あいちトリエンナーレ2019で「天皇の肖像を燃やした」と物議を醸した美術家・大浦信行。
この映画は、彼自身の受難の人生を、一人の女優の生き様に託し描いた渾身のドキュメンタリーです。フランソワ・オゾンやペドロ・アルモドバルなど強烈な個性をもったインディペンデント作家を見出してきたブリュッセル独立映画祭において、熱狂とともにオープニングを飾った衝撃の映画です。
一人の女性が現実を逞しく生き抜く姿を追いかけながら、現代社会の裏側に横たわる人々の無意識の情動をあぶり出す映画です。それはまた、現実の苦難からさえ微かな希望を見つけようともがく、私たち自身の物語でもあります。この映画は、現実と虚構が境界なしに溶け合って映像に昇華する、前代未聞の「幻/実(げん/じつ)ドキュメンタリー」です。
私たちは社会の現状を鑑み『遠近を抱えた女』を4月11日(土)より5月8日(金)まで、 期間限定有料配信されることとなりました。料金は1,000円(48時間視聴可能)。
収益の半額をミニシアター支援への配当として寄付いたします。
配信URLは https://vimeo.com/ondemand/whp
監督プロフィール:大浦信行(おおうらのぶゆき)
1949年富山県生まれ。19才の時より画家を志し、絵画制作、続いて実験映画制作を始める。1976年よ り1986年まで、叔父である日系米国人建築家ミノル・ヤマサキ(911で倒壊したWTCの設計者)の誘いで ニューヨークに滞在。荒川修作のもとで7年間助手をつとめる。1986年富山県立近代美術館で開催され た「富山の美術‘86」に代表作の版画連作『遠近を抱えて』が出展されたのち問題作として図録が焼却されるなど、美術界を揺るがす大スキャンダルとなった。
2000年ごろより本格的に映画制作を再開、2001年にはドキュメンタリー映画『日本心中』(山形国際ドキュメンタリー映画祭招待、JSC賞受賞)を、2005年には『9.11-8.15日本心中』(モントリオール国際映画祭招待)を監督。2009年には 「アトミックサンシャイン展」において、版画作品がキュレータに招待されながらも美術館の検閲により再び展示拒否。あいちトリエンナーレ2019では出展した映像作品「遠近を抱えてpartII」が3度目に世間を震撼させる大問題となりわずか3日で展示中止となった。『遠近を抱えた女』は長編5作目。
主人公プロフィール:あべあゆみ
劇団再生に所属する舞台女優。他劇団への客演や朗読劇、緊縛ショーにも出演し、個性的な存在感と演技でファンも多い。劇中で引用しているのは自身のブログ「どこにでも鮎弁」 どこにでも鮎弁
URL:https://sea.ap.teacup.com/ayuben/
大浦信行監督最新作『遠近を抱えた女』
ブリュッセル映画祭レポート&予告
ストーリー
ここに一人の女性がいる。舞台女優・あべあゆみ。
彼女は全身に刺青を入れ、身体を売り、蝋燭の炎に進んで身を委ねる。貧困と痛苦に満ちた彼女の生活は、しかし身体感覚をよりどころとする確かな生き方にも見える。また、同時にこれは監督/美術家・大浦信行自身の「魂の自叙伝」でもある。あべあゆみの身を焦がす炎は、そのまま大浦の作品を焼き尽くす炎とも重なってくる。 ナイーブな洞察力で放たれる大浦自身の言葉と、あらゆる現実の制度から締め出され、想像を絶する苦難の道のりを歩んできた大浦の版画作品群が、あべあゆみの越境していく肉体とスパーク し、ここで臨界点を迎えることになる。
その時彼女は覚醒する。自分の身体に咲き誇る牡丹の甘い香りに導かれるように・・・
監督:大浦信行
出演:あべあゆみ
双鬼 廣末哲万 コラアゲンはいごうまん 有末剛
音楽:朴根鐘 勝沼聡史
録音・編集:川上拓也
撮影・プロデューサー:辻智彦
製作:ハイクロス シネマトグラフィ
制作:国立工房
©ハイクロス シネマトグラフィ