映画史にその名を深く刻んだ怪作『フリークス』をはじめ、愛する女のために自らの腕を切り落とす男をロン・チェイニーが演じたサイレント時代の傑作『知られぬ人』ほか5作品を上映。

トッド・ブラウニング

『知られぬ人』(1927)63 分/サイレント/カラー
『見世物』(1927)73 分/サイレント/カラー
『フリークス』(1932)64 分/35mm/カラー
『古城の妖鬼』(1935)68 分/カラー
『悪魔の人形』(1936)78 分/カラー

『血を吸うカメラ』

1960 年/イギリス映画/102 分
監督:マイケル・パウエル/出演:カールハインツ・ベーム

画像: © Tamasa Distribution

© Tamasa Distribution

衝撃的なスナッフ・ムービーの撮影シーンから始まる『血を吸うカメラ』は公開当時、その先駆的映像テーマで徹底的に批判され、長い間、映画史の闇に葬られたサイコスリラー映画の原点ともいうべき傑作。

新宿 K’s cinema にて 8 月 29 日(土)~9 月 18 日(金)開催!

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